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119.「出口のない回廊Ⅴ」
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重なった唇は直ぐに深みを増し、ゆっくりと転がすように内部を擽られてぞわぞわとした感覚が心地よさと共に体を駆け巡る。
先程の行為も相まって気持ちが良いと、只々沈みそうになる意識と尋ねたい事柄が脳裏を巡ってせめぎ合い混乱しそうだ。そんな状態を汲み取ったようにシュヴァルト様が暫くして顔を上げた。
熱情が残る視線を見つめ返し、再試行した頭で何とか口を開く。
「俺は…っ…一体、何を…忘れているのですか…?」
「まず…私達にはもっと多くの護衛の冒険者がいました。彼らの事を忘れています。」
「多くの護衛…?」
そう言えばと、霞むような記憶の先に聖騎士のような鎧姿や大剣を担いだ大男、明哲そうな老人と不思議な雰囲気の少年の姿。
長身の赤髪の女性や青髪の落ち着いた風体の少女に金髪の自信に満ちた女性と柔らかな雰囲気を纏った緑色の髪の女性。
ドワーフだろうか、それぞれ金槌、戦斧、その両方を装備した男性と少年の三人組の姿。
科学者のような雰囲気の男性と三つ編みの元気そうな女性とそれとは対照的で眠たげな男性の姿。
幾つもの姿が見えて、霧散してしまう。余り、詳細に長くは覚えていられないようだが、まだ多くの冒険者がいたという事実自体は認識出来た。
「別に、余り思い出さなくても構いませんが…一応、専属で護衛をしていたのは竜谷の騎士です。ですから、この状態は明らかにおかしい。」
「道化師人形が怪しい…と?」
「一番、可能性が高いのはそうでしょうね。ですが、意図が分かりません。」
「意図?」
「目的とも言えますが、実は道化師人形が暗殺者で、私達を閉じ込めてアイアス様含め殺しに来る。や、明確に閉じ込める必要性があるのならば犯人でしょう。現時点では、花祭りに参加せよ以外は提示された物が無く、その為に閉じ込めた、までは良いでしょう。只、花祭りに我々が参加する意味や意義は何でしょうか?まさか、人の恋愛成就が見たいから分断して閉じ込めた、では意味不明です。ですから、判断にまだ迷っています。理屈ではないと言われればそれまでですが…、それにしては大掛かり過ぎます。因みに、アイアス様が殺されていないと分かるのはペルレが暴れていない為ですね。彼に何かが有れば、脱出の為に結界が破壊されるでしょう。」
「確かにそうですね…。」
犯人にするには何か決定的な物が足りない。つまり、証拠不十分なのだろう。
今後、事態が動くか目的が判明すれば完全に黒。今は灰色かと考えそうになった所でシュヴァルト様の言葉が降ってくる。
「…それに、監視の気配が二つありました。」
「二つ?」
「ええ、直ぐに消えた者と少し覗き見をしていた者。似てはいましたが、別人でした。通常、仲間で有れば監視は一つで良いと思います。只でさえ、相手の領分に囚われており、此方も目立った抵抗はしていないにも関わらず、更に厳重にする意味が見出せません。何か違った目的、或いは勢力が違うのではないでしょうか?」
「それは…考えられますね。」
「全て仮説ですが、現時点で判断が下せない理由はそんな所です。只、非常時は多少無理をしてでも脱出致します。それだけは変わりません。」
貴方が大事だからとでも言うように髪を撫でられて、真剣な話をしていた筈が途端に胸が跳ねる。
「…分かりました。その時は微力ながら、お手伝い致します。」
シュヴァルト様だけにお任せする訳にはいかないと思って何とか返事をすると、嬉しそうに相好を崩されて…。
「可愛い…。」
呟かれた言葉が何故かそれだった。
「あっ…あ、…ぅ…っ」
何が琴線に触れたのか楽しげに肌蹴けられたシャツを皮切りに滑るように指が下肢へと這って、ベルト、ズボン、下着と簡単に外され、今はその指で性器を上下に扱かれながら乳首を吸われていた。
直接的な刺激もなのだが、胸への愛撫と合わさると直ぐにでも限界を迎えそうな自分がいたたまれない。
しかも、以前より声を出す事さえも気持ち良く感じてしまって、確実に作り替えられている自分の体に戸惑いながらも相手が愛しい人となると深みに嵌るのは最早、当然だ。
「あ、んぅっ…」
ぐりっと亀頭を強めに擦られ、乳頭に歯を少し立てられる。
シュヴァルト様は激しくするのがお好きなように思えるのだが、今、この状態で激しくして下さいというのは確実に間違っている気がする。
それに、本当に、俺の方が奉仕をしたいぐらいで…。
「あの、…シュヴァルト…様…。」
「…はい、どうしました?」
何かまだ質問が有りましたかと不思議そうに向けられた視線を見返して、ごくりと息を呑む。
「俺…にも奉仕させて、いただけませんか…?その、咥…えたり…気持ち良くなって…欲しくて…。」
恥ずかしい、物凄く恥ずかしいが、恐らく自己申告しないとシュヴァルト様は一生させてくれない気がする。
そんな思いが強くて伝えたものの、驚いた顔を隠さずに停止されてしまった。
「すいません、その、不快にさせるつもりは無くて…」
「いえ、不快だとは思いませんよ。コウセイの口で、してくれるのですね?」
「…はい。」
口での所で、眇められたシュヴァルト様の視線が唇を這う。
何となく迷っている素振りを見せてから、何故か物凄く優しく微笑まれた。
「寝室のベッドで、でも宜しいですか?」
「それは…はい、勿論。」
別に指定された場所に問題は無い。問題は無い筈なのだが…。
とても嬉しそうに先導され、その先で懸念の答えは分かった。
先程の行為も相まって気持ちが良いと、只々沈みそうになる意識と尋ねたい事柄が脳裏を巡ってせめぎ合い混乱しそうだ。そんな状態を汲み取ったようにシュヴァルト様が暫くして顔を上げた。
熱情が残る視線を見つめ返し、再試行した頭で何とか口を開く。
「俺は…っ…一体、何を…忘れているのですか…?」
「まず…私達にはもっと多くの護衛の冒険者がいました。彼らの事を忘れています。」
「多くの護衛…?」
そう言えばと、霞むような記憶の先に聖騎士のような鎧姿や大剣を担いだ大男、明哲そうな老人と不思議な雰囲気の少年の姿。
長身の赤髪の女性や青髪の落ち着いた風体の少女に金髪の自信に満ちた女性と柔らかな雰囲気を纏った緑色の髪の女性。
ドワーフだろうか、それぞれ金槌、戦斧、その両方を装備した男性と少年の三人組の姿。
科学者のような雰囲気の男性と三つ編みの元気そうな女性とそれとは対照的で眠たげな男性の姿。
幾つもの姿が見えて、霧散してしまう。余り、詳細に長くは覚えていられないようだが、まだ多くの冒険者がいたという事実自体は認識出来た。
「別に、余り思い出さなくても構いませんが…一応、専属で護衛をしていたのは竜谷の騎士です。ですから、この状態は明らかにおかしい。」
「道化師人形が怪しい…と?」
「一番、可能性が高いのはそうでしょうね。ですが、意図が分かりません。」
「意図?」
「目的とも言えますが、実は道化師人形が暗殺者で、私達を閉じ込めてアイアス様含め殺しに来る。や、明確に閉じ込める必要性があるのならば犯人でしょう。現時点では、花祭りに参加せよ以外は提示された物が無く、その為に閉じ込めた、までは良いでしょう。只、花祭りに我々が参加する意味や意義は何でしょうか?まさか、人の恋愛成就が見たいから分断して閉じ込めた、では意味不明です。ですから、判断にまだ迷っています。理屈ではないと言われればそれまでですが…、それにしては大掛かり過ぎます。因みに、アイアス様が殺されていないと分かるのはペルレが暴れていない為ですね。彼に何かが有れば、脱出の為に結界が破壊されるでしょう。」
「確かにそうですね…。」
犯人にするには何か決定的な物が足りない。つまり、証拠不十分なのだろう。
今後、事態が動くか目的が判明すれば完全に黒。今は灰色かと考えそうになった所でシュヴァルト様の言葉が降ってくる。
「…それに、監視の気配が二つありました。」
「二つ?」
「ええ、直ぐに消えた者と少し覗き見をしていた者。似てはいましたが、別人でした。通常、仲間で有れば監視は一つで良いと思います。只でさえ、相手の領分に囚われており、此方も目立った抵抗はしていないにも関わらず、更に厳重にする意味が見出せません。何か違った目的、或いは勢力が違うのではないでしょうか?」
「それは…考えられますね。」
「全て仮説ですが、現時点で判断が下せない理由はそんな所です。只、非常時は多少無理をしてでも脱出致します。それだけは変わりません。」
貴方が大事だからとでも言うように髪を撫でられて、真剣な話をしていた筈が途端に胸が跳ねる。
「…分かりました。その時は微力ながら、お手伝い致します。」
シュヴァルト様だけにお任せする訳にはいかないと思って何とか返事をすると、嬉しそうに相好を崩されて…。
「可愛い…。」
呟かれた言葉が何故かそれだった。
「あっ…あ、…ぅ…っ」
何が琴線に触れたのか楽しげに肌蹴けられたシャツを皮切りに滑るように指が下肢へと這って、ベルト、ズボン、下着と簡単に外され、今はその指で性器を上下に扱かれながら乳首を吸われていた。
直接的な刺激もなのだが、胸への愛撫と合わさると直ぐにでも限界を迎えそうな自分がいたたまれない。
しかも、以前より声を出す事さえも気持ち良く感じてしまって、確実に作り替えられている自分の体に戸惑いながらも相手が愛しい人となると深みに嵌るのは最早、当然だ。
「あ、んぅっ…」
ぐりっと亀頭を強めに擦られ、乳頭に歯を少し立てられる。
シュヴァルト様は激しくするのがお好きなように思えるのだが、今、この状態で激しくして下さいというのは確実に間違っている気がする。
それに、本当に、俺の方が奉仕をしたいぐらいで…。
「あの、…シュヴァルト…様…。」
「…はい、どうしました?」
何かまだ質問が有りましたかと不思議そうに向けられた視線を見返して、ごくりと息を呑む。
「俺…にも奉仕させて、いただけませんか…?その、咥…えたり…気持ち良くなって…欲しくて…。」
恥ずかしい、物凄く恥ずかしいが、恐らく自己申告しないとシュヴァルト様は一生させてくれない気がする。
そんな思いが強くて伝えたものの、驚いた顔を隠さずに停止されてしまった。
「すいません、その、不快にさせるつもりは無くて…」
「いえ、不快だとは思いませんよ。コウセイの口で、してくれるのですね?」
「…はい。」
口での所で、眇められたシュヴァルト様の視線が唇を這う。
何となく迷っている素振りを見せてから、何故か物凄く優しく微笑まれた。
「寝室のベッドで、でも宜しいですか?」
「それは…はい、勿論。」
別に指定された場所に問題は無い。問題は無い筈なのだが…。
とても嬉しそうに先導され、その先で懸念の答えは分かった。
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