夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章

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第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』

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「ウソだろ!? ぜってーウソ!!」

「オーボーだっ! なんでそんなの勝手に決められんだよ!!」

「こんなのってないよ、せんせーのオニー!」


 その日、朝から俺たちの5年1組はおおさわぎだった。

 全生徒三〇名によるいっせいブーイング……だけど、教壇に立つ先生は、氷でできたみたいな無表情をひとつも崩しやしなかった。


「ウソでも横暴でも鬼でもない。理解できてないようだからもう一度言うぞ」


 5年1組の担任・本間先生は、特に張り上げてもいないのに、俺たち全員の胃にのしかかるような声で言う。


「今後、我が校ではカードゲーム類の持ちこみは一切禁止になった。遊ばなくても、持っていれば没収だ。理由は――君たちが一番よく知っているはずだが?」


 メイクひとつしていない、鋭い目つきがこちらに向けられた。


東間あずまホマレ、君は授業中カードの絵をトレースするのに夢中で既に三度の注意を受けたな」

「う、そ、それは……」

印路いんじミア、君は美術室の備品を勝手に持ち出し、カードゲーム用に改造した」

「つ、つい、デキゴコロで……」

「そして蒲帆うらほフウキ――君が一番タチが悪い」

「な、なんだよ、それ!」


 出席番号1・2番の2人のあとは、当然三番の俺――蒲帆フウキにお鉢が回ってくる。それはわかってたけど、あんまりな言い草に思わず席を立ちあがった。

 だけど本間先生はあいも変わらず、淡々と。


「ゲームイベントを企画し、学校全体を盛り上げる……というところまでは、自主性を評価しよう。問題はそのやり方だ。始業から終業までの間リアルタイムで進行する、というルールのため、何が起こった?」

「みんなスッゲー盛り上がった!」


 思い出しても自慢したくなるような思い出さ。

 きっかけは、たまたまユーチューブで見たゲーム実況。そこで繰り広げられた人狼ゲームの対戦に、俺はいてもたってもいられなくなった!

 プレイヤーには一人一つ、役割(ロール)が与えられる。ざっくりわけて、村人と狼だ。村人は夜、自分たちを食らう狼を見つけだし、吊るさなきゃならない。

 手がかりは、プレイヤーどうしの話し合いだけ。誰がどのロールかを手探りのなかで推理して、ときにダマし、ときに手を取り合い、自分たちの陣営が生き残るために争うんだ。わくわくするだろ?

 これ絶対、学校でバズる! そう思った俺はミアとホマレ、小1のときから出席番号1・2・3の《あいうトリオ》で、一大人狼ムーブメントを巻き起こした。

 動画で使ってたゲーム用のカードは高いから、ホマレが手書きした手作り(けっこう、クオリティ高いんだぜ)のカードを配りまくって、学校中にバラまいた。ひとり一枚、役割が描いてあるカード。それで、俺とミアがノリのいいヤツを引っ張って実際にプレイしてみせたんだ。

 結果はメガヒット! その話を聞かない日はないってくらい、学校中で人狼ゲームが大流行した。でも、こんなもんで満足する《あいうトリオ》じゃねえぜ? 今度は強いヤツどうしで競うトーナメントを開催……しようとした矢先に、これさ。

 女子から〝クールビューティー〟とか言われることもある本間先生は、切れ長の目をいっそう細め、俺をまっすぐ見た。



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