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第2話 『願いが叶う人狼?! バクストマック・ゲーム、スタート!』
②
しおりを挟む「村人は六名。狼は三名。従来の人狼ゲーム同様、オオカミを全員追放するか、もしくは村人がオオカミと同じ数まで減った段階で勝敗が決まる。他、この世界でのルールをまとめた案内板があるから、よぅく読んでおいてくれたまえ」
えー、と気だるい声。
さっきミアを笑ったグループだ。
「夢のなかでも遊べるってのはおもしろいけど、ゲームはちょっとタルいってーか……なんでウチらがそんなことしなきゃいけねーの?」
「やるならやるで、特典ほしいよなー」
「ふふふ、そう言うと思ってもちろん豪華な賞品を用意しているよ!」
待ってましたと言わんばかりの身振りで、ジュースは声を張り上げる。
「村人陣営と狼陣営――勝ったほうの生存メンバーは、なんでも願い事がひとつ叶う。そう、なんでも――現実世界でね」
「はぁっ?! そんなこと、できるわけ……」
思わずすっとんきょうな声を上げた俺に、ジュースはぐっと顔を近づけてくる。
うっ……アップで見るとよりキモいなこのピエロ。
「逆にどうしてできないと思うんだい? 諸君は今まさに、夢のような奇跡の体験をしているじゃないか」
それを言われて、俺たちはみんな黙りこんだ。
遊園地みたいな世界で、ファンタジーみたいなかっこうをして、友達と一緒にしゃべりながら、おかしなピエロの話を聞いている……そんな、オトナに言ったって信じてもらえないような、体験。
俺たちは今まさに、そのなかにいるんだ。
ジュースは、満足そうにニヤニヤ笑う。
「このバクストマックで行われるゲームは、ウソをホントに、ホントをウソに、自由自在に操るための魔法の儀式でもあるのさ。しかし、それは諸君らが心の底から望まないと発動できない――」
そして、俺たちあいうトリオ3人だけに聞こえる静かな声で、ささやいてきた。
「東間ホマレくん、君は自分のことを祖父母に認めてほしいのでは?」
「ど、どうしてそれを……?」
「印路ミアくん、君は中学受験なんて本当はしたくないのでは?」
「うっ、なんでわかるの……?」
「蒲帆フウキくん、君はもっと友人たちと遊ぶ時間がほしいのでは?」
「……そう、だけど」
俺たちの答を聞くと、ジュースはさっと身体を離して他の子どもたちのほうにスキップで寄っていき、またコソコソとなにか言っている。
どうやら、ひとりひとりに同じようなことを――俺たちの心のなかにある願い事を、つきつけてまわっているらしい。ジュースの言葉を聞いたヤツは、全員真剣な表情に変わっていった。
9人すべてに訊ね終えてから、ジュースはみんなの真ん中に戻る。
「そう、諸君らの中に宿る偽らざる想い――それらがすべてホントになるのさ、このゲームで生き残ればね。さあ、どうする? 志願する者は、挙手を」
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