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61.「報告会」

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 宿がある区画の少し前でシュヴァルト様がアイテムでの変装を解除し、来た時と同じように門で通行証を見せて宿屋に戻った。
 使っている部屋に帰る前にヴィアベル王太子殿下の部屋へシュヴァルト様が立ち寄るとの事で、同行を願い出ようとする前に誘われて向かうと、雰囲気は若干異なるものの見知った姿を見つけた。

「ペルレ?」

 自然と名前を口にすると嬉しそうに微笑んだ少女とも少年とも見えるペルレが宙を泳ぐように此方へとやって来る。

「コウセイ、少しぶり。体調はもう良いの?」

「ああ、大丈夫だ。君こそもう良いの?」

「ええ。アイアスが新しい精霊石をくれたから随分元気になったわ。心配してくれてありがとう。」

「それは良かった。それにしても、雰囲気が変わったよね?」

「今の方が本来の私に近いからかしら。元々、精霊に明確な性別は無いのよ。メーア様に仕えていた時は女友達って感覚だったから、それに影響を受けていたのね。」

「成る程。」

 精霊の不思議な生体に感心しながら頷いていると、ニコニコと笑い続けるペルレの後ろからヴィアベル王太子殿下が顔を覗かせた。

「仲が良いね。僕も混ぜて貰えるかな?」

「これは、失礼致しました!」

 礼儀としては部屋の主であり身分の高いヴィアベル王太子殿下と先に挨拶を交わすべきだったのに、ついつい再会が嬉しくて話し込んでしまっていた。
 シュヴァルト様もお待たせしていた事に申し訳なく思っていると気にせずとばかりに微笑んで首を振られる。

「公式の場ではないのだから、畏まらなくて良いよ。寧ろペルレとのように砕けてくれれば嬉しいのだが、シュヴァルト殿もそう思わないかい?」

「コウセイの良いようにとは思っておりますが、気を許して貰えるのは嬉しいですね。」

「お二人共…。」

 遊ばれているのだろうかと少し困っているとヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様の方を見てから意味深に笑った。

「散策は楽しめた様子だね。」

「そうですね。非常に楽しめましたが…アイアス様の方は如何でしたか?」

「僕の方はそれなりに。中々、面白い人達だった。襲撃が無かったのは残念だったけれどね。」

「襲撃…?」

 発言に驚いていると軽く肩を竦めたヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様と一緒にソファーに座るように促してくれる。
 キリルさんが紅茶を用意してくれ、お礼を言うと今日何をしていたか王太子殿下が説明をしてくれた。
 ギルドマスターのライマーさん立ち会いのもと、護衛に推薦された冒険者達と面会をしていたそうだ。
 顔合わせと一緒に不審な者がいないかどうか確認をしてくれていたらしく、此方が出歩いてしまっていて良かったのかと焦るとそれにも思惑が有ったそうだ。

「都合良く、暗殺者が襲いに来ないかとシュヴァルト殿と事前に話していてね。護衛を分散させ、支配人に頼んで宿泊者も安全圏に移動、更に襲われれば冒険者達の人柄や力量も測れるかと思ったんだけれど…上手く行かなかった。そちらも襲撃は無かった?」

「妙な気配は一時あったのですが、直接的な被害は皆無でした。街に潜入はしているとは思うのです。あの程度で諦めるとは思えませんし。」

「だろうね。僕があちらの指揮官だったら索敵ぐらいは入れるだろうし、隙あらば標的の首を取りに行くよ。街の中で安心しているだろうって。」

「少なくとも相手側にもそのように考えて、逆に罠が張ってあるぐらいには考えられる指揮官がいるのでしょう。街中で来ないのであればまた、道中ですね…。」

「そう思わせて、疲弊させるのも良いよね。」

「そうですね、焦らず参りましょう。準備だけは怠らずに。」

 一連の話の流れに状況を理解し、この席に同席させて頂けたのは昼間話してくれたようにシュヴァルト様の配慮だろう。
 危険な話しではあるが、仲間に入れて頂けるのは素直に嬉しく思いながら耳を傾け続ける。

「冒険者の方はどうでしたか?」

「そうだね、出発の時に直接会うだろうが…見解としては概ね、癖はあるが問題ないかと思える人物達だった。」

 ヴィアベル王太子殿下が非常に遠回しな言い方をしているが、『概ね』と言うことは一部何か感じたのだろう。
 また、敵になるかもしれないのかと眉間に皺が自然と寄ると何処か愉快そうに向かい側に座っている王太子殿下が笑って先を話す。

「二名、計り兼ねる人物がいた。只、別段敵意がある訳では無く、悪人といった風でも無い。只々、計り兼ねてしまう…不思議な人達だった。この二人に関しては再度調査、道中も監視をしようとは思っているが、実に愉快だ。」

「アイアス様がそうおっしゃるのは珍しいですね。此方でも注意して置きますので、お名前を伺っても?」

「ああ、名前は…」

 そうして教えて貰った二人には、アーベントイアーを旅立つ時に出会う事になった。
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