夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章

文字の大きさ
上 下
54 / 88
第7話 『とびこえてその先できみの声を聞く』

しおりを挟む

「フウキ? 大丈夫、どこか具合が悪いの?」

 ホマレが労わるようにそう言ってくれたけど、なにも返せない。肩のアザは、まだヒリヒリと痛みを訴えていた。――あれは本当のホマレじゃない、わかっているのに……!

 時間切れを告げるように、竹内兄がケラケラ笑う。


「おーおー、うるわしき友情ごっこ! でもこれを知ってもまだ、同じことが言えるかな?」


 ヤツは俺を指差し、他のプレイヤーに向けて大声で言った。


「――蒲帆フウキは、裏切り者だ! おまえらをだまして、この命がけのゲームを一人だけ高みの見物キメこんでるどうしようもねぇクズさ!」

「ひっどいよねー!」竹内妹がのっかる。「ウチもさっき兄ぃに教えてもらうまで、ぜーんぜん気づかなかったもん。ねっねっ、アンタ知ってたぁ?」

「う、蒲帆くん……? どういうこと……?」


 ルリアが顔を青くして、俺を見た。
 とっさに、俺は謝ろうとした……けど、竹内兄に先をこされる。


「CCCっていう異常現象のケーサツみたいな組織があって、蒲帆はそこのエージェントとつながってる。このバクストマックに潜入してスパイになる代わり、ごホウビをもらうって取引でな。もちろん、安全は保障されたうえでだ」

「つまりぃ、」竹内妹がわざとらしくつなぐ。「自分だけ安全地帯にいながらキケンなふりして、あんたたちを都合よく動かして、CCCに情報横流ししてたってワケ!」



 竹内妹にすりつかれながら、ルリアが言った。


「で、でも、それは、CCCがわたしたちを助けにくるための準備なんじゃ……」


 ハッと、竹内兄は鼻で笑う。


「じゃあ、なんでこんなゲーム終盤になってもCCCは助けに来ないんだ? そもそもなんで、負けたら世界から存在が消えちまうようなキケンなゲームが、ずっと野放しにされてるんだよ? 答はこうだ。CCCは長い間、バクストマックに後れを取っていた。でも今回、蒲帆ってスパイを送り込むことに成功した。その情報は、バクストマックに対抗するための作戦にもりこまれるんだろうなぁ……だけどそれもどうせ、このゲームが終わってからだ」

「よーするにウチら、CCCが必要な情報をしぼりとったらポイされるカスってことぉ?」


 妹の合いの手に勢いづいて、竹内兄はルリアに、ホマレに、熱っぽく訴えかける。


「そんなの許せるか?! 俺らはまだここに、こうして生きてるのによォ!」

「許せないよねぇー? あんたもそう思うでしょぉー?」


 ルリアはうつむいて、黙りこんでしまった。ホマレも、さっきからなにも言わない。そんなふたりの姿を見て、俺は、どんな言葉をかければこの流れを変えられるか、まったく見いだせないでいた。


『聞きたくないよ! どうせまたウソなんだろ!!』


 ニセモノじゃなく、本当のホマレの口からそう言われたら――そう考えただけでもう、全身の血が止まったみたいに寒気がして……!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~

橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。 しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ! だけどレオは、なにかを隠しているようで……? そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。 魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説! 「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。

天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。 魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、 基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。 平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。 王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、 王都をめざすことになったリプルとペブル。 きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。 ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!? 表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。

処理中です...