86 / 100
#86 お米をください
しおりを挟む
沖の方に、クラーケンの巣が有るのは確かなのだろう。
シャンド王国の、王都の港湾は幅が広く、弧を描いて居る。大きく突き出す岬に囲まれた内湾の最奥だ。
クラーケンは外海の遙かな公海に出没した記録が有る。
そこにばかり出没するという事は、その生物にとってそこが快適だからだ。
深さ、海流、水温などなど。
今回のクラーケンは岬に囲まれている内湾に現れた。
人為的な現象だろう、と、シャンド王国の騎士団も国家警備隊も捜査している。
そこで、魔道具を用いて呼び寄せた者が居る事が突き止められた。
この数日でだいぶ目星を付けているようだ。
そちらも、お国に任せることにした。
俺達はクラーケン討伐に集中する。
警備隊の捜査で追い詰められていることを知ったらしく、どうやら犯人はその魔道具を使用することを止めた。
使えば優秀な魔道捜査官に魔術の痕跡を追跡されて、アシが付いてしまうからだ。
薄々感じてはいたが、どうやら、今回の第三国での会談を阻止したい者が、コモ王国側に居るようだ。
神子様の“盗聴”でそれは確信となった。
海上警備隊の巡視船に乗り込んで、索敵しながらクラーケンが居る場所に近づく。
魔道具を使って、少し離れた外海の方におびき寄せる。
外海ではあるが、周辺よりは水深が浅めの場所だ。
おびき寄せる魔道具は、犯人の使っていた物と同じ。
当然、海上警備隊も所有している。
彼らが使用するのは、うっかり危険領域に迷い出て来たクラーケンを、船舶の航行に影響を及ぼさないよう、いつものクラーケン生息エリアに誘導するためだ。
人間の生活に実害さえ無ければ、敢えて危険を伴う討伐をする必要は無いが、一度船を襲ったクラーケンはまた襲う。
かなり純度の高い、動力源が積まれているからだ。
ある程度の距離感を持って、船が停止する。
近くまでおびき寄せる。
海面が丘のように盛り上がって寄ってくる。
丘の頂上が割れて、クラーケンの頭頂部分がのぞき、そのまま丸みのある山のような巨体が目の前に聳える。それ自体、別のモンスターのような巨大な脚が、背後と脇の方から滝よりも厚みのある怒濤のしぶきを振らせながら船を捉えようと海面に出現する。
海上警備隊員達が思わず声を上げた。
だが、船全体を神子様の結界が包み込み、僅かに海面から浮かせていることで波しぶきに船が揉まれることは無い。
時間をかけ、ゆっくりと水位の上昇が陸地にまで押して行く。
魔導師達の結界が見えない壁を作って一帯を護る手はずになっている。
クラーケンの弱点は両目の真ん中の奥深くにある。そこが魔核だ。
そして、雷属性の攻撃に弱い。
すかさず相手が俺を認識する前に目に向けて、ヒットした瞬間、雷撃を伴って炸裂する石弾を投げる。
片眼が潰れた。
轟音のような咆哮を上げて、巨大な軟体魔獣が一旦沈んだ後また海面を割って伸び上がり、辺り一面に渦が生じ、海中で暴れた脚が海底の岩礁を破壊する。
神子様の結界に包まれている船は渦に呑まれることは無い。
ただ、大量の水しぶきを浴びて、神子様の視界が眩んだ影響で、結界ごと少しだけ揺れた。
俺は大剣に魔力を込める。
魔力そのものを、研ぎ澄まされた刃の延長として横一閃した。
手前に迫っていた足と、その横から迫り来る更に二本の足がスパスパと斬れて海面に落ちる。そのうちの一本は本体にほど近い。
逆を言えば、脚に邪魔をされて本体にその攻撃が届かなかったという事だ。
俺を主敵と認識したクラーケンは、数本の足を伸ばして来て、捕らえようとする。
片眼も潰されているから、相当に怒っている。真っ直ぐにこちらを見ている。
神子様の強い身体強化を受けて居る俺は、迷わず船縁を蹴って躍りかかった。
伸ばされてきた足を踏み台にして、ジャンプしようとしたが、表皮のぬめりに思った以上に足を取られる。
ぐらついた俺の背を、神子様の風魔法が押し上げてそのまま本体に飛ばしてくれた。
俺の大刀をちょうど両目の間に深く刺し込む。
巨体から見たらトゲが刺さった程度だ。
だが、切っ先に魔力を込めて雷を放つ。
クラーケンは体の内部で起きた雷撃に体を震わせて強ばる。
込めた魔力が迸って内部深く浸潤し、魔核に向かって突き進む。
不気味な轟音を発しながら、クラーケンの体が激しく上下に揺れ、俺の体は一本の足に弾かれた。
大量のしぶきで視界を遮断され、弾かれて宙を舞っていることで天地も見失っていた。
「ミランッ!!」
神子様の声がして、何かに体が引き寄せられる。
気がついたときには、ふわりと甲板の上に下ろされた。
次の瞬間、なぜか神子様が消えた。おそらく何処かに転移したのだと思う。
あわてる海上警備員達。
皆がキョロキョロと見回して「神子様?」「神子様が消えた?」とざわついているが、俺は、かなりのMPを急激に消費して力が出ず、すぐには立ち上がれずに居た。
暫くして、やはり突然に元の位置に神子様が戻った。その手には俺の大剣があった。
討伐の際に起きた荒波が鎮まるのを待つために、何時間か航行してから、王都の港に向かった。
港に着いたときには歓声に迎えられた。
その日のうちに多少の水位上昇を繰り返したが、さほど大きな被害も出ずに収まったらしい。
巡視船にセットされていた記録魔石と、海上警備員達の報告で、詳細が伝えられたようだ。
俺は帰還した時点で、疲労のため爆睡していたから、後から聞いた話だけど。
俺の回復を待って、翌日に労いの宴を催してくれた。
もともと、ラグンフリズ一行をもてなす一環として、その日には日中、ガーデンパーティが予定されていたのだが、魔導師達や海上警備隊、様々な準備を調えてくれた騎士団や内政官達も集めての、盛大だが気取りの無い真昼の宴となった。
尤も、魔導師達の中には魔力切れで参加出来なかった者も何人も居たのだが。
宴もたけなわとなった頃合いで、中庭の開けた芝生の上で、神子様が死骸から採取してきたクラーケンの魔核たる巨大魔石を置いた。
インベントリに収納していたのを出して、シャンド王国の国王陛下に献上したのだ。
「い、いや、それは…、討伐を成し遂げてくれた神子様と騎士殿が手にするべきだ」
「いえ。でしたら、コレの換わりにお米をください」
宴会の喧噪が一瞬にして止まった。
シャンド王国の、王都の港湾は幅が広く、弧を描いて居る。大きく突き出す岬に囲まれた内湾の最奥だ。
クラーケンは外海の遙かな公海に出没した記録が有る。
そこにばかり出没するという事は、その生物にとってそこが快適だからだ。
深さ、海流、水温などなど。
今回のクラーケンは岬に囲まれている内湾に現れた。
人為的な現象だろう、と、シャンド王国の騎士団も国家警備隊も捜査している。
そこで、魔道具を用いて呼び寄せた者が居る事が突き止められた。
この数日でだいぶ目星を付けているようだ。
そちらも、お国に任せることにした。
俺達はクラーケン討伐に集中する。
警備隊の捜査で追い詰められていることを知ったらしく、どうやら犯人はその魔道具を使用することを止めた。
使えば優秀な魔道捜査官に魔術の痕跡を追跡されて、アシが付いてしまうからだ。
薄々感じてはいたが、どうやら、今回の第三国での会談を阻止したい者が、コモ王国側に居るようだ。
神子様の“盗聴”でそれは確信となった。
海上警備隊の巡視船に乗り込んで、索敵しながらクラーケンが居る場所に近づく。
魔道具を使って、少し離れた外海の方におびき寄せる。
外海ではあるが、周辺よりは水深が浅めの場所だ。
おびき寄せる魔道具は、犯人の使っていた物と同じ。
当然、海上警備隊も所有している。
彼らが使用するのは、うっかり危険領域に迷い出て来たクラーケンを、船舶の航行に影響を及ぼさないよう、いつものクラーケン生息エリアに誘導するためだ。
人間の生活に実害さえ無ければ、敢えて危険を伴う討伐をする必要は無いが、一度船を襲ったクラーケンはまた襲う。
かなり純度の高い、動力源が積まれているからだ。
ある程度の距離感を持って、船が停止する。
近くまでおびき寄せる。
海面が丘のように盛り上がって寄ってくる。
丘の頂上が割れて、クラーケンの頭頂部分がのぞき、そのまま丸みのある山のような巨体が目の前に聳える。それ自体、別のモンスターのような巨大な脚が、背後と脇の方から滝よりも厚みのある怒濤のしぶきを振らせながら船を捉えようと海面に出現する。
海上警備隊員達が思わず声を上げた。
だが、船全体を神子様の結界が包み込み、僅かに海面から浮かせていることで波しぶきに船が揉まれることは無い。
時間をかけ、ゆっくりと水位の上昇が陸地にまで押して行く。
魔導師達の結界が見えない壁を作って一帯を護る手はずになっている。
クラーケンの弱点は両目の真ん中の奥深くにある。そこが魔核だ。
そして、雷属性の攻撃に弱い。
すかさず相手が俺を認識する前に目に向けて、ヒットした瞬間、雷撃を伴って炸裂する石弾を投げる。
片眼が潰れた。
轟音のような咆哮を上げて、巨大な軟体魔獣が一旦沈んだ後また海面を割って伸び上がり、辺り一面に渦が生じ、海中で暴れた脚が海底の岩礁を破壊する。
神子様の結界に包まれている船は渦に呑まれることは無い。
ただ、大量の水しぶきを浴びて、神子様の視界が眩んだ影響で、結界ごと少しだけ揺れた。
俺は大剣に魔力を込める。
魔力そのものを、研ぎ澄まされた刃の延長として横一閃した。
手前に迫っていた足と、その横から迫り来る更に二本の足がスパスパと斬れて海面に落ちる。そのうちの一本は本体にほど近い。
逆を言えば、脚に邪魔をされて本体にその攻撃が届かなかったという事だ。
俺を主敵と認識したクラーケンは、数本の足を伸ばして来て、捕らえようとする。
片眼も潰されているから、相当に怒っている。真っ直ぐにこちらを見ている。
神子様の強い身体強化を受けて居る俺は、迷わず船縁を蹴って躍りかかった。
伸ばされてきた足を踏み台にして、ジャンプしようとしたが、表皮のぬめりに思った以上に足を取られる。
ぐらついた俺の背を、神子様の風魔法が押し上げてそのまま本体に飛ばしてくれた。
俺の大刀をちょうど両目の間に深く刺し込む。
巨体から見たらトゲが刺さった程度だ。
だが、切っ先に魔力を込めて雷を放つ。
クラーケンは体の内部で起きた雷撃に体を震わせて強ばる。
込めた魔力が迸って内部深く浸潤し、魔核に向かって突き進む。
不気味な轟音を発しながら、クラーケンの体が激しく上下に揺れ、俺の体は一本の足に弾かれた。
大量のしぶきで視界を遮断され、弾かれて宙を舞っていることで天地も見失っていた。
「ミランッ!!」
神子様の声がして、何かに体が引き寄せられる。
気がついたときには、ふわりと甲板の上に下ろされた。
次の瞬間、なぜか神子様が消えた。おそらく何処かに転移したのだと思う。
あわてる海上警備員達。
皆がキョロキョロと見回して「神子様?」「神子様が消えた?」とざわついているが、俺は、かなりのMPを急激に消費して力が出ず、すぐには立ち上がれずに居た。
暫くして、やはり突然に元の位置に神子様が戻った。その手には俺の大剣があった。
討伐の際に起きた荒波が鎮まるのを待つために、何時間か航行してから、王都の港に向かった。
港に着いたときには歓声に迎えられた。
その日のうちに多少の水位上昇を繰り返したが、さほど大きな被害も出ずに収まったらしい。
巡視船にセットされていた記録魔石と、海上警備員達の報告で、詳細が伝えられたようだ。
俺は帰還した時点で、疲労のため爆睡していたから、後から聞いた話だけど。
俺の回復を待って、翌日に労いの宴を催してくれた。
もともと、ラグンフリズ一行をもてなす一環として、その日には日中、ガーデンパーティが予定されていたのだが、魔導師達や海上警備隊、様々な準備を調えてくれた騎士団や内政官達も集めての、盛大だが気取りの無い真昼の宴となった。
尤も、魔導師達の中には魔力切れで参加出来なかった者も何人も居たのだが。
宴もたけなわとなった頃合いで、中庭の開けた芝生の上で、神子様が死骸から採取してきたクラーケンの魔核たる巨大魔石を置いた。
インベントリに収納していたのを出して、シャンド王国の国王陛下に献上したのだ。
「い、いや、それは…、討伐を成し遂げてくれた神子様と騎士殿が手にするべきだ」
「いえ。でしたら、コレの換わりにお米をください」
宴会の喧噪が一瞬にして止まった。
57
お気に入りに追加
353
あなたにおすすめの小説

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!
竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。
侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。
母が亡くなるまでは。
母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。
すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。
実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。
2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。

タチですが異世界ではじめて奪われました
雪
BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります!
読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです!
俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。
2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。
丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。
「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です!
もちろんハルトのその後なんかも出てきます!
ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。

愛人少年は王に寵愛される
時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。
僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。
初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。
そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。
僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。
そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる