11 / 62
11.「性格」
しおりを挟む
マーレスは、実は天然なんだろうか。いや、俺がこっ恥ずかしいだけで別に良いんだが。
素直に思った事を言って、良く笑ったり感情を出してくれるのは嬉しい。慣れろ、慣れれば大丈夫だと言い聞かせて顔を上げると、めちゃくちゃ見られてた。待たせたかな。
「わりぃ、何でもない。日が暮れる前に行こう。」
「ああ、楽しみだ。」
「ん?なんか楽しみなもんがあるのか?」
「ソルと一緒なのが楽しい。」
「そ…うか、俺もマーレスと一緒なのは楽しい。」
慣れるだろうか。いや、嬉しいんだがくすぐったくて仕方がない。
そんな暢気な悩みに頭を支配されながら町の入り口に難なく到着し、名前、勿論偽名の記入と入町料、犯罪歴を『罪』を司る特殊な魔法石で調べ、目視での身体検査を受けて無事に入れた。
因みに自分の称号に何らかの罪系があると反応があり別室に通されてもう少し詳しく検査され、取り調べを受ける。
罪にも色々あるんで、解放される場合もあるが地味に毎回されると面倒だと裏系の仕事のおっちゃんが言っていた。
「ソル、宿屋が見えて来たけどあそこで良いか?」
「ああ、問題ない。」
表通りにある落ち着いた外装の一般的な、寧ろ立派なぐらいの宿屋だ。看板で確認して頷くと先導するようにマーレスが入り、直ぐにあったカウンターの前で宿屋の厳つい主人に無表情で話し掛けていた。
「部屋は空いているか?」
「ああ、何人で何部屋、何泊だ?」
「二人で一部屋を。一先ず三泊だ。」
「料金は一泊一人銀貨三枚、食事は別料金で銅貨三枚、これが鍵で二階の一番奥の部屋だ。鍵に番号が彫ってあるから扉の数字と見比べて使ってくれ。食事はどうする?」
「ソル、食べるか?」
「あ、じゃあ今日は夕飯だけ二人前で。部屋で食っても大丈夫か?」
「構わん。一階の食堂に取りには来て貰うが。」
「俺が取りに来るから問題ない。」
「そうか、じゃあ記帳と料金を払ったら後は自由にしてくれ。」
「分かった。」
マーレスの偽名のメンシスと俺の偽名のウェルを置かれたダンジョン産なのか綺麗な紙に書き込んでる間に、マーレスが宿代と食事代を出して渡してくれる。後で返すついでにパーティ用の共同金の話もしないとなと考えながら手続きが終われば部屋に直行だ。
鍵を持って二階に上がり、言われた通りに一番奥の部屋に進むと六と番号が書かれていた。鍵の番号と照らし合わせ、合っていたのでそのまま鍵を開けて中に入るとベッドが左右に二つと中央にテーブルと椅子が二脚。
通りの方向に人が通れるぐらいの窓があって、万が一、逃亡の時には使えるだろう。
「良さそうだな。」
「ああ、しっかりと管理もされている。」
「確かに、綺麗に掃除されてるみたいだし、シーツも洗ってくれてる。」
今まで資金はあったので比較的良い宿には泊まっていたが、魔大陸に近付くにつれて質は落ちて行ってたし、俺が村を出た当初なんかは軍資金が乏しくてやばい感じの宿にも泊まった経験がある。正直、鼻が効きすぎるんで野宿の方が良い時もあった。
「ソル、良ければ髪を洗って体を拭こうか?包帯も取り替えたいし、すっきりしてから休んだ方が良いと思う。」
「ああ…確かに。マーレスが良ければお願いしても良いか?」
「勿論だ。準備するから少し待っててくれ。」
マーレスが収納鞄を腰から外し、最低限身に付けていた防具を外してからシャツの袖を折って捲る。最近、世話になりっぱなしの桶を取り出して、水と火の魔石を使って手早く微温湯を準備してくれた。
俺も出来るだけ急いで防具とシャツを脱ぎ、下着だけ残して靴とズボンも濡れないように脱ぐ。
最初に洗って貰った時のように桶の前で胡座をかいて座り頭を下げると前からマーレスが手で掬ったお湯を何度も掛けてくれ、濡れ切った所で頭皮から擦って洗ってくれる。
「香油か何かあれば良いんだが…。」
「あ、いや…お湯で充分だし、匂いがどうも俺には強すぎてな。」
「そうか、ソルは臭覚も良かったな。どれぐらいなんだ?」
「んー…基準が分からないんだが、晴れてれば千メルテぐらいの範囲の獲物の場所は嗅覚で分かる。雨の日は頑張っても五百メルテぐらいだな。」
「そうなのか、それは凄いな。今更なんだが、俺の匂いは…大丈夫か?」
「マーレスの?いや、あんま気にならないってか、マーレスは体臭が殆んどしないよな。もっと、しっかり嗅いだら分かるかもしんねぇけど…。」
「ちょ、ソル!?」
顔を上げ、右手を床について身を乗り出しながらクンクンと興味本意でマーレスの首筋に顔を寄せると思いっきり後ろに飛び退かれた。
「わりぃ、驚かせた。首とか嗅ぎ易そうだったんでつい…。もうしないから、戻って来てくれ。」
「いや、俺も驚いてすまない。」
「マーレスは悪くないって。ごめんな。」
一先ず戻って来てくれたので苦笑う。距離感が近く感じてたんで安易に踏み込み過ぎた。せめて、聞いてからすれば良かった。
仕切り直して髪を洗い出してはくれたんで、怒ってはいないと思うが…。
「でも、驚いた姿とか初めて見た。」
「確かに、余り驚かない方だと思う。ソルは凄いな。」
「そうか?て、…あ、マーレス?マーレスさん?」
「ん?ここが気持ち良かったんだろ?」
後頭部の頭頂部近くの左右を揉まれると気持ち良いんだが、人として駄目になってしまいそうな部位を狙って解されたのはさっきの仕返しかとも思ったものの雰囲気的にどうやら違うみたいだ。
「そうだけど、そこは堕落の扉だと思ってる。」
「なんだ、その扉は。」
可笑しそうに笑いながらも絶妙な力加減で揉まれてやっぱり力が抜ける。やばい、前より上手くなってて、本当に堕落の扉が開きそうだ。
「マーレス…ちょ、待って、本当に気持ち良すぎて駄目になるやつ…。」
「駄目になっても良いけど、そうだな、早く洗って、後は体を拭いて包帯も取り替えないと。そうだ…。」
「ん?」
「首の後ろに温めた布を当てると気持ちが良いらしい。」
「いや、マーレス。なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「ソルに少しでも元気になって欲しいからだ。
」
上機嫌に返事をされ、軽い抵抗を口でしつつも髪は綺麗に洗って拭かれて、包帯を取った後、体も怪我を避けて程よく指圧しながら拭いてくれ、首の裏もほかほかに温められ、新しい包帯を巻かれる頃にはぐったりと体から力が抜けていた。
マーレスは天然てより、良い意味で人を駄目にする天才かもしれない…。
素直に思った事を言って、良く笑ったり感情を出してくれるのは嬉しい。慣れろ、慣れれば大丈夫だと言い聞かせて顔を上げると、めちゃくちゃ見られてた。待たせたかな。
「わりぃ、何でもない。日が暮れる前に行こう。」
「ああ、楽しみだ。」
「ん?なんか楽しみなもんがあるのか?」
「ソルと一緒なのが楽しい。」
「そ…うか、俺もマーレスと一緒なのは楽しい。」
慣れるだろうか。いや、嬉しいんだがくすぐったくて仕方がない。
そんな暢気な悩みに頭を支配されながら町の入り口に難なく到着し、名前、勿論偽名の記入と入町料、犯罪歴を『罪』を司る特殊な魔法石で調べ、目視での身体検査を受けて無事に入れた。
因みに自分の称号に何らかの罪系があると反応があり別室に通されてもう少し詳しく検査され、取り調べを受ける。
罪にも色々あるんで、解放される場合もあるが地味に毎回されると面倒だと裏系の仕事のおっちゃんが言っていた。
「ソル、宿屋が見えて来たけどあそこで良いか?」
「ああ、問題ない。」
表通りにある落ち着いた外装の一般的な、寧ろ立派なぐらいの宿屋だ。看板で確認して頷くと先導するようにマーレスが入り、直ぐにあったカウンターの前で宿屋の厳つい主人に無表情で話し掛けていた。
「部屋は空いているか?」
「ああ、何人で何部屋、何泊だ?」
「二人で一部屋を。一先ず三泊だ。」
「料金は一泊一人銀貨三枚、食事は別料金で銅貨三枚、これが鍵で二階の一番奥の部屋だ。鍵に番号が彫ってあるから扉の数字と見比べて使ってくれ。食事はどうする?」
「ソル、食べるか?」
「あ、じゃあ今日は夕飯だけ二人前で。部屋で食っても大丈夫か?」
「構わん。一階の食堂に取りには来て貰うが。」
「俺が取りに来るから問題ない。」
「そうか、じゃあ記帳と料金を払ったら後は自由にしてくれ。」
「分かった。」
マーレスの偽名のメンシスと俺の偽名のウェルを置かれたダンジョン産なのか綺麗な紙に書き込んでる間に、マーレスが宿代と食事代を出して渡してくれる。後で返すついでにパーティ用の共同金の話もしないとなと考えながら手続きが終われば部屋に直行だ。
鍵を持って二階に上がり、言われた通りに一番奥の部屋に進むと六と番号が書かれていた。鍵の番号と照らし合わせ、合っていたのでそのまま鍵を開けて中に入るとベッドが左右に二つと中央にテーブルと椅子が二脚。
通りの方向に人が通れるぐらいの窓があって、万が一、逃亡の時には使えるだろう。
「良さそうだな。」
「ああ、しっかりと管理もされている。」
「確かに、綺麗に掃除されてるみたいだし、シーツも洗ってくれてる。」
今まで資金はあったので比較的良い宿には泊まっていたが、魔大陸に近付くにつれて質は落ちて行ってたし、俺が村を出た当初なんかは軍資金が乏しくてやばい感じの宿にも泊まった経験がある。正直、鼻が効きすぎるんで野宿の方が良い時もあった。
「ソル、良ければ髪を洗って体を拭こうか?包帯も取り替えたいし、すっきりしてから休んだ方が良いと思う。」
「ああ…確かに。マーレスが良ければお願いしても良いか?」
「勿論だ。準備するから少し待っててくれ。」
マーレスが収納鞄を腰から外し、最低限身に付けていた防具を外してからシャツの袖を折って捲る。最近、世話になりっぱなしの桶を取り出して、水と火の魔石を使って手早く微温湯を準備してくれた。
俺も出来るだけ急いで防具とシャツを脱ぎ、下着だけ残して靴とズボンも濡れないように脱ぐ。
最初に洗って貰った時のように桶の前で胡座をかいて座り頭を下げると前からマーレスが手で掬ったお湯を何度も掛けてくれ、濡れ切った所で頭皮から擦って洗ってくれる。
「香油か何かあれば良いんだが…。」
「あ、いや…お湯で充分だし、匂いがどうも俺には強すぎてな。」
「そうか、ソルは臭覚も良かったな。どれぐらいなんだ?」
「んー…基準が分からないんだが、晴れてれば千メルテぐらいの範囲の獲物の場所は嗅覚で分かる。雨の日は頑張っても五百メルテぐらいだな。」
「そうなのか、それは凄いな。今更なんだが、俺の匂いは…大丈夫か?」
「マーレスの?いや、あんま気にならないってか、マーレスは体臭が殆んどしないよな。もっと、しっかり嗅いだら分かるかもしんねぇけど…。」
「ちょ、ソル!?」
顔を上げ、右手を床について身を乗り出しながらクンクンと興味本意でマーレスの首筋に顔を寄せると思いっきり後ろに飛び退かれた。
「わりぃ、驚かせた。首とか嗅ぎ易そうだったんでつい…。もうしないから、戻って来てくれ。」
「いや、俺も驚いてすまない。」
「マーレスは悪くないって。ごめんな。」
一先ず戻って来てくれたので苦笑う。距離感が近く感じてたんで安易に踏み込み過ぎた。せめて、聞いてからすれば良かった。
仕切り直して髪を洗い出してはくれたんで、怒ってはいないと思うが…。
「でも、驚いた姿とか初めて見た。」
「確かに、余り驚かない方だと思う。ソルは凄いな。」
「そうか?て、…あ、マーレス?マーレスさん?」
「ん?ここが気持ち良かったんだろ?」
後頭部の頭頂部近くの左右を揉まれると気持ち良いんだが、人として駄目になってしまいそうな部位を狙って解されたのはさっきの仕返しかとも思ったものの雰囲気的にどうやら違うみたいだ。
「そうだけど、そこは堕落の扉だと思ってる。」
「なんだ、その扉は。」
可笑しそうに笑いながらも絶妙な力加減で揉まれてやっぱり力が抜ける。やばい、前より上手くなってて、本当に堕落の扉が開きそうだ。
「マーレス…ちょ、待って、本当に気持ち良すぎて駄目になるやつ…。」
「駄目になっても良いけど、そうだな、早く洗って、後は体を拭いて包帯も取り替えないと。そうだ…。」
「ん?」
「首の後ろに温めた布を当てると気持ちが良いらしい。」
「いや、マーレス。なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「ソルに少しでも元気になって欲しいからだ。
」
上機嫌に返事をされ、軽い抵抗を口でしつつも髪は綺麗に洗って拭かれて、包帯を取った後、体も怪我を避けて程よく指圧しながら拭いてくれ、首の裏もほかほかに温められ、新しい包帯を巻かれる頃にはぐったりと体から力が抜けていた。
マーレスは天然てより、良い意味で人を駄目にする天才かもしれない…。
10
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる