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第5話 『ガチバトル! 俺は負けねぇ、おまえも負けんな!』

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 正面から、そんなふうにメンチ切ってきた。
 でもあいにく、そんなので揺らされる程度ならオオカミ少年やってない。


「別に? こんなの、遊んでるだけだし、そう……おまえらと一緒だよ」


 一緒、のところに力をこめて言う。その皮肉を察した竹内兄が、余裕ヅラをピクリとさせた。すかさず、俺は続ける。


「それに一個、まちがえてるぜ。『俺が言えばなんにも考えず票を入れるヤツが過半数』? おっかしーなー……そんなヤツはどこにも見当たらんのだが?」

「は? なに言ってんだ、おまえが裏工作してたのなんてバレバレだって、」

「俺の仲間は!」


 大きく声を張り上げて、相手を無理やり遮った。


「勝つために、考える。勝つために、決める。ぜんぶ、自分の決断で。んで、同じ勝ちを目指してるなら……ま、投票先が被るってこともあるんじゃね?」


 そう、人狼ゲームではひとりひとりが最大限、勝つための道を考え続けなきゃならない。誰に本当のことを言って、誰にウソついて、誰のことを信じて――それをぜんぶ、自分で決めなきゃいけないんだ。


「プップー! そ~んなこともわからないんでちゅか竹内きゅんは? だから人狼ゲームよわよわのザッコザコなんでちゅよ~~~~???」

「う、ぐ、この……!」


「わーかったわかった、正論すぎてぐうの音もでんのだな? 仕方ないヤツじゃ、このワシ直々に人狼のなんたるかを教えてやろう! このゲームが終わったら、毎日休み時間ごとに2組行って鍛えちゃるわい」



「え……?」


 意外そうな声を上げたのは、マコトだ。
 俺は振り返って、ぐっと親指を立てる。


「あ、ちなみにさっきのウソな。こんなん全然遊びじゃねーわ。やっぱ、遊ぶからにはバチクソ楽しくねーと……だから俺が、2組、っつーか学校全体、いや、世界全体まるごと面白おかしく改造してやる!」


 フンッと啖呵を切る。どうよ、今度こそ拍手かっさいモンだろコレ。
 とか思ったけど誰もなんにも言わず、ジュースがサクッと進行に入った。


「どうやら議論は出尽くしたかな? 竹内ツインズ、反論は?」

「ない……とっとと蒲帆に入れさせろ……!!」

「あ、兄ぃ……!」


 ジュースが指を鳴らすと、投票用の光球が俺たちのまえに現われる。

 そこからは、これまで通りだった。それぞれが触れた光球は天高く飛びあがってから、票を入れられたプレイヤーの元に戻ってくる。


 結果は――俺が3票、中島が4票だ。


 狼陣営のリーダー格・竹島兄を標的にしなかったのはいくつか理由がある。本当は頭を叩いてチーム総崩れを狙うのが筋だけど、竹内妹のベッタリぶりを見るに、兄貴がいなくなったあと予測不能の動きでゲーム展開をぐちゃぐちゃにする可能性があった。あと、竹内兄貴、考えが読みやすいんだよな。

 だから、これは消去法だ。今ここでいなくなっても、このあとに大した影響を与えないヤツ――たったそれだけの理由。

 だとしても、4つの光球に囲まれてうろたえる中島を見ていると……やりきれなさがこみ上げてくる。


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