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いっしょう!
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アリーがスティラの離宮に入ってからの一週間は平穏に過ぎた。
家事も修行の一環ととらえ、筋肉に負荷を与える工夫をして勤しむことにした。空いた時間はスティラと遊びながら筋肉を苛め抜いたが、もちろん適度な休息も忘れない。
その甲斐あって、アリーの魔法力は増加の一途をたどっている。しかしながら、まだ治癒魔法を発動させるには至らなかった。
<やはり治癒魔法は持って生まれたものなのかしら……いや、まだ希望は捨てないでおこう>
もしアリーが治癒魔法を身につけたら、聖女ミアの魅了魔法を解除することも可能になるかもしれない。別にマクシミリアンや公爵家の連中を救いたいわけではないが、これから先救いたくなる人物が出てこないとも限らないし。
だからアリーはスティラを寝かしつけた後、己の魔力量を確認することが日課になった。そのときだけは魔法を使って、最上位の使い魔である闇の使徒に協力してもらうことにした。
「どうかしらクロちゃん、わたしの魔力量増えてる?」
『どうでしょうねえ。私がしゃべれるようになったから、増えてるんでしょうねえ……』
「わ、クロちゃん喋った!」
『黒いからクロちゃんという安直な名づけはやめてください。私は第一級闇の眷属アベルです』
ふよふよ浮いている闇の使徒は、名前をアベルというらしい。日に日に姿がはっきりして感情表現が豊かになってきていたところに、今日はついに会話まで成立した。呼び出す側のアリーの魔力は確実に増えている。
口寄せ動物として契約した鷹のたっくんが、アリーを見ながら口を開いた。
『ご主人。王弟ラドフェン公爵の周辺に、偽装した「使用人A」の告発文をばら撒いてきたが。そろそろ動きがあるようだぞ。王宮内が、少し騒がしくなってきている』
「ええ。明日あたり、この離宮に誰かが来るでしょう。事実確認をするために」
たっくんの報告によれば、すでにラドフェン公爵の手の者が動き始めている。離宮から逃げ出した使用人の中から、己のやったことを懺悔するものも出てきたようなのだ。
「わたしはあくまでも、田舎出の男爵令嬢アリーとして対応するわ。まだ離宮に来てたったの一週間、わたしに何かできたはずもないんだもの」
アリーの実家クルネア男爵家は、オランドリア貴族の階級の中でも最下層に属している。まさかそこの娘が、国内の女性としては最強の魔力を保有しているなどと、誰も夢にも思うまい。
<まあ、聖女ミアが降臨したらトップの座は奪われちゃうんだけどねー。しかし今回の人生は、一味もふた味も違うわよ!>
公爵令嬢アリーシアには味方はいなかったが、アリーにはアベルとたっくんがいる。
彼らが運んでくれた穀物や果物、それから初日に土人形に捕まえさせたイノシシの肉などでしのいできたが、そろそろ調味料などがほしいところだ。
「新しいドレス、布地、針と糸、石鹸、食料にその他もろもろ日用品! それからスティラ様に淑女教育を施すための教材! これらを絶対に勝ち取るわよ、さあアベルにたっくん、えいえいおーっ!!」
アリーは右の拳を高々と突き上げた。物品はもちろんだが、本来配分されるはずの予算も取り戻さなくてはならない。
闇の使徒アベルがけだるそうに手をあげる。暖炉の端っこに鋭い鉤爪で止まっているたっくんは、やれやれといった目で片方の翼を広げた。
家事も修行の一環ととらえ、筋肉に負荷を与える工夫をして勤しむことにした。空いた時間はスティラと遊びながら筋肉を苛め抜いたが、もちろん適度な休息も忘れない。
その甲斐あって、アリーの魔法力は増加の一途をたどっている。しかしながら、まだ治癒魔法を発動させるには至らなかった。
<やはり治癒魔法は持って生まれたものなのかしら……いや、まだ希望は捨てないでおこう>
もしアリーが治癒魔法を身につけたら、聖女ミアの魅了魔法を解除することも可能になるかもしれない。別にマクシミリアンや公爵家の連中を救いたいわけではないが、これから先救いたくなる人物が出てこないとも限らないし。
だからアリーはスティラを寝かしつけた後、己の魔力量を確認することが日課になった。そのときだけは魔法を使って、最上位の使い魔である闇の使徒に協力してもらうことにした。
「どうかしらクロちゃん、わたしの魔力量増えてる?」
『どうでしょうねえ。私がしゃべれるようになったから、増えてるんでしょうねえ……』
「わ、クロちゃん喋った!」
『黒いからクロちゃんという安直な名づけはやめてください。私は第一級闇の眷属アベルです』
ふよふよ浮いている闇の使徒は、名前をアベルというらしい。日に日に姿がはっきりして感情表現が豊かになってきていたところに、今日はついに会話まで成立した。呼び出す側のアリーの魔力は確実に増えている。
口寄せ動物として契約した鷹のたっくんが、アリーを見ながら口を開いた。
『ご主人。王弟ラドフェン公爵の周辺に、偽装した「使用人A」の告発文をばら撒いてきたが。そろそろ動きがあるようだぞ。王宮内が、少し騒がしくなってきている』
「ええ。明日あたり、この離宮に誰かが来るでしょう。事実確認をするために」
たっくんの報告によれば、すでにラドフェン公爵の手の者が動き始めている。離宮から逃げ出した使用人の中から、己のやったことを懺悔するものも出てきたようなのだ。
「わたしはあくまでも、田舎出の男爵令嬢アリーとして対応するわ。まだ離宮に来てたったの一週間、わたしに何かできたはずもないんだもの」
アリーの実家クルネア男爵家は、オランドリア貴族の階級の中でも最下層に属している。まさかそこの娘が、国内の女性としては最強の魔力を保有しているなどと、誰も夢にも思うまい。
<まあ、聖女ミアが降臨したらトップの座は奪われちゃうんだけどねー。しかし今回の人生は、一味もふた味も違うわよ!>
公爵令嬢アリーシアには味方はいなかったが、アリーにはアベルとたっくんがいる。
彼らが運んでくれた穀物や果物、それから初日に土人形に捕まえさせたイノシシの肉などでしのいできたが、そろそろ調味料などがほしいところだ。
「新しいドレス、布地、針と糸、石鹸、食料にその他もろもろ日用品! それからスティラ様に淑女教育を施すための教材! これらを絶対に勝ち取るわよ、さあアベルにたっくん、えいえいおーっ!!」
アリーは右の拳を高々と突き上げた。物品はもちろんだが、本来配分されるはずの予算も取り戻さなくてはならない。
闇の使徒アベルがけだるそうに手をあげる。暖炉の端っこに鋭い鉤爪で止まっているたっくんは、やれやれといった目で片方の翼を広げた。
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