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第6話 『入り口の向こう側――水鏡にうつるもの』
②
しおりを挟む「ルリアも、アイカを取り戻したくて、俺のこと信じてくれた。そう――ホマレは、一番に信じてくれた! 仲間に、なってくれた……! 一緒にミアのこと、取り戻そうって……絶対、ぜんぶに勝とうって! ……なのにっ!」
いつのまにか、拳がふるえている。
もう一方の手で抑えようとしたけど、止まらない。
「俺、まだ全然わからねぇんだ……そのために、どんなウソをつけばいいのか。あいつらは、俺を信じてくれているのに……!」
「――蒲帆フウキ。君は今、ようやく入口に立った」
「え……?」
フシギに思って先生を見る。
本間先生は、ただまっすぐに、俺を見ていた。
「前にも話したろう。嘘とは最も簡単で、使い方によっては恐るべき力を発揮する呪いの言葉だ。そして、その効果を最大限に発揮するために、必要なものがある」
「ウソをつくのに、必要なこと……?」
「その嘘を貫きとおすという責任を、まっとうすることだ」
どういうことだか理解できないでいる俺に、先生は質問する。
「君は、バクストマック・ゲームにおいてなんのために嘘をつく?」
「それは、ミアを……みんなを、取り戻すため」
「それは、なんのために?」
「へっ? えっと、それは……」
なんか、かっこいいこと言う流れ? だけど、こんがらがった頭じゃロクに思いつかなくて、しぶしぶ俺は、単純な回答に走る。
「俺のため……だし、ホマレにルリア、マコト……ジュースにだまされてこの世界から消されちまったミアと、アイカ……」
そこまでいったら、とため息交じりに付け加える。
「まぁあと、中島と、ついでに竹内のバカ双子もかな。見捨てたら後味悪いし……あいつらにだっているだろ、あいつらがいなくなったら悲しいヤツが」
先生はバカにせず、ひとつ、静かにうなずいた。
「たくさんの人だな」
「ん……そうだな、なんかたくさんだな」
「そのたくさんの人のための想いが、今、君の心にのしかかっている。だからこそ、重く感じている――」
あっ、と、俺は声を漏らした。
さっきまで感じていた重さに、輪郭ができる――そうか、これが、
「それこそが責任の重さだ、蒲帆フウキ。君は君の願いのために、嘘を吐くと決めた。それがどれほど重く、つらいものでも……君は貫かなければならない。それが、責任というものだ。そして――」
「……?」
「責任を最後まで果たそうと真摯に向き合い続けたそのとき、嘘は呪いであることをこえて――ほんとうのことになる」
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