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4.「絶体絶命」
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流石に山中で強力な魔法を使うのは躊躇ってくれたのか、【業火】に劣る火魔法【火炎爆】で助かったが、爆発の直撃を避けた時に余波で予想外の方に吹き飛んだ。
何とかマーレスの腕を掴み、岩肌に片手で取り付いたものの【身体強化】を使った状態でも大人二人分の体重を支え、雨の中、長時間耐えるには厳しい。
足元は見なくても分かる程に闇が大きな口を開けて俺たちを待っているのだろう…。
「あーあ、遣り過ぎですよ、ローグ。もう、詰んでるじゃないですか。」
「ちっ、そのまま木っ端微塵になれば良かったものを…。」
「何でも良い、任務を終わらせて帰城するぞ。」
「今まで、本当にありがとうございました。ご機嫌よう。」
せめて、頭上に敵がいなければと考え、乾いた笑いが喉を突き…。
「地獄に堕ちろ。」
「お前達がな。【断罪】!」
グナートルの放った鋭い斬撃に岩を砕かれ、成す術無く崖下へと落ちて行く。
【身体強化】を最大にして自分に掛け、マーレスを引き寄せて抱き締めた所までは記憶している。
後は、運に任せるだけだった…。
息が、苦しいー…。
痛いのか、熱いのか、冷たいのか、良く分からないー…。
「ソル!」
マーレスの声が遠くから聞こえて、重い瞼を開けるとぼんやりと人影が見えた。
死んで、あの世かとも思ったが、それにしては…体がおかしい…。
「い…っ…きて…る…な…」
「ソル!!!!」
泣いているのか、悲愴な顔に見えるが怪我は治ったようで、何よりだ…。
マーレスが生きてさえいれば、それでいい…。
「いけ…っ…おま…え、なら…た、すかる…」
「ソルも連れて行く!」
「あ…し…で…まと…い、だ…」
「ソルがそれを言うな!絶対に助けるから!頼むから、死なないでくれ!!!!」
悲痛な涙声に応えてやりたいが、指一本全く動かせない。
だが、このまま此処で叫んでいればあいつらにまた気づかれるかもしれない…。
「わ…かった…から、な…く、な…いっ…こ…ぅ…」
どれぐらい保つか分からない。
只、息のある内はマーレスは遠くに逃げてくれるだろう。
最後まで、役に立てるならば…。
「ああ、絶対に死なせないっ…!」
ふわりと何かに包まれて、抱え上げられる。
体は軋んだが、安心感のある腕の中で死ねるなんて…やっぱり俺は幸せだと思ったー…。
何とかマーレスの腕を掴み、岩肌に片手で取り付いたものの【身体強化】を使った状態でも大人二人分の体重を支え、雨の中、長時間耐えるには厳しい。
足元は見なくても分かる程に闇が大きな口を開けて俺たちを待っているのだろう…。
「あーあ、遣り過ぎですよ、ローグ。もう、詰んでるじゃないですか。」
「ちっ、そのまま木っ端微塵になれば良かったものを…。」
「何でも良い、任務を終わらせて帰城するぞ。」
「今まで、本当にありがとうございました。ご機嫌よう。」
せめて、頭上に敵がいなければと考え、乾いた笑いが喉を突き…。
「地獄に堕ちろ。」
「お前達がな。【断罪】!」
グナートルの放った鋭い斬撃に岩を砕かれ、成す術無く崖下へと落ちて行く。
【身体強化】を最大にして自分に掛け、マーレスを引き寄せて抱き締めた所までは記憶している。
後は、運に任せるだけだった…。
息が、苦しいー…。
痛いのか、熱いのか、冷たいのか、良く分からないー…。
「ソル!」
マーレスの声が遠くから聞こえて、重い瞼を開けるとぼんやりと人影が見えた。
死んで、あの世かとも思ったが、それにしては…体がおかしい…。
「い…っ…きて…る…な…」
「ソル!!!!」
泣いているのか、悲愴な顔に見えるが怪我は治ったようで、何よりだ…。
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