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120.「出口のない回廊Ⅵ」※

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 確かに、希望は叶った。それは、間違い無いのだが…。

「あっ…く、シュヴ…ぁっ、あぅ、んっ…ン!」

「…っ…ん」

 仰向けになってベッドに体を預けているシュヴァルト様の顔を跨ぐように四つん這いになった体勢で、自分の性器を彼に咥えられて容赦なく愛撫されていた。
 眼下には下衣の前を少しだけ寛げ、同様に立ち上がった彼のものが見える。先程までは俺もそれを咥えて奉仕させて頂いていたのに下半身の暴力的なまでの快感にイキそうになって中断してしまっている。

「お…れも…っ」

 生理的に滲む涙で霞んだ視界を下げ、上体を屈めて先端に口付け、口内に性器を含んで愛撫しようとするとお返しというには多すぎる刺激を先に与えられてしまう。
 ご自身の体を支える必要が無いからか、以前より手や口の動きに容赦が無い上に守護神の性質もある。
 まるで、媚薬のような唾液をたっぷりと絡められ、敏感になり過ぎているそこを含んで扱かれ続ければ限界は容易で…。

「あっ…ああ、ンッう!」

 声が自然と口から溢れ、彼の口の中に精液を放ってしまう。
 目の前が一瞬弾けた後、ぞわぞわと遅れてくるように這って来た快楽に逆上せて目眩に襲われ、崩れ落ちないように腕と脚に力を加えた。

「シュヴァ…っ、あ、あっ…や、め…っ!」

 それなのに、本当に容赦が無いというか、残りを搾り取るようにじゅっと強く吸われて悪戯でもするように人差し指で玉袋から竿へと指を這わされ余計に目が回る。
 本気で腰を引こうとすると咎めるように腰に影が巻きついて引き寄せられ、嘔吐くのではと思える程に深く咥えられて吸われ続ければ、膝が独りでに笑ってくる。
 痙攣する程に感じ、それに堪えているのに濡れた指先が後穴に触れた。
 少し入口をなぞられてから指がつぷりと一本侵入し、内壁を探るように進んで浅い位置で止まると腹部側をマッサージでもするように押される。
 最初は前への刺激で気にならなかったのに、刺激されている内に気持ち良さが広がってどうしようも無くなる。もっとと思わず腰が揺れそうになり、同時に過去に粗相してしまった記憶が蘇ってきゅっと力を腹に加える。
 指を止めて欲しい。そう思っての行動だったのに、下で何故かくっとシュヴァルト様が喉で笑う気配があって、中を強く擦り上げられる。

「…ン…ぁうっ…!」

 びりっと走る快感に力が抜けるが、本当にシュヴァルト様の口に尿なのか何なのか良く分からないものを出すのだけは嫌で、尚も指と口を動かす彼に懇願していた。

「あっ…、ンッ…は、やく、入れて…くだ…さ、あう…っ!」

 挿入して貰えれば体勢が変わる。そう思って発した言葉は冷静に考えられればやぶ蛇だったと気づけただろう。指を二本に増やされた上に、前を激しく扱きながらしゃぶられて暴力的な快楽に再び襲われる。
 最早、気絶でもしたいと思いながら短い呼吸を何度も繰り返し喘いでいると再び射精感を感じて慌てた。

「はな…っ、し…ン…っあ、や、しゅ…ヴぁっああああっ、でる…んあ…あアっ!」

「…っ…ん…ぅ…く…」

 影で固定されている腰を引くことが出来ず、変わりに背を反らして快感に震える。直ぐに出す感覚が無くなった事に、射精以外はしていないと幾分安堵すると半ば体が崩れ落ちた。影に捕らわれながらも支えられていた形なのでシュヴァルト様を潰す事も無く、指を引き抜かれ、口も性器から外されたので余計に力が抜ける。

「んっ…は、シュヴァ…ルト…さ…っ…ま…」

「ん…コウセイ。申し訳ないのですが、香油を出して貰えますか?」

「…こう…油…?あ、は…い。」

「それから、先に体勢を変えましょうか。」

 少し酸欠のせいかぼんやりとしながら返事をし、促されるまま今度は向かい合い、大きめの枕を立て掛け背を預けて座った状態のシュヴァルト様の膝を跨ぐ形で膝立ちさせられる。
 そして、【異空間収納アイテムボックス】から普段お使いになっている香油の瓶を出して渡すと、蓋を開け、どう見ても俺の体液で濡れている指に中身を多めに落として絡ませた。

「もう少しだけ解しますので、準備が整いましたらコウセイが自分で挿入してくれますか?」

「え…あ…」

「可愛がって下さるのでしょう?」

 目の前の光景で既に動揺している中、更に動揺が重なる。いや、かなり大胆な発言を自分で既にしているのだが、本人に言われるのと自分で口にするのとは大分違う。
 小首を傾げながら、うっとりと僅かに上気した表情で見つめられ、色っぽい上にお可愛いらしいものの、確実に可愛がられているのは此方ですよと思いながらも頷く。

 少し戸惑いつつ肩に手を置くと香油の瓶に蓋をしてベッドの端に転がしたシュヴァルト様が、上機嫌で俺の後ろに指を這わせて入れて来る。
 先程と同じで二本、香油でたっぷりと濡れている為かずぷりと一気に中に入って鳥肌が立つ。
 痛みは無く、押し広げるように先程より深く入れられてぐちゅぐちゅと上下に動かされて、正直、気持ちが良い。準備だからと、体が余り動かないように感覚に堪えていると、シュヴァルト様に見上げられているのに気が付いた。

「コウセイ、口付けて下さい…。」

「っ…!」

 言うなり、長い睫毛に縁取られた目蓋が落ちる。男性になっても女神のように麗しく、普段からは想像も出来ないお願いと、どう見てもキスを待っているお顔。全く何も思っていない者だったとしても心打たれるような表情を、最愛の人にされる破壊力は言葉で言い表せない。
 一も二もなく、上体を屈めて優しく唇を塞ぎ、表面を軽く啄んでから少し開けられた隙間から口内へ舌を差し入れて彼の舌を絡め取る。

 主導権を握られるばかりだったので、嬉しい気持ちが勝って夢中で愛撫しているといつの間にか腰を抱き寄せられ、指を三本に増やされて中をぐちゃぐちゃに解され始めた。驚いて、離しそうになった唇を逆に強く吸われ、思わず開けた目の前にはどう見ても肉食獣と言わんばかりの鋭い眼差しと交差する。
 射竦められたまま、口の中も、体の中も掻き回されて熱が膨れ上がり、限界を迎えそうな所で嵐のようだったそれらが全て止んだ。

「ああっ、はっ、あ…っ…?」

 空いた口からは訳が分からず、言葉にならない声と息が零れ、抜けた指を確認するように視線を下げるとシュヴァルト様が誘導するようにそそり立ったご自身の上に俺の尻を宛がい、耳元に唇を寄せてくる。

「食べて下さい、存分に。」

「ぁ…っ」

 雄としての本能を刺激するような言葉に息を呑む。だが、実際食われているのは此方で、倒錯的な言葉に眩みながらシュヴァルト様の性器に手を軽く添え、ゆっくりと含んで腰を落として行く。
 香油の滑りで思ったよりも簡単に進み、途中で手を彼の肩に戻してから更に腰を落として受け入れる。飲み込めば飲み込む程に腰に甘い痺れが走り、思いきり突いて欲しくなるのだが、彼を気持ち良くさせたい。小刻みに震える体を叱咤して、根本付近まで収めると深い息が出た。

「う…ごき、ますっ…。」

「っ…はい…。」

 情欲を孕んだ紫と金の瞳に見返されて嬉しくなる。少しは気持ち良いのだろうかと、腰を浮かせ、先端近くで再び沈める。強烈な快楽に襲われて仕方ない。でも、我慢して何度か同じように腰を振っているとシュヴァルト様が眼を細め、艶やかな息を吐く姿に欲に酔っているように見えた。

「あっ…ン、きもち…っ、いい…で…すか…?」

 動く合間に尋ねると、顔が近づいて来て唇が重なる。口を開けて下さったので、舌を絡めて吸い付くと喉の奥で笑う気配がする。
 暫く、シュヴァルト様の口内を刺激して口を離せば、何だか此方の方が更に欲情してしまっていた。

「シュ…ヴァルト様…っ、大好きです…。」

 ぐちょぐちょと卑猥な音が立つのも気にならなくなって、夢中で腰を振って腹に力を入れて締め付け、目の前の綺麗な唇にちゅっちゅっと何度も口付ける。
 壊れた思考のまま、乱れていなかった彼のシャツの釦を上から外し、首筋から鎖骨を撫で、白く均整の取れた体の表面を撫で下ろすとびくりと反応するように揺れた。気持ち良いのかと、また嬉しくなって、しなやかな腹筋を撫で側面から背中へと手を滑らせると何故か此方の目の前が白く弾けた。

「え…っ…っ…?」

 気が付けばベッドに押し倒されていて膝裏を持たれ、脚を深く折り曲げられながら一度引かれた楔を深く沈められ、ぐりぐりと押し付けられる。イっているのにと、自分の状態を漸く理解し、その上で奥を奥をと刺激されて涙と甘い悲鳴が口から零れる。

「ああっ!あ、あっ…くっ、あああ、ンあっ、あっ、あっ、あっ、な…んあっ、あっあ、シュヴァっん、ああ、うっ、おく…ンッん!」

「ハッ…ぁ、コウセイ…っ、可愛い…んっ、はっ、愛して…います…。」

 囁かれた言葉に余計に中を締め付けてしまって、自分で自分を苛んでいる。堪えられないと脚をばたつかせようとも、しっかりと固定され、体重を乗せながら穿たれてどうしようも出来ない。
 何度も何度も抜き差され、敵陣であるという事も何もかもを忘れ、只々、快楽に溺れて意識が白んでいった。
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