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第6話 『入り口の向こう側――水鏡にうつるもの』
③
しおりを挟む先生は、悔いるようにうつむく。
「君にその力を託したのは私だ。君を守ってやれない不甲斐ない大人も、私だ。責任を強いてしまったこと、心から申し訳なく思っている――だが」
再び顔を上げたとき――俺は驚いて、口をまんまるにした。
本間先生が、笑っていた。
……ほんのちょびっと、口角上げただけだけど。
「私は、君を信じる。君が、自ら考え、自ら決断し、その末に――望んだ未来を必ず掴むと。君には、それができると」
――それは、昨日俺がホマレたちにかけた言葉だ。
そして先生も、あのときの俺と同じ気持ちを、今俺に、渡してくれた。
俺たちは、同じ勝ちを目指す仲間なんだって。
「ズルいって、それ……なんにも言い返せねーじゃん」
そこまで言われて引き下がる……なんて、かっこわるいことできないもんな。俺は拳を握り直す。
「責任とかってのは、まだちゃんとわからねーけど……やってみる。ぜんぶに勝つって、その想いは今も変わってねーから」
「それでいい。迷いごと進んで、もがいて、抗った末に手にした答こそ――君の未来を切り拓くだろう」
それから、俺たちは教室を出た。先生は職員室へ。俺は、昇降口へ。
家に帰ったら、寝るまえにしっかり作戦練っていかないと。たぶんゲームは残り一・二回……その間に、反撃の糸口を見つけるんだ。
だけど外靴に履き替えて俺が外に出ようとしたときに、ゲタ箱の影から誰かがぬっと現われて、出口をふさいだ。
誰だ、と思ったけど、なんてことない、5年2組の竹内兄だ。
こぎれいな坊ちゃんスタイルだったからわからなかったぜ、最近はバクストマックでのヤンキールックのほうとばっか顔つきあわせてたもんな。まぁ、あっちのほうがなんかいろんな意味でしっくりきてるけど。
でも話すことは特にないのでとっとと脇からすり抜けようとしたが、竹内はそれを巧みにジャマする。イラッとして、しぶしぶ俺は声をかけた。
「なんだよ、おまえにかまってるヒマねーんですけど?」
「そうかぁ? でもこっちは、そうじゃないみたいだぜ」
耳をガリガリと掻きながら竹内がそう言うと、俺の背後で気配がした。
囲まれた?! 慌てて振り返ったけど、なんの心配もいらなかった。
そこにいたのは、あいうトリオの〝あ〟担当だったから。
「ホマレ! どうしたんだ、今日は塾が早く始まるんじゃ――」
「……どうして、僕にだまってたの」
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