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・Day4/chapter4 若花のあと
55.
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「おい、おい、ったっく」
男は何度も、気絶している青年の頬を叩いた。
けれど、青年の意識は戻ってこない。
面倒だ、と青年を起こすのをあきらめた男は、そのまま、自身の懐に入れていたハンカチで己を拭って着衣を綺麗に整えた。
「あの、ご主人さま?」
横たわったまま、びくともしない青年の横で使用人が彼に声をかけた。
「なんだ?」
「……らしく、ありません」
「は?」
使用人の声は小さく消え入りそうなもので、彼は聞き返す。
「その、ご主人さまらしくございません」
はっきりと物申した使用人に、藤滝は眉根をひそめる。
らしくない?
俺、らしくない、だと?
男は不愉快さに表情を歪めた。
「それはいったいどうして、そう思う?」
「それは……」
使用人は伏し目がちに彼のほうを向いた。まだ、後孔から、白濁の欲望を垂らしながら横たわっている、ひとりの青年の姿をちらと見て。
「あいつか」
「え?」
主人の声に、びくりと使用人は肩を震わせた。
「俺が、あいつに狂わせれている、とでもいいたいのか」
「え、め、滅相もございません」
その声は震えていた。
「まさかな、そんなはずがない。アレは今までのものと毛色が違う。だから面白い。ただの暇つぶしだ」
「さようでございますか……?」
「ぼさっとしていないで、アレの始末をつけろ。アレは今宵の宴の餌だ」
本当に?
そんな疑問が一瞬使用人の頭の隅をかすめた。
というのも、わかる。彼のような下っ端の使用人にすら、この一匹の青年にやけに主が執心しているというのは。
「しかし、こんなになっているのに、いいのですか?」
「何がだ? 俺が出すと言ったら出す。準備をしておけ。それと気付けの薬を出しておけ」
「は、はい……」
藤滝は、背を向けた。
「はやくやれ」
使用人は慌てて、青年の後始末に汚れをぬぐい取り始めた。
【残り 82回】
(続)
「おい、おい、ったっく」
男は何度も、気絶している青年の頬を叩いた。
けれど、青年の意識は戻ってこない。
面倒だ、と青年を起こすのをあきらめた男は、そのまま、自身の懐に入れていたハンカチで己を拭って着衣を綺麗に整えた。
「あの、ご主人さま?」
横たわったまま、びくともしない青年の横で使用人が彼に声をかけた。
「なんだ?」
「……らしく、ありません」
「は?」
使用人の声は小さく消え入りそうなもので、彼は聞き返す。
「その、ご主人さまらしくございません」
はっきりと物申した使用人に、藤滝は眉根をひそめる。
らしくない?
俺、らしくない、だと?
男は不愉快さに表情を歪めた。
「それはいったいどうして、そう思う?」
「それは……」
使用人は伏し目がちに彼のほうを向いた。まだ、後孔から、白濁の欲望を垂らしながら横たわっている、ひとりの青年の姿をちらと見て。
「あいつか」
「え?」
主人の声に、びくりと使用人は肩を震わせた。
「俺が、あいつに狂わせれている、とでもいいたいのか」
「え、め、滅相もございません」
その声は震えていた。
「まさかな、そんなはずがない。アレは今までのものと毛色が違う。だから面白い。ただの暇つぶしだ」
「さようでございますか……?」
「ぼさっとしていないで、アレの始末をつけろ。アレは今宵の宴の餌だ」
本当に?
そんな疑問が一瞬使用人の頭の隅をかすめた。
というのも、わかる。彼のような下っ端の使用人にすら、この一匹の青年にやけに主が執心しているというのは。
「しかし、こんなになっているのに、いいのですか?」
「何がだ? 俺が出すと言ったら出す。準備をしておけ。それと気付けの薬を出しておけ」
「は、はい……」
藤滝は、背を向けた。
「はやくやれ」
使用人は慌てて、青年の後始末に汚れをぬぐい取り始めた。
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