上 下
45 / 285
・Day3 目覚めたら天井

31.

しおりを挟む
 こ、ここは……。
 青年は目を覚ました。
 目の前には天井。その仄白い板。柔らかい感覚。――布団?
 起き上がろうとして、激しく傷んだ頭痛に、青年は再び、沈んだ。
 痛い。
 全身の、あちこちが。
 頭の奥が、じくじくと激しく痛む。喉がひりついたように乾き、全身の関節がギスギスする。
「目が覚めたのか」
 部屋に小さく響いた声に、青年は、その身を固くした。忘れもしない。その声を。その声の主を。
 藤滝。
 この屋敷の主の名を呼ぼうとして、青年は目を見開いた。声は枯れ、ただの吐息が喉を通過しただけだった。
「無理をするな」
 その声は抑揚なく淡々としていた。青年の目の前にその顔が現れる。倒れている青年を男が覗き込んだ。
 なんのつもりだ。
 気だるく重たい体をこわばらせて、青年は、男を凝視した。彼の一挙一動に集中する。どんな仕打ちに出るか、わかりゃしない。
 すると、男が動いた。
 手を伸ばすと青年の頬に触れる。冷たい。男の指先は青年の火照った肌を冷やした。もしかして、熱があるのかもしれない。
 男の指は、つぅーと軽く青年の肌を撫でるように動き、青年のまぶたに触れた。そして、ゆっくりとまぶたを下ろす。
 なんだ。
 わけがわからない。
 その仕草がやけに――優しく思える。おかしい。何故だ。そんなの、気の所為に決まっているのに。
 しかし、再び、強い疲労感と眠気が襲ってくる。抗おうとして、その波に飲まれた。近くにあの男がいるというのに。
 青年は意識を手放した。



 気がついたことがある。
 あんなにも散々、汚された身体がきれいになっていること。そして、ここはあの仕置を受けるための納屋ではないこと。おそらく本宅にある部屋のどこかなのだろう。
 畳に敷かれている布団の温かさ。部屋に差し込む光のすがすがしさ。
 ここ数日の負健康な行為の残滓はすべて洗い流されて、いまはただ健康的でそれこそ清浄な空気に満たされている。
 再び目を開いた青年は、思わず男の姿を探していまう。さきほどまで、ここにいたはずだと。
 そんな自分の行動に気がついて、カッと頬を染めた。
 ばかな。
 あいつがどうだと気にすることなどないのだ。
 頭痛はさきほどよりも痛みは引いた。しかし、全身の疲労感が残る。ぼーとする。頭が重い。やはり熱でもあるのだろうか。
「失礼します」
 襖が開けられて、そこに手をついて頭を下げているうら若い少年の姿があった。
「ご主人さまの言いつけのため、お薬をお持ちいましました。お加減はいかがでしょうか」
「なっ!?」
 青年は彼の発言に目をむいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...