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#024 それぞれの夢想
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何だかんだで儀式は終わった。
さすがに国王陛下であるアーノルド様は無理で、結局王家の代表としては、元帥閣下リオネス様が参列された。
どちらにせよ、統括責任者としてシモン様は参加されるわけだから、自動的にリオネス様は参加に名を連ねていた。
護衛の騎士も伴わなくてはならなかったから、ちょうどよかったとも言える。
ただ、やはり祈りの儀式に参列している面々自体は何とか20名以下に押さえ込んだものの、警備があるからと別働隊として30名の護衛騎士伴われたのはマイッタ。
「これは儀式への参列とは別です」
最初50名の騎士を警備に回すと言われたのを30人に減らしてもらったんだけど。
いや、そもそもが50名でも、気を遣ってかなり少なく見積もったんだと言われたんだけど。
それとは別に取材も10紙前後入るとか言われて。はぁ?って思いましたよ。
神聖な儀式だから、と言ってお断りして、その代わりに、魔石で記録をして後で公開するという事で納得してもらった。
考えてみれば、使い道が無いと思われていた未開の地を、開拓するに先駆けて、歴代の神子が一堂に会して儀式を行うというのだから、そりゃ良いネタだよね。
ただ、彼らが現地に来るとなると馬と徒歩だろう。現時点では無理だ。
民間ではグリエンテ商会以外は商用飛竜を所有していない。
ただ、取材を断る口実にした「とても神聖な儀式」というのが、逆に各紙の興味をもり立ててしまった。
この世界の人達がとても神秘的に感じた神子舞いなどは、後日、どの新聞社も一面にして取り上げていた位だ。
それと共に、消えたお酒やパンや菓子の事などもあり、ラグンフリズ王国の国民のみならず、他国にまで知れ、このプロジェクトが注目されるようになってしまった。
実に、まだ何にも形になっていないウチから、どえらい話題性となってしまって、義兄は勿論の事、財務大臣や、内務大臣、産業大臣までもが、当初の規模よりも大きくしても良いじゃ無いかとさえ言い出してきた。
くどいようだけど、まだ杭一つ打ってないんですぜ。
地鎮祭もどきをしただけ。
関係省庁や、義兄の商会関係者もだけど、近隣の市町村なども、なにか捕らぬ狸の皮算用ぽく、なにやら期待という名の欲望が、ムクムク膨らんできた様子が手に取るように分かる。
ただ。
これからまさに、季節は冬。
このラグンフリズ王国の一番の特色である雪の季節に突入してしまうのだから、事態は一旦保留となった。
それでも冬の間、雪の中何度も、俺達は酒樽とパンと温泉まんじゅうを捧げに行った。
転移で行くから、苦でもない。荷物もインベントリがあるから。
地熱が高いのか、祭壇を築いた近辺の、はげているあたりはさほど雪が積もってもいない。
ついでに散策もした。
周辺の森を覆う雪景色と、所々から立ち上る湯気の作り出す秘湯っぽい景色に、ちょっと感動して、ミランに雪をぶつけてみたり、雪の上にミランを押し倒してみたりと、ちょっとはしゃいでしまった。
そんな風に、キャッキャしていたら、いやが上にも夢想してしまったんだ。
…ここに温泉宿が出来て…。
しっぽりと、露天風呂でミランと一緒に星空見上げて…。
濡れ髪のミランが浴衣姿で…。着崩れた襟元から少し汗ばんだ逞しい胸元が見えて…。
…ふふ、そんな胸元に頬擦りしたい。
そう思ったら無意識に、ふわふわの防寒具越しだったけど、抱きついて胸元に頬擦りしていたんだよな。
そんな俺の仕草を何かの合図だと思ったらしきミランが口づけてきた。
結構、深いキスで。悩ましくも濃厚な。
ああ、このまま家の寝室に転移してそのままなだれ込んじゃおうかな、と想った瞬間。
ドクリ…!
体の芯というか、奥底に、謎の脈動が響いた。
ハッとして、唇が離れた。
ミランも目を見開いて、ビックリしたような表情で周囲に目線を廻らせたり、意識を集中させたりしていたから、同じ感覚を感じたのだと思う。
「…今のは…?」
「感じましたか?」
二人ほぼ同時に、また索敵を行った。
特にこれといった異変は無い。
ヌシ様の気配だって。
感じはするが、特に乱れは無い。
息を潜めて、暫く様子をうかがったが、これといって危険を感じるような気配は無かった。
そのまま、転移で帰宅した。
ところで、雪の中に、定期的にお供物を運んでいたのは、俺達だけでは無い。
通信魔道具で、被らないように調整しながら仙元さんと榊さんも置きに行ってくれていた。
交代で行く度に、毎回必ず酒樽も、パンやまんじゅうをのせた皿も、綺麗に空になっていた、という報告を互いにしている。
さすがは魔法が有ったり、妖精や幻獣の居る世界。
不思議だけど、こういう世界なんだなあと、今更ながら感動したりもした。
雪で国内の流通が著しく鈍化している間、王宮では室内で出来る施工計画案の微調整が進められていた。
国内外で話題になった事もあり、産業省と観光ギルドが一定のパイプを持つ事も検討している。
義兄は本来、ゼネコン系の事業はあまり深く関わった事が無かった。
そちらは会頭である義父、その弟…つまりは義兄の叔父の得意分野だったのだが、今回のプロジェクトには率先して指揮を執るべく頑張っている。
春の雪解けを見たら、まず最優先は街道を通す事だ。
道路を敷設しなくては、工事用資材などの輸送が不自由だ。
国家の絡むプロジェクトだから、公共事業としての側面もあり、春になってからの作業員の公募も始まっている。
商会の抱えるサブコンに資材の調達も準備させ始めているらしい。
今現在、雪に覆われて、一旦実質的な動きは見せなくなっているけれど。
水面下では、まさに大きな波となって動き始めている。
さすがに国王陛下であるアーノルド様は無理で、結局王家の代表としては、元帥閣下リオネス様が参列された。
どちらにせよ、統括責任者としてシモン様は参加されるわけだから、自動的にリオネス様は参加に名を連ねていた。
護衛の騎士も伴わなくてはならなかったから、ちょうどよかったとも言える。
ただ、やはり祈りの儀式に参列している面々自体は何とか20名以下に押さえ込んだものの、警備があるからと別働隊として30名の護衛騎士伴われたのはマイッタ。
「これは儀式への参列とは別です」
最初50名の騎士を警備に回すと言われたのを30人に減らしてもらったんだけど。
いや、そもそもが50名でも、気を遣ってかなり少なく見積もったんだと言われたんだけど。
それとは別に取材も10紙前後入るとか言われて。はぁ?って思いましたよ。
神聖な儀式だから、と言ってお断りして、その代わりに、魔石で記録をして後で公開するという事で納得してもらった。
考えてみれば、使い道が無いと思われていた未開の地を、開拓するに先駆けて、歴代の神子が一堂に会して儀式を行うというのだから、そりゃ良いネタだよね。
ただ、彼らが現地に来るとなると馬と徒歩だろう。現時点では無理だ。
民間ではグリエンテ商会以外は商用飛竜を所有していない。
ただ、取材を断る口実にした「とても神聖な儀式」というのが、逆に各紙の興味をもり立ててしまった。
この世界の人達がとても神秘的に感じた神子舞いなどは、後日、どの新聞社も一面にして取り上げていた位だ。
それと共に、消えたお酒やパンや菓子の事などもあり、ラグンフリズ王国の国民のみならず、他国にまで知れ、このプロジェクトが注目されるようになってしまった。
実に、まだ何にも形になっていないウチから、どえらい話題性となってしまって、義兄は勿論の事、財務大臣や、内務大臣、産業大臣までもが、当初の規模よりも大きくしても良いじゃ無いかとさえ言い出してきた。
くどいようだけど、まだ杭一つ打ってないんですぜ。
地鎮祭もどきをしただけ。
関係省庁や、義兄の商会関係者もだけど、近隣の市町村なども、なにか捕らぬ狸の皮算用ぽく、なにやら期待という名の欲望が、ムクムク膨らんできた様子が手に取るように分かる。
ただ。
これからまさに、季節は冬。
このラグンフリズ王国の一番の特色である雪の季節に突入してしまうのだから、事態は一旦保留となった。
それでも冬の間、雪の中何度も、俺達は酒樽とパンと温泉まんじゅうを捧げに行った。
転移で行くから、苦でもない。荷物もインベントリがあるから。
地熱が高いのか、祭壇を築いた近辺の、はげているあたりはさほど雪が積もってもいない。
ついでに散策もした。
周辺の森を覆う雪景色と、所々から立ち上る湯気の作り出す秘湯っぽい景色に、ちょっと感動して、ミランに雪をぶつけてみたり、雪の上にミランを押し倒してみたりと、ちょっとはしゃいでしまった。
そんな風に、キャッキャしていたら、いやが上にも夢想してしまったんだ。
…ここに温泉宿が出来て…。
しっぽりと、露天風呂でミランと一緒に星空見上げて…。
濡れ髪のミランが浴衣姿で…。着崩れた襟元から少し汗ばんだ逞しい胸元が見えて…。
…ふふ、そんな胸元に頬擦りしたい。
そう思ったら無意識に、ふわふわの防寒具越しだったけど、抱きついて胸元に頬擦りしていたんだよな。
そんな俺の仕草を何かの合図だと思ったらしきミランが口づけてきた。
結構、深いキスで。悩ましくも濃厚な。
ああ、このまま家の寝室に転移してそのままなだれ込んじゃおうかな、と想った瞬間。
ドクリ…!
体の芯というか、奥底に、謎の脈動が響いた。
ハッとして、唇が離れた。
ミランも目を見開いて、ビックリしたような表情で周囲に目線を廻らせたり、意識を集中させたりしていたから、同じ感覚を感じたのだと思う。
「…今のは…?」
「感じましたか?」
二人ほぼ同時に、また索敵を行った。
特にこれといった異変は無い。
ヌシ様の気配だって。
感じはするが、特に乱れは無い。
息を潜めて、暫く様子をうかがったが、これといって危険を感じるような気配は無かった。
そのまま、転移で帰宅した。
ところで、雪の中に、定期的にお供物を運んでいたのは、俺達だけでは無い。
通信魔道具で、被らないように調整しながら仙元さんと榊さんも置きに行ってくれていた。
交代で行く度に、毎回必ず酒樽も、パンやまんじゅうをのせた皿も、綺麗に空になっていた、という報告を互いにしている。
さすがは魔法が有ったり、妖精や幻獣の居る世界。
不思議だけど、こういう世界なんだなあと、今更ながら感動したりもした。
雪で国内の流通が著しく鈍化している間、王宮では室内で出来る施工計画案の微調整が進められていた。
国内外で話題になった事もあり、産業省と観光ギルドが一定のパイプを持つ事も検討している。
義兄は本来、ゼネコン系の事業はあまり深く関わった事が無かった。
そちらは会頭である義父、その弟…つまりは義兄の叔父の得意分野だったのだが、今回のプロジェクトには率先して指揮を執るべく頑張っている。
春の雪解けを見たら、まず最優先は街道を通す事だ。
道路を敷設しなくては、工事用資材などの輸送が不自由だ。
国家の絡むプロジェクトだから、公共事業としての側面もあり、春になってからの作業員の公募も始まっている。
商会の抱えるサブコンに資材の調達も準備させ始めているらしい。
今現在、雪に覆われて、一旦実質的な動きは見せなくなっているけれど。
水面下では、まさに大きな波となって動き始めている。
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