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・Day5/chapter1 回想、昨夜の饗宴

57.

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――遡る。

「はっ!?」
 目を覚ました青年は大きく目を見開いた。
 ここは!?
 視界はぼんやりとしていたが、五、六人ばかりの人影――。
「おい、ようやくお目覚めか?」
 頭上から降ってきた声に、青年は戦慄した。一気に皮膚が鳥肌立つ。
 藤滝の声だ。
 そして、青年は自身の置かれた状態を確認した。
 場所は屋敷の中。
 "饗宴"と題された男主催の淫らな遊戯に招待されたのであろう、男たちがざっと六人。畳張りの和室に集っている。その男たちひとりひとりの隣には屋敷の春売りの少年青年たちがぴったりと添うように控えている。
 それ以外にこの場には屋敷の主である藤滝なる男と彼の忠実な部下。廊下にも何人か控えているのだろう。
 そして、昏倒していた自分は使用人にかがされた気付けの薬で今、意識を取り戻したといったところか。
 いや、使われた薬はそれだけか? 手足を動かしてみようとしても、一向に動かない。
 青年は背もたれのある椅子に座らされていて、力の入らない上体はその背もたれが姿勢を支えていた。
 それ以上にこの椅子の不気味なポイントは腰がやけに涼しいことだ。
 何も身に着けていない全裸な状態ということもあるが、椅子の腰かけ部分が大きな環を描くような形状で真ん中部分が切り取られている。そのため、臀部が直接空気に触れて少し肌寒い。
 そうだ。あられもない状態である。
 さっと、身を隠そうとして腕を動かそうとしたが、しびれていて、動けない。だらりと椅子の外に垂らしたままの状態で、青年は驚きに大きく目を見開いた。
「どうした?」
 男がにやりと青年の顔を覗き込んでくる。今にもこの距離なら噛みつける。しかし、それすら敵わないのは、自分の肉体に力が入らないからだ。
 この男が拘束具を施さないというのはそれなりの理由がある、といったところか。
 青年は必死に彼を睨んだが、そんなささやかな威圧など抵抗に含まれることはない。何もできはしないということを思い知らされるだけだ。
「ではそろそろ始めようとしますかな」
 藤滝は青年から目を逸らした。そして客たちに向かって声をかける。
 彼らは思い思いに膳に置かれた酒や提供された料理をつまんでいたが、藤滝の宣言にそれぞれ拍手を送った。
「藤滝さん、その子はいったい、いつになったら、使わせてもらえるんだい?」
 客のひとりが顎で青年を指して言う。
「まだ、調教中ですので……」
「そう言って待たせっぱなしってのもなぁ」
「まあ、こうやって、宴の餌くらいなら引っ張り出してもらってんだからさあ、あんたあきらめなよ」
「そう言って、いつもお前さんとこが初物ばっか食ってるって話じゃないかい」
「まあまあ」
 彼らがやり取りしている間、青年は必死に頭を回していた。この状況、かなりまずい。
 夕方まで若花たちとの交合のせいか、体力はもうギリギリといったところ。餌として会場に出されている時点でこの後、青年を襲うであろうそれはわかりきっている。
 とてもではないが、壊れる。
 冷や汗がどっと出てきて、青年の鼓動が早くなる。
 そのせいで、男が使用人に命じて用意させたそれに対しての反応がワンテンポ遅れた。
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