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62.「事情説明Ⅱ」
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歓迎すると言われた言葉の通り、メラムと後ろに控えていた一行や護衛の兵士、どう見ても引き攣った表情が隠せてないトリウィと共に案内された二階の右奥にある真紅の間と呼ばれている貴人用だろう白を基調とし、椅子や絨毯は落ち着いた紅色の品がある家具で整えられた部屋へと案内された。
部屋では席に丁寧に案内され、マーレスを窓際に柔らかいソファーに並んで座ると香り高いお茶や珍しい菓子が多すぎない量で高級そうな白い長テーブルに並べられた。対面に座ったメラムが少し申し訳なさそうに、お肉は夕食時にと言ったので、どうして好物を、いや、俺の情報を得ているのか不思議でならなかった。
「お聞きしたいことも、お答えしたいことも、沢山ございますでしょうが、まずはこの者達の紹介をさせて頂きますね。」
そして、メラムの後ろに立ったまま控えた人物を左端から紹介される。
一番最初に紹介されたのはデイルと呼ばれていた護衛騎士だ。デイル・エクエス・プラエフェクトゥスと自らも名乗ってくれ、少し苦笑されてから謝意を示された。
「その節は詳しく事情も明かせずに申し訳ございませんでした。無事に我がプロエリウム聖国の聖城へお越し頂く為に一芝居打たせて頂きました非礼をお詫び申し上げます。」
「やっぱり…、偶然じゃなかったんだな。」
「はい。全ては我が主、メラム・ノヴァ・フトゥールム様のお導きでございますが…些か、奔放な所は否定致しません。」
「もう、だから今回は説明したでしょう?」
「本当に説明だけでございました…。」
「そうか…。」
他の護衛がいなかったのはそういう事かと。芝居以外の所は大体、あの時言っていた通りなんだろうと察するような目を向けると強く頷かれたんで概ね間違ってはいないんだろう。
そして、メラムの護衛騎士で間違いないそうなのだが、魔王討伐に向かった仲間の一人でもあるそうだ。
ここで何となく予想は出来たんだが、次に紹介された体格の良い聖騎士も討伐の仲間で名前をトニトゥルス・ナ・インベル。体格はかなり良く長身で、騎士服であろう白い正装から覗く日に焼けた健康的な肌と額から左目に掛けて大きな切り傷が印象的だ。
髪は短い黒髪で瞳は黒に近い濃茶色でもしかしたら勇者様の血が濃いのかもと思わせる外見だ。
無口なのか黙ったままだったが、静かに目礼されたので特に嫌な印象はなかった。と、言うかやはりマーレスに何処と無く雰囲気が似てるせいか寧ろ好印象に思えた。
そして、三人目に紹介されたのがプロエリウム聖国の聖女のディアナ・プリームスだ。
サルワトール帝国のテルスを知っているせいか一瞬身構えちまったが、真っ直ぐな黒髪に澄んだ青い瞳の少女で、少し垂れ目がちなせいか優しげで温厚そうな印象がある容姿だ。何というか今は感覚が以前より鋭いせいか、中身も見た目通りだと感じる。
白い祭服を着て、右手には頭頂に青く澄んだ魔石のついた銀製の綺麗な魔法杖を持っているせいか余計に清らかな印象を受けた。
四人目は魔法騎士のゼサム・クロード。
焦げ茶の中長髪は癖毛なのか少しうねっていて、眉と目が垂れてるせいか、優男で何処か風来坊って感じを受ける。衣装も正装なんだが、白では無く灰色で、趣味の良い腕輪や指輪をしていて、腰には長剣を指してと面子の中で珍しい雰囲気だが、何となく案内人って同職の気配を感じてたら軽く視線が合って、その後にメラムの説明が入った。
やはり、案内人要員で、普段は各地を旅しているらしい。旅慣れているのと戦闘力もあるので何かと心強い仲間で、今回の魔王討伐失敗の撤退の際に非常に活躍したそうだ。
しかし、本人は肩を竦めて…。
「まぁ、倒せなかったんだがな。」
と、のんびり答えた。
少し変わった雰囲気の奴はいるが特に問題の無さうな人物ばかりだなと思ってたんだが、最後に紹介された神官のテオロギア・ファーナーティクスが何処か異質だった。顎下で綺麗に整えられた真っ白な短髪に澄んだ蒼玉色の瞳が美しく端正な容姿は神秘的で、真っ白な神官服と銀製の蒼い魔石が嵌った対の耳飾りが最初は印象的だった。
だが、視線を合わせると涼しげな見た目と反し、まるで黒炎を見ているような錯覚を覚える。マーレスと俺を見る目、そして付き添ってくれた流れですぐ近くに立って控えてくれていたトリウィにもにこりと微笑していたのだが、何故か心拍数が嫌な意味で上がる程の不穏な熱量を感じた。只、敵意とはまた違った感覚で、一先ず名乗りと丁寧な礼を受けてその場は問題なく終わった。
「簡易な自己紹介になってしまいましたが、改めまして、メラム・ノヴァ・フトゥールムと申します。プロエリウム聖国にて『占者』の地位に就いております。」
「占者…!」
占者と言えば魔王の出現や、世界の吉凶を代々告げる者で、その有用性から、安全を確保する為に本人は正体不明とされている。
色々とそれで腑に落ちる所はあるが、簡単に正体を明かして良かったんだろうかと思っていると少しメラムに苦笑された。
「先に、ここにいる者達は信頼できる者達ですし、此方ばかりが貴方様方の正体を知っていると言うのも公平ではありません。ですから、お気になさって下さったのならば、どうぞご心配なさらないで下さいませ。」
「ああ…いや、そう言うことなら良いんだが。流石に驚いたな…。」
「こちらも奇跡的な巡り合わせを拝見して驚いております。」
「奇跡的な巡り合わせ?」
「ええ。本来ならば此処に今代の勇者様がいらっしゃり、魔王を倒す筈でした。しかし、それが叶わず、我々も力及ばずに帰国する事になりましたが、初代勇者様と戦神様の血を受け継ぐマーレス様、御友人であらせられた狼神様の血を受け継ぐソル様が再び巡り会い、魔王を倒して下さった。これを奇跡と呼ばずなんと呼ぶのでしょうか。」
「確かに…それは…奇跡だな…。いや、もう、正直な所、気になる話が多過ぎるんだが。」
「はい。時間はまだございますし、ゆっくりと説明させて頂こうと思っております。ですが、先んじまして…マーレス様、並びにソル様には重ねて心からの感謝と本日は席を外しておりますが、後方支援の者達からも感謝の言葉と気持ちを預かっております。魔王を倒して頂き、誠に有難うございました。今後は誠心誠意、我々の感謝の意を返して参ります。」
部屋では席に丁寧に案内され、マーレスを窓際に柔らかいソファーに並んで座ると香り高いお茶や珍しい菓子が多すぎない量で高級そうな白い長テーブルに並べられた。対面に座ったメラムが少し申し訳なさそうに、お肉は夕食時にと言ったので、どうして好物を、いや、俺の情報を得ているのか不思議でならなかった。
「お聞きしたいことも、お答えしたいことも、沢山ございますでしょうが、まずはこの者達の紹介をさせて頂きますね。」
そして、メラムの後ろに立ったまま控えた人物を左端から紹介される。
一番最初に紹介されたのはデイルと呼ばれていた護衛騎士だ。デイル・エクエス・プラエフェクトゥスと自らも名乗ってくれ、少し苦笑されてから謝意を示された。
「その節は詳しく事情も明かせずに申し訳ございませんでした。無事に我がプロエリウム聖国の聖城へお越し頂く為に一芝居打たせて頂きました非礼をお詫び申し上げます。」
「やっぱり…、偶然じゃなかったんだな。」
「はい。全ては我が主、メラム・ノヴァ・フトゥールム様のお導きでございますが…些か、奔放な所は否定致しません。」
「もう、だから今回は説明したでしょう?」
「本当に説明だけでございました…。」
「そうか…。」
他の護衛がいなかったのはそういう事かと。芝居以外の所は大体、あの時言っていた通りなんだろうと察するような目を向けると強く頷かれたんで概ね間違ってはいないんだろう。
そして、メラムの護衛騎士で間違いないそうなのだが、魔王討伐に向かった仲間の一人でもあるそうだ。
ここで何となく予想は出来たんだが、次に紹介された体格の良い聖騎士も討伐の仲間で名前をトニトゥルス・ナ・インベル。体格はかなり良く長身で、騎士服であろう白い正装から覗く日に焼けた健康的な肌と額から左目に掛けて大きな切り傷が印象的だ。
髪は短い黒髪で瞳は黒に近い濃茶色でもしかしたら勇者様の血が濃いのかもと思わせる外見だ。
無口なのか黙ったままだったが、静かに目礼されたので特に嫌な印象はなかった。と、言うかやはりマーレスに何処と無く雰囲気が似てるせいか寧ろ好印象に思えた。
そして、三人目に紹介されたのがプロエリウム聖国の聖女のディアナ・プリームスだ。
サルワトール帝国のテルスを知っているせいか一瞬身構えちまったが、真っ直ぐな黒髪に澄んだ青い瞳の少女で、少し垂れ目がちなせいか優しげで温厚そうな印象がある容姿だ。何というか今は感覚が以前より鋭いせいか、中身も見た目通りだと感じる。
白い祭服を着て、右手には頭頂に青く澄んだ魔石のついた銀製の綺麗な魔法杖を持っているせいか余計に清らかな印象を受けた。
四人目は魔法騎士のゼサム・クロード。
焦げ茶の中長髪は癖毛なのか少しうねっていて、眉と目が垂れてるせいか、優男で何処か風来坊って感じを受ける。衣装も正装なんだが、白では無く灰色で、趣味の良い腕輪や指輪をしていて、腰には長剣を指してと面子の中で珍しい雰囲気だが、何となく案内人って同職の気配を感じてたら軽く視線が合って、その後にメラムの説明が入った。
やはり、案内人要員で、普段は各地を旅しているらしい。旅慣れているのと戦闘力もあるので何かと心強い仲間で、今回の魔王討伐失敗の撤退の際に非常に活躍したそうだ。
しかし、本人は肩を竦めて…。
「まぁ、倒せなかったんだがな。」
と、のんびり答えた。
少し変わった雰囲気の奴はいるが特に問題の無さうな人物ばかりだなと思ってたんだが、最後に紹介された神官のテオロギア・ファーナーティクスが何処か異質だった。顎下で綺麗に整えられた真っ白な短髪に澄んだ蒼玉色の瞳が美しく端正な容姿は神秘的で、真っ白な神官服と銀製の蒼い魔石が嵌った対の耳飾りが最初は印象的だった。
だが、視線を合わせると涼しげな見た目と反し、まるで黒炎を見ているような錯覚を覚える。マーレスと俺を見る目、そして付き添ってくれた流れですぐ近くに立って控えてくれていたトリウィにもにこりと微笑していたのだが、何故か心拍数が嫌な意味で上がる程の不穏な熱量を感じた。只、敵意とはまた違った感覚で、一先ず名乗りと丁寧な礼を受けてその場は問題なく終わった。
「簡易な自己紹介になってしまいましたが、改めまして、メラム・ノヴァ・フトゥールムと申します。プロエリウム聖国にて『占者』の地位に就いております。」
「占者…!」
占者と言えば魔王の出現や、世界の吉凶を代々告げる者で、その有用性から、安全を確保する為に本人は正体不明とされている。
色々とそれで腑に落ちる所はあるが、簡単に正体を明かして良かったんだろうかと思っていると少しメラムに苦笑された。
「先に、ここにいる者達は信頼できる者達ですし、此方ばかりが貴方様方の正体を知っていると言うのも公平ではありません。ですから、お気になさって下さったのならば、どうぞご心配なさらないで下さいませ。」
「ああ…いや、そう言うことなら良いんだが。流石に驚いたな…。」
「こちらも奇跡的な巡り合わせを拝見して驚いております。」
「奇跡的な巡り合わせ?」
「ええ。本来ならば此処に今代の勇者様がいらっしゃり、魔王を倒す筈でした。しかし、それが叶わず、我々も力及ばずに帰国する事になりましたが、初代勇者様と戦神様の血を受け継ぐマーレス様、御友人であらせられた狼神様の血を受け継ぐソル様が再び巡り会い、魔王を倒して下さった。これを奇跡と呼ばずなんと呼ぶのでしょうか。」
「確かに…それは…奇跡だな…。いや、もう、正直な所、気になる話が多過ぎるんだが。」
「はい。時間はまだございますし、ゆっくりと説明させて頂こうと思っております。ですが、先んじまして…マーレス様、並びにソル様には重ねて心からの感謝と本日は席を外しておりますが、後方支援の者達からも感謝の言葉と気持ちを預かっております。魔王を倒して頂き、誠に有難うございました。今後は誠心誠意、我々の感謝の意を返して参ります。」
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