1 / 88
第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』
①
しおりを挟む「ウソだろ!? ぜってーウソ!!」
「オーボーだっ! なんでそんなの勝手に決められんだよ!!」
「こんなのってないよ、せんせーのオニー!」
その日、朝から俺たちの5年1組はおおさわぎだった。
全生徒三〇名によるいっせいブーイング……だけど、教壇に立つ先生は、氷でできたみたいな無表情をひとつも崩しやしなかった。
「ウソでも横暴でも鬼でもない。理解できてないようだからもう一度言うぞ」
5年1組の担任・本間先生は、特に張り上げてもいないのに、俺たち全員の胃にのしかかるような声で言う。
「今後、我が校ではカードゲーム類の持ちこみは一切禁止になった。遊ばなくても、持っていれば没収だ。理由は――君たちが一番よく知っているはずだが?」
メイクひとつしていない、鋭い目つきがこちらに向けられた。
「東間ホマレ、君は授業中カードの絵をトレースするのに夢中で既に三度の注意を受けたな」
「う、そ、それは……」
「印路ミア、君は美術室の備品を勝手に持ち出し、カードゲーム用に改造した」
「つ、つい、デキゴコロで……」
「そして蒲帆フウキ――君が一番タチが悪い」
「な、なんだよ、それ!」
出席番号1・2番の2人のあとは、当然三番の俺――蒲帆フウキにお鉢が回ってくる。それはわかってたけど、あんまりな言い草に思わず席を立ちあがった。
だけど本間先生はあいも変わらず、淡々と。
「ゲームイベントを企画し、学校全体を盛り上げる……というところまでは、自主性を評価しよう。問題はそのやり方だ。始業から終業までの間リアルタイムで進行する、というルールのため、何が起こった?」
「みんなスッゲー盛り上がった!」
思い出しても自慢したくなるような思い出さ。
きっかけは、たまたまユーチューブで見たゲーム実況。そこで繰り広げられた人狼ゲームの対戦に、俺はいてもたってもいられなくなった!
プレイヤーには一人一つ、役割(ロール)が与えられる。ざっくりわけて、村人と狼だ。村人は夜、自分たちを食らう狼を見つけだし、吊るさなきゃならない。
手がかりは、プレイヤーどうしの話し合いだけ。誰がどのロールかを手探りのなかで推理して、ときにダマし、ときに手を取り合い、自分たちの陣営が生き残るために争うんだ。わくわくするだろ?
これ絶対、学校でバズる! そう思った俺はミアとホマレ、小1のときから出席番号1・2・3の《あいうトリオ》で、一大人狼ムーブメントを巻き起こした。
動画で使ってたゲーム用のカードは高いから、ホマレが手書きした手作り(けっこう、クオリティ高いんだぜ)のカードを配りまくって、学校中にバラまいた。ひとり一枚、役割が描いてあるカード。それで、俺とミアがノリのいいヤツを引っ張って実際にプレイしてみせたんだ。
結果はメガヒット! その話を聞かない日はないってくらい、学校中で人狼ゲームが大流行した。でも、こんなもんで満足する《あいうトリオ》じゃねえぜ? 今度は強いヤツどうしで競うトーナメントを開催……しようとした矢先に、これさ。
女子から〝クールビューティー〟とか言われることもある本間先生は、切れ長の目をいっそう細め、俺をまっすぐ見た。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
はんぶんこ天使
いずみ
児童書・童話
少し内気でドジなところのある小学五年生の美優は、不思議な事件をきっかけに同級生の萌が天使だということを知ってしまう。でも彼女は、美優が想像していた天使とはちょっと違って・・・
萌の仕事を手伝ううちに、いつの間にか美優にも人の持つ心の闇が見えるようになってしまった。さて美優は、大事な友達の闇を消すことができるのか?
※児童文学になります。小学校高学年から中学生向け。もちろん、過去にその年代だったあなたもOK!・・・えっと、低学年は・・・?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる