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#46 黒歴史 ※(?)
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マクミラン、残念ネタと、二人のバカップル話なので、人によっては『読まなきゃ良かった』と思われるかも知れません。
予め謝っておきます。ごめんなさい。
ここまで誠実真面目一筋キャラだった主人公の黒歴史、若気の至りのクズ行為と
神子様、風俗利用推奨発言など、地雷な人は飛ばして下さい。
あと、R的には大したことは含まれていませんが、一応保険です。
―――――――――――――――――――――――――――――
その夜、俺は少し調子に乗ってしまったのだ。
神子様からの甘いお誘い。
好きで好きで堪らなくて、吐き出し始めた想いは尽きる事がなくて。
目の前の神子様の妖しく艶めく反応、獣欲を刺激する鳴き声、昇りつめるに従って早まる律動。甘い吐息。
酔って、溺れて、貪るのを制御出来るほど、俺はその激情の扱いに慣れていなかった。
「おかしいでしょ?おかしいよね?」
朝食後…、いや、時間的にはもう昼を回ってしまっていたんだが…向かい合う神子様に、なぜか俺は追及を受けている。
その原因は、あまりにやり過ぎた自分の所業を神子様に謝っている際にポロリと出てしまった一言が原因だった。
――すみません、俺、恋愛経験とか無いんで、加減が分からなくて
なぜか、神子様はその言葉に食いついた。
「そんな訳ねーだろ!」というツッコミと共に。
いや本当なんです…と項垂れる俺を、酷く胡乱な眼で見られたときには少し悲しい気持ちになった。
実は、俺は性行為の経験値だけをカウントするなら、結構な数はこなしていると思う。
黒歴史だからあまり触れたくは無いのだが。
走馬灯のようにそれに関する過去の日々が脳裏を巡る。
初めての時は兵役の時で、熱を持て余したむさ苦しい同僚達と“指導”みたいなノリで弄られ、のしかかられ、交わってしまった。
勢いで覚えた安易で直接的な快楽は、他に楽しみがない閉鎖空間で唯一の刺激で、しかも、相手からも晩酌に誘われるかのような、軽い調子でほぼ毎晩催促されたのもあり、続けてしまった。
相手は気がつくと入れ替わっていたが、兵役中のソレなどはこんなもんだろうと思って深く考えなかった。事実周りもみんな、そんなもんだと言っていた。
正直言って、兵役での訓練は俺には全然生ぬるく、他の連中に合わせなければならない事もあり、逆にフラストレーションが溜まるほどつまらなかった。
しかも、10代の人一倍健康な男にとっては、特別な任務でも与えられない限りは、刺激と言えばそれしかなく、もう覚えたてのそれは日々のストレス発散だった。
たまの休日には同僚に誘われるがまま、色街にも繰り出した。
買っていたのは専ら男娼だったが。
一度女性も試したが、どうしてもダメだった。
本職の手練手管を教えられ、覚え、同僚と情報交換し、実践でメス落ちさせる事で愚かにも勝ち誇っていた。というか、何でか勝負になっていた。
ある時突然、終焉が訪れた。最初から最も乗り気で一緒に遊んでいた同僚二名が、真剣な恋人が出来た途端にその遊びをやめてしまったからだ。それを見て、心を伴わないただの乱交に無性に空しさがこみ上げ、己の馬鹿さ加減を痛感してぷっつりとやめた。
本当に恥ずかしい話で、とても神子様に話せることじゃない…と思っていたのに、なぜか、いつの間にか誘導されて、大まかではあるが、だいたいの事情は引き出されてしまった。
「‥‥‥‥そっか。ミランにもそんな、やんちゃなときがあったんだね」
俺は頭を抱えて項垂れた。神子様はちょっとした、不用意な言葉尻を捉えて引き出すのが上手すぎる。
神子様の長い溜息が聞こえた後、沈黙が続いた。怖い。
きっと軽蔑されてしまったんだ。
神子様は俺の事を常々『ウブっぽい』と言っていたから幻滅されたのかも知れない。
ウブも何も。
恋愛経験が無かったのは本当だ。
「‥‥‥ゴメンね‥‥」
つむじを見せて居るかのように深く項垂れていた俺の頭上から、弱々しい神子様の声がした。
おそるおそる目を上げると、悲しそうにしょげている神子様が、力なく背を丸めて座って。「‥‥‥やっぱり、俺じゃミランを満足させてあげられてないよね。でも、体力的にこれ以上は無理。この先俺の体力が上がっていく可能性もほぼ無いし。むしろ減っていく未来しかないんだけど。そもそも現時点で、さすがに連日は無理だし‥‥‥もう、おっさんだから‥‥‥」
「え、な、何の話ですか‥‥‥?」
「だって、やっぱり俺達、今、新婚さんだろ?物足りないんじゃって思ったら、ヘコむよね…」
「えっ、いえ、物足りないなんて思ってないです!そもそも、連日なんて、そんな無茶言いませんし!‥‥‥っていうか、えっ?し、新婚さん?」
「うん。お姉さん、お義兄さん家族も、村の人達もみんなそう思ってるよ。俺もそう思ってる。ミランは違うの?」
「い、いえ、俺は、そんな…考えた事も無いです!」
えーーっ、ショック!と神子様は目を丸くした。
そしてその直後少し口を尖らせて「そこは嘘でも『思ってる』って言っとけよ」と頭上に柔い手刀を入れられた。
「じゃあさ、一年間だけは、俺だけでガマンして」
「‥‥‥は?」
「一年経ったら、‥‥う~ん、ホントは、本当~はやだけど、まあ、うん、可哀想だもんな。週一くらいで風俗を‥‥‥色街を利用するのを許可するよ。でも一年はさ、新婚だから。つか、新婚なんだよ。分かれよ。」
「え、えっ、なにを…、何を言っているんですか?色街を利用なんてお断りですよ!俺はもうそういう事はやめたんですからッ。神子様以外に興味なんて無いです」
話が全く噛み合っていない感が著しい。
「心が伴ってないから、当時の俺はあんなにヤッても満足出来なかったんだと思います。今は…むしろ、ごくたまにでも……神子様だと、もうホントに…満たされて、神子様以外は、もう要らないっていうか…」
顔に熱が溜まるのを誤魔化すみたいに、俯いて必死に言い募っていたら、いつの間にか神子様がすぐ傍まで来ていて、俺を起き上がらせるとスルリと俺の脚の間に入り腿に座った。
どうやら神子様に迫られるときの定位置になりつつある。
「ありがとう、ミラン。やっぱり優しいな。労ってくれて…でもさすがに、俺だって、“ごくたまに”じゃ悪いって思うよ?もうちょっと頑張るからさ」
髪をぐしゃぐしゃに撫で繰り回されながら、顔のあちこちにキスを落とされる。
一体何の話をしているんだろう。なんでこんな話になっているんだ。
いや、それよりも、俺の黒歴史の話を聞いても軽蔑はしなかったということで…大丈夫という事だろうか。
なんであんな馬鹿をやらかしていたんだ、あの当時の俺。
予め謝っておきます。ごめんなさい。
ここまで誠実真面目一筋キャラだった主人公の黒歴史、若気の至りのクズ行為と
神子様、風俗利用推奨発言など、地雷な人は飛ばして下さい。
あと、R的には大したことは含まれていませんが、一応保険です。
―――――――――――――――――――――――――――――
その夜、俺は少し調子に乗ってしまったのだ。
神子様からの甘いお誘い。
好きで好きで堪らなくて、吐き出し始めた想いは尽きる事がなくて。
目の前の神子様の妖しく艶めく反応、獣欲を刺激する鳴き声、昇りつめるに従って早まる律動。甘い吐息。
酔って、溺れて、貪るのを制御出来るほど、俺はその激情の扱いに慣れていなかった。
「おかしいでしょ?おかしいよね?」
朝食後…、いや、時間的にはもう昼を回ってしまっていたんだが…向かい合う神子様に、なぜか俺は追及を受けている。
その原因は、あまりにやり過ぎた自分の所業を神子様に謝っている際にポロリと出てしまった一言が原因だった。
――すみません、俺、恋愛経験とか無いんで、加減が分からなくて
なぜか、神子様はその言葉に食いついた。
「そんな訳ねーだろ!」というツッコミと共に。
いや本当なんです…と項垂れる俺を、酷く胡乱な眼で見られたときには少し悲しい気持ちになった。
実は、俺は性行為の経験値だけをカウントするなら、結構な数はこなしていると思う。
黒歴史だからあまり触れたくは無いのだが。
走馬灯のようにそれに関する過去の日々が脳裏を巡る。
初めての時は兵役の時で、熱を持て余したむさ苦しい同僚達と“指導”みたいなノリで弄られ、のしかかられ、交わってしまった。
勢いで覚えた安易で直接的な快楽は、他に楽しみがない閉鎖空間で唯一の刺激で、しかも、相手からも晩酌に誘われるかのような、軽い調子でほぼ毎晩催促されたのもあり、続けてしまった。
相手は気がつくと入れ替わっていたが、兵役中のソレなどはこんなもんだろうと思って深く考えなかった。事実周りもみんな、そんなもんだと言っていた。
正直言って、兵役での訓練は俺には全然生ぬるく、他の連中に合わせなければならない事もあり、逆にフラストレーションが溜まるほどつまらなかった。
しかも、10代の人一倍健康な男にとっては、特別な任務でも与えられない限りは、刺激と言えばそれしかなく、もう覚えたてのそれは日々のストレス発散だった。
たまの休日には同僚に誘われるがまま、色街にも繰り出した。
買っていたのは専ら男娼だったが。
一度女性も試したが、どうしてもダメだった。
本職の手練手管を教えられ、覚え、同僚と情報交換し、実践でメス落ちさせる事で愚かにも勝ち誇っていた。というか、何でか勝負になっていた。
ある時突然、終焉が訪れた。最初から最も乗り気で一緒に遊んでいた同僚二名が、真剣な恋人が出来た途端にその遊びをやめてしまったからだ。それを見て、心を伴わないただの乱交に無性に空しさがこみ上げ、己の馬鹿さ加減を痛感してぷっつりとやめた。
本当に恥ずかしい話で、とても神子様に話せることじゃない…と思っていたのに、なぜか、いつの間にか誘導されて、大まかではあるが、だいたいの事情は引き出されてしまった。
「‥‥‥‥そっか。ミランにもそんな、やんちゃなときがあったんだね」
俺は頭を抱えて項垂れた。神子様はちょっとした、不用意な言葉尻を捉えて引き出すのが上手すぎる。
神子様の長い溜息が聞こえた後、沈黙が続いた。怖い。
きっと軽蔑されてしまったんだ。
神子様は俺の事を常々『ウブっぽい』と言っていたから幻滅されたのかも知れない。
ウブも何も。
恋愛経験が無かったのは本当だ。
「‥‥‥ゴメンね‥‥」
つむじを見せて居るかのように深く項垂れていた俺の頭上から、弱々しい神子様の声がした。
おそるおそる目を上げると、悲しそうにしょげている神子様が、力なく背を丸めて座って。「‥‥‥やっぱり、俺じゃミランを満足させてあげられてないよね。でも、体力的にこれ以上は無理。この先俺の体力が上がっていく可能性もほぼ無いし。むしろ減っていく未来しかないんだけど。そもそも現時点で、さすがに連日は無理だし‥‥‥もう、おっさんだから‥‥‥」
「え、な、何の話ですか‥‥‥?」
「だって、やっぱり俺達、今、新婚さんだろ?物足りないんじゃって思ったら、ヘコむよね…」
「えっ、いえ、物足りないなんて思ってないです!そもそも、連日なんて、そんな無茶言いませんし!‥‥‥っていうか、えっ?し、新婚さん?」
「うん。お姉さん、お義兄さん家族も、村の人達もみんなそう思ってるよ。俺もそう思ってる。ミランは違うの?」
「い、いえ、俺は、そんな…考えた事も無いです!」
えーーっ、ショック!と神子様は目を丸くした。
そしてその直後少し口を尖らせて「そこは嘘でも『思ってる』って言っとけよ」と頭上に柔い手刀を入れられた。
「じゃあさ、一年間だけは、俺だけでガマンして」
「‥‥‥は?」
「一年経ったら、‥‥う~ん、ホントは、本当~はやだけど、まあ、うん、可哀想だもんな。週一くらいで風俗を‥‥‥色街を利用するのを許可するよ。でも一年はさ、新婚だから。つか、新婚なんだよ。分かれよ。」
「え、えっ、なにを…、何を言っているんですか?色街を利用なんてお断りですよ!俺はもうそういう事はやめたんですからッ。神子様以外に興味なんて無いです」
話が全く噛み合っていない感が著しい。
「心が伴ってないから、当時の俺はあんなにヤッても満足出来なかったんだと思います。今は…むしろ、ごくたまにでも……神子様だと、もうホントに…満たされて、神子様以外は、もう要らないっていうか…」
顔に熱が溜まるのを誤魔化すみたいに、俯いて必死に言い募っていたら、いつの間にか神子様がすぐ傍まで来ていて、俺を起き上がらせるとスルリと俺の脚の間に入り腿に座った。
どうやら神子様に迫られるときの定位置になりつつある。
「ありがとう、ミラン。やっぱり優しいな。労ってくれて…でもさすがに、俺だって、“ごくたまに”じゃ悪いって思うよ?もうちょっと頑張るからさ」
髪をぐしゃぐしゃに撫で繰り回されながら、顔のあちこちにキスを落とされる。
一体何の話をしているんだろう。なんでこんな話になっているんだ。
いや、それよりも、俺の黒歴史の話を聞いても軽蔑はしなかったということで…大丈夫という事だろうか。
なんであんな馬鹿をやらかしていたんだ、あの当時の俺。
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