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#007 グレイモスとマクミラン
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俺的にはディアナを贈られたのは、本当に想定外で凄く嬉しかった!
そこはちょっと大袈裟にお礼の言葉を言っておいた。
多分、あれはグレイモスが慮ってくれたんだと思うから。
以前の事案後、エムゾード卿と約束した通り、俺はエムゾード辺境伯領に赴き瘴気の浄化をした。
その時の礼を告げられ、いくつかの神殿や治癒で廻った村の事などの雑談を交わした後、別れを告げた。
立ち去る俺達を見えなくなるまでグレイモスは見送っていた。
迎賓棟を後にして、用意されている俺達の部屋に戻ると、何も言わずマクミランが抱きしめてきて、唇を塞がれた。
部屋を整えていた二人の侍従が、見ないようにしてそっと出て行った。
「どうしたの?妬いたの?」
「…はい」
少しだけ顔を離したときに訊いたら、そう応えた。
グレイモス以外なら、あんな事をされても、特に何も感じないだろうに。
もしかすると勘の良いマクミランは、何かを察知しているのかも知れない。
グレイモスは非常に魅力的な美丈夫だ。
そして、とてもセクシーでもある。
だからこそ、あの当時、俺の不貞要員に選ばれて差し向けられたんだろうけど。
最初からそれを知っていなかったら籠絡されていたかも知れない、と思うくらいには、俺は心の奥底では彼に魅力を感じては居るのだ。
例えば、もし大切な恋人がいても、芸能人とかは別枠で好みのタイプとか有るよな。
この女優にグッとくる、とか。
つい目がとまって好ましく思う。この子に迫られたら俺、秒で落ちるね、みたいな。
その時点で相手の本質とかは関係ない。
単純に俗な刺激。一種の娯楽の指向アンテナに近い。
それで言えばグレイモスは間違いなくストライクだ。
もっとも、そうは言っても、彼を同行メンバーの一員として個別認識した当初、俺は自分の恋愛対象が男とは思っていなかった。
今現在、俺の唯一無二、最愛の伴侶はマクミランだが、元来、俺は男が好きだったわけではない。
ただ、駄目というわけではなかった。
これはつまり潜在的にバイだったという事なんだろう。
元の世界で男の後輩とも付き合ったこともあったし。まあ清い間柄のまま終わったが。
彼の告白を受け入れたときも、同性である事での拒絶感は特になかった。
手放しに慕ってくれて、可愛いがっていたし、俺も好きだったから付き合っても良いと普通に思った。
この世界に来て、あの陛下…当時は王太子殿下だけど…にヤられる流れになったときは、こんな事ならあの当時アイツに抱かれておくんだったと思ったよ。
俺の方から押し倒してでも。
だって、初めての男が好いてもいない、お互いに打算だけの行為で、薬を使わなきゃ勃たないような相手だなんて笑えないよ。
あんなのにバージンを捧げるくらいなら、アイツにやっちまいたかったよ。
それでも元王太子に抱かれたのは、当時の俺にとっては“拒絶”が“死”に繋がるかも知れない危機感があったからだ。
右も左も分からない異世界で、俺を召喚した組織のトップ、その庇護を失えばどうなるのか。
何せ、普通に帯剣している騎士がゾロゾロ居る。人によっては斧だのトゲトゲの付いた棍棒みたいな、ヒットしたら確実に即死間違い無しの野蛮な武器だのを背負ってたりする。恐怖だよ。
堂々と人殺しの道具を見せて歩く人間が、普通に日常的に闊歩している国で生まれ育ってはいないからな。
まあ、後で考えたらさすがにあそこで拒否したとしても、殺されはしなかったんじゃないかなとは思うけど。
後の祭りだ。
確かに王太子も容姿は良かった。でも、中身がアレだ。
…無いわ。
最初に王宮に連れて行かれて、俺がいかに重要な使命を帯びていたか、だから戻して欲しいと必死に訴えた後の、あの殿下の言葉を聞いたとき、憤りを覚えるよりゾッとした。
言語は通じているのに、意思の疎通全く不可能って、絶望しかない。
まあ、後になって、アレはあの人がズレていたんだなって分かったから良かったけど。
あの人に比べたら、グレイモスは常にこちら側の事情を察しようとしてくれた。
あの当時、グレイモスに対して徹底して壁を作ろうとしていたのも、勿論彼が不貞要員だと知ってしまったから、絶対に罠には掛かるまいと警戒して居たのも有る。
だが、それだけじゃない。変に優しく接してくるから危険だと思ったんだ。
うっかり気が緩んで、あの優しさに絆されたら、なだれ込みそうでヤバかった。
ミランが居てくれて良かった。
彼が俺に向けてくれる、まっすぐな好意はいつも俺を正気で居させてくれた。
途中、何度か、この世界では俺の方がおかしいのか?と思ったこともある。
「国を救済しに来てくれている神子様には、通常以上の敬意を払って当然です」
その言葉を言ってもらえたときには「だよね?」と。
「それ、別に俺の期待しすぎじゃないよね?」と思ったもんだ。
冒険者の登録や活動にしても、剣や乗馬の指南にしても、魔獣の処理の仕方にしても、俺がこの世界で必要としているモノは全てマクミランのおかげで身についた。
彼が居なかったら結局俺は、どんなに理不尽を感じても王宮か神殿の所有物になるほか無かったんだろう。
マクミランには感謝しても仕切れない。
でも、感謝しているから身を任せたんじゃない。
俺が一番最初に彼を愛してると感じたのは、一緒に暮らして暫く経って、雪解けの頃合いに一人でやり残した村に治癒に行ったときだ。
俺のいない間に彼が自暴自棄になって居る姿を見たとき、胸がぎゅうっと苦しくなった。
俺がいないと駄目なのか、と思うと愛しさがこみ上げて。
ああ、もう君のことは俺がしあわせにする!と思ったんだ。
現実には俺の方がしあわせを貰っているんだけどな。
そこはちょっと大袈裟にお礼の言葉を言っておいた。
多分、あれはグレイモスが慮ってくれたんだと思うから。
以前の事案後、エムゾード卿と約束した通り、俺はエムゾード辺境伯領に赴き瘴気の浄化をした。
その時の礼を告げられ、いくつかの神殿や治癒で廻った村の事などの雑談を交わした後、別れを告げた。
立ち去る俺達を見えなくなるまでグレイモスは見送っていた。
迎賓棟を後にして、用意されている俺達の部屋に戻ると、何も言わずマクミランが抱きしめてきて、唇を塞がれた。
部屋を整えていた二人の侍従が、見ないようにしてそっと出て行った。
「どうしたの?妬いたの?」
「…はい」
少しだけ顔を離したときに訊いたら、そう応えた。
グレイモス以外なら、あんな事をされても、特に何も感じないだろうに。
もしかすると勘の良いマクミランは、何かを察知しているのかも知れない。
グレイモスは非常に魅力的な美丈夫だ。
そして、とてもセクシーでもある。
だからこそ、あの当時、俺の不貞要員に選ばれて差し向けられたんだろうけど。
最初からそれを知っていなかったら籠絡されていたかも知れない、と思うくらいには、俺は心の奥底では彼に魅力を感じては居るのだ。
例えば、もし大切な恋人がいても、芸能人とかは別枠で好みのタイプとか有るよな。
この女優にグッとくる、とか。
つい目がとまって好ましく思う。この子に迫られたら俺、秒で落ちるね、みたいな。
その時点で相手の本質とかは関係ない。
単純に俗な刺激。一種の娯楽の指向アンテナに近い。
それで言えばグレイモスは間違いなくストライクだ。
もっとも、そうは言っても、彼を同行メンバーの一員として個別認識した当初、俺は自分の恋愛対象が男とは思っていなかった。
今現在、俺の唯一無二、最愛の伴侶はマクミランだが、元来、俺は男が好きだったわけではない。
ただ、駄目というわけではなかった。
これはつまり潜在的にバイだったという事なんだろう。
元の世界で男の後輩とも付き合ったこともあったし。まあ清い間柄のまま終わったが。
彼の告白を受け入れたときも、同性である事での拒絶感は特になかった。
手放しに慕ってくれて、可愛いがっていたし、俺も好きだったから付き合っても良いと普通に思った。
この世界に来て、あの陛下…当時は王太子殿下だけど…にヤられる流れになったときは、こんな事ならあの当時アイツに抱かれておくんだったと思ったよ。
俺の方から押し倒してでも。
だって、初めての男が好いてもいない、お互いに打算だけの行為で、薬を使わなきゃ勃たないような相手だなんて笑えないよ。
あんなのにバージンを捧げるくらいなら、アイツにやっちまいたかったよ。
それでも元王太子に抱かれたのは、当時の俺にとっては“拒絶”が“死”に繋がるかも知れない危機感があったからだ。
右も左も分からない異世界で、俺を召喚した組織のトップ、その庇護を失えばどうなるのか。
何せ、普通に帯剣している騎士がゾロゾロ居る。人によっては斧だのトゲトゲの付いた棍棒みたいな、ヒットしたら確実に即死間違い無しの野蛮な武器だのを背負ってたりする。恐怖だよ。
堂々と人殺しの道具を見せて歩く人間が、普通に日常的に闊歩している国で生まれ育ってはいないからな。
まあ、後で考えたらさすがにあそこで拒否したとしても、殺されはしなかったんじゃないかなとは思うけど。
後の祭りだ。
確かに王太子も容姿は良かった。でも、中身がアレだ。
…無いわ。
最初に王宮に連れて行かれて、俺がいかに重要な使命を帯びていたか、だから戻して欲しいと必死に訴えた後の、あの殿下の言葉を聞いたとき、憤りを覚えるよりゾッとした。
言語は通じているのに、意思の疎通全く不可能って、絶望しかない。
まあ、後になって、アレはあの人がズレていたんだなって分かったから良かったけど。
あの人に比べたら、グレイモスは常にこちら側の事情を察しようとしてくれた。
あの当時、グレイモスに対して徹底して壁を作ろうとしていたのも、勿論彼が不貞要員だと知ってしまったから、絶対に罠には掛かるまいと警戒して居たのも有る。
だが、それだけじゃない。変に優しく接してくるから危険だと思ったんだ。
うっかり気が緩んで、あの優しさに絆されたら、なだれ込みそうでヤバかった。
ミランが居てくれて良かった。
彼が俺に向けてくれる、まっすぐな好意はいつも俺を正気で居させてくれた。
途中、何度か、この世界では俺の方がおかしいのか?と思ったこともある。
「国を救済しに来てくれている神子様には、通常以上の敬意を払って当然です」
その言葉を言ってもらえたときには「だよね?」と。
「それ、別に俺の期待しすぎじゃないよね?」と思ったもんだ。
冒険者の登録や活動にしても、剣や乗馬の指南にしても、魔獣の処理の仕方にしても、俺がこの世界で必要としているモノは全てマクミランのおかげで身についた。
彼が居なかったら結局俺は、どんなに理不尽を感じても王宮か神殿の所有物になるほか無かったんだろう。
マクミランには感謝しても仕切れない。
でも、感謝しているから身を任せたんじゃない。
俺が一番最初に彼を愛してると感じたのは、一緒に暮らして暫く経って、雪解けの頃合いに一人でやり残した村に治癒に行ったときだ。
俺のいない間に彼が自暴自棄になって居る姿を見たとき、胸がぎゅうっと苦しくなった。
俺がいないと駄目なのか、と思うと愛しさがこみ上げて。
ああ、もう君のことは俺がしあわせにする!と思ったんだ。
現実には俺の方がしあわせを貰っているんだけどな。
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