61 / 142
61.「報告会」
しおりを挟む
宿がある区画の少し前でシュヴァルト様がアイテムでの変装を解除し、来た時と同じように門で通行証を見せて宿屋に戻った。
使っている部屋に帰る前にヴィアベル王太子殿下の部屋へシュヴァルト様が立ち寄るとの事で、同行を願い出ようとする前に誘われて向かうと、雰囲気は若干異なるものの見知った姿を見つけた。
「ペルレ?」
自然と名前を口にすると嬉しそうに微笑んだ少女とも少年とも見えるペルレが宙を泳ぐように此方へとやって来る。
「コウセイ、少しぶり。体調はもう良いの?」
「ああ、大丈夫だ。君こそもう良いの?」
「ええ。アイアスが新しい精霊石をくれたから随分元気になったわ。心配してくれてありがとう。」
「それは良かった。それにしても、雰囲気が変わったよね?」
「今の方が本来の私に近いからかしら。元々、精霊に明確な性別は無いのよ。メーア様に仕えていた時は女友達って感覚だったから、それに影響を受けていたのね。」
「成る程。」
精霊の不思議な生体に感心しながら頷いていると、ニコニコと笑い続けるペルレの後ろからヴィアベル王太子殿下が顔を覗かせた。
「仲が良いね。僕も混ぜて貰えるかな?」
「これは、失礼致しました!」
礼儀としては部屋の主であり身分の高いヴィアベル王太子殿下と先に挨拶を交わすべきだったのに、ついつい再会が嬉しくて話し込んでしまっていた。
シュヴァルト様もお待たせしていた事に申し訳なく思っていると気にせずとばかりに微笑んで首を振られる。
「公式の場ではないのだから、畏まらなくて良いよ。寧ろペルレとのように砕けてくれれば嬉しいのだが、シュヴァルト殿もそう思わないかい?」
「コウセイの良いようにとは思っておりますが、気を許して貰えるのは嬉しいですね。」
「お二人共…。」
遊ばれているのだろうかと少し困っているとヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様の方を見てから意味深に笑った。
「散策は楽しめた様子だね。」
「そうですね。非常に楽しめましたが…アイアス様の方は如何でしたか?」
「僕の方はそれなりに。中々、面白い人達だった。襲撃が無かったのは残念だったけれどね。」
「襲撃…?」
発言に驚いていると軽く肩を竦めたヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様と一緒にソファーに座るように促してくれる。
キリルさんが紅茶を用意してくれ、お礼を言うと今日何をしていたか王太子殿下が説明をしてくれた。
ギルドマスターのライマーさん立ち会いのもと、護衛に推薦された冒険者達と面会をしていたそうだ。
顔合わせと一緒に不審な者がいないかどうか確認をしてくれていたらしく、此方が出歩いてしまっていて良かったのかと焦るとそれにも思惑が有ったそうだ。
「都合良く、暗殺者が襲いに来ないかとシュヴァルト殿と事前に話していてね。護衛を分散させ、支配人に頼んで宿泊者も安全圏に移動、更に襲われれば冒険者達の人柄や力量も測れるかと思ったんだけれど…上手く行かなかった。そちらも襲撃は無かった?」
「妙な気配は一時あったのですが、直接的な被害は皆無でした。街に潜入はしているとは思うのです。あの程度で諦めるとは思えませんし。」
「だろうね。僕があちらの指揮官だったら索敵ぐらいは入れるだろうし、隙あらば標的の首を取りに行くよ。街の中で安心しているだろうって。」
「少なくとも相手側にもそのように考えて、逆に罠が張ってあるぐらいには考えられる指揮官がいるのでしょう。街中で来ないのであればまた、道中ですね…。」
「そう思わせて、疲弊させるのも良いよね。」
「そうですね、焦らず参りましょう。準備だけは怠らずに。」
一連の話の流れに状況を理解し、この席に同席させて頂けたのは昼間話してくれたようにシュヴァルト様の配慮だろう。
危険な話しではあるが、仲間に入れて頂けるのは素直に嬉しく思いながら耳を傾け続ける。
「冒険者の方はどうでしたか?」
「そうだね、出発の時に直接会うだろうが…見解としては概ね、癖はあるが問題ないかと思える人物達だった。」
ヴィアベル王太子殿下が非常に遠回しな言い方をしているが、『概ね』と言うことは一部何か感じたのだろう。
また、敵になるかもしれないのかと眉間に皺が自然と寄ると何処か愉快そうに向かい側に座っている王太子殿下が笑って先を話す。
「二名、計り兼ねる人物がいた。只、別段敵意がある訳では無く、悪人といった風でも無い。只々、計り兼ねてしまう…不思議な人達だった。この二人に関しては再度調査、道中も監視をしようとは思っているが、実に愉快だ。」
「アイアス様がそうおっしゃるのは珍しいですね。此方でも注意して置きますので、お名前を伺っても?」
「ああ、名前は…」
そうして教えて貰った二人には、アーベントイアーを旅立つ時に出会う事になった。
使っている部屋に帰る前にヴィアベル王太子殿下の部屋へシュヴァルト様が立ち寄るとの事で、同行を願い出ようとする前に誘われて向かうと、雰囲気は若干異なるものの見知った姿を見つけた。
「ペルレ?」
自然と名前を口にすると嬉しそうに微笑んだ少女とも少年とも見えるペルレが宙を泳ぐように此方へとやって来る。
「コウセイ、少しぶり。体調はもう良いの?」
「ああ、大丈夫だ。君こそもう良いの?」
「ええ。アイアスが新しい精霊石をくれたから随分元気になったわ。心配してくれてありがとう。」
「それは良かった。それにしても、雰囲気が変わったよね?」
「今の方が本来の私に近いからかしら。元々、精霊に明確な性別は無いのよ。メーア様に仕えていた時は女友達って感覚だったから、それに影響を受けていたのね。」
「成る程。」
精霊の不思議な生体に感心しながら頷いていると、ニコニコと笑い続けるペルレの後ろからヴィアベル王太子殿下が顔を覗かせた。
「仲が良いね。僕も混ぜて貰えるかな?」
「これは、失礼致しました!」
礼儀としては部屋の主であり身分の高いヴィアベル王太子殿下と先に挨拶を交わすべきだったのに、ついつい再会が嬉しくて話し込んでしまっていた。
シュヴァルト様もお待たせしていた事に申し訳なく思っていると気にせずとばかりに微笑んで首を振られる。
「公式の場ではないのだから、畏まらなくて良いよ。寧ろペルレとのように砕けてくれれば嬉しいのだが、シュヴァルト殿もそう思わないかい?」
「コウセイの良いようにとは思っておりますが、気を許して貰えるのは嬉しいですね。」
「お二人共…。」
遊ばれているのだろうかと少し困っているとヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様の方を見てから意味深に笑った。
「散策は楽しめた様子だね。」
「そうですね。非常に楽しめましたが…アイアス様の方は如何でしたか?」
「僕の方はそれなりに。中々、面白い人達だった。襲撃が無かったのは残念だったけれどね。」
「襲撃…?」
発言に驚いていると軽く肩を竦めたヴィアベル王太子殿下がシュヴァルト様と一緒にソファーに座るように促してくれる。
キリルさんが紅茶を用意してくれ、お礼を言うと今日何をしていたか王太子殿下が説明をしてくれた。
ギルドマスターのライマーさん立ち会いのもと、護衛に推薦された冒険者達と面会をしていたそうだ。
顔合わせと一緒に不審な者がいないかどうか確認をしてくれていたらしく、此方が出歩いてしまっていて良かったのかと焦るとそれにも思惑が有ったそうだ。
「都合良く、暗殺者が襲いに来ないかとシュヴァルト殿と事前に話していてね。護衛を分散させ、支配人に頼んで宿泊者も安全圏に移動、更に襲われれば冒険者達の人柄や力量も測れるかと思ったんだけれど…上手く行かなかった。そちらも襲撃は無かった?」
「妙な気配は一時あったのですが、直接的な被害は皆無でした。街に潜入はしているとは思うのです。あの程度で諦めるとは思えませんし。」
「だろうね。僕があちらの指揮官だったら索敵ぐらいは入れるだろうし、隙あらば標的の首を取りに行くよ。街の中で安心しているだろうって。」
「少なくとも相手側にもそのように考えて、逆に罠が張ってあるぐらいには考えられる指揮官がいるのでしょう。街中で来ないのであればまた、道中ですね…。」
「そう思わせて、疲弊させるのも良いよね。」
「そうですね、焦らず参りましょう。準備だけは怠らずに。」
一連の話の流れに状況を理解し、この席に同席させて頂けたのは昼間話してくれたようにシュヴァルト様の配慮だろう。
危険な話しではあるが、仲間に入れて頂けるのは素直に嬉しく思いながら耳を傾け続ける。
「冒険者の方はどうでしたか?」
「そうだね、出発の時に直接会うだろうが…見解としては概ね、癖はあるが問題ないかと思える人物達だった。」
ヴィアベル王太子殿下が非常に遠回しな言い方をしているが、『概ね』と言うことは一部何か感じたのだろう。
また、敵になるかもしれないのかと眉間に皺が自然と寄ると何処か愉快そうに向かい側に座っている王太子殿下が笑って先を話す。
「二名、計り兼ねる人物がいた。只、別段敵意がある訳では無く、悪人といった風でも無い。只々、計り兼ねてしまう…不思議な人達だった。この二人に関しては再度調査、道中も監視をしようとは思っているが、実に愉快だ。」
「アイアス様がそうおっしゃるのは珍しいですね。此方でも注意して置きますので、お名前を伺っても?」
「ああ、名前は…」
そうして教えて貰った二人には、アーベントイアーを旅立つ時に出会う事になった。
0
お気に入りに追加
338
あなたにおすすめの小説
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる
ひよこ麺
BL
30歳の誕生日を深夜のオフィスで迎えた生粋の社畜サラリーマン、立花志鶴(たちばな しづる)。家庭の都合で誰かに助けを求めることが苦手な志鶴がひとり涙を流していた時、誰かの呼び声と共にパソコンが光り輝き、奇妙な世界に召喚されてしまう。
その世界は人類よりも高度な種族である竜人とそれに従うもの達が支配する世界でその世界で一番偉い竜帝陛下のラムセス様に『可愛い子ちゃん』と呼ばれて溺愛されることになった志鶴。
いままでの人生では想像もできないほどに甘やかされて溺愛される志鶴。
しかし、『異世界からきた人間が元の世界に戻れない』という事実ならくる責任感で可愛がられてるだけと思い竜帝陛下に心を開かないと誓うが……。
「余の大切な可愛い子ちゃん、ずっと大切にしたい」
「……その感情は恋愛ではなく、ペットに対してのものですよね」
溺愛系スパダリ竜帝陛下×傷だらけ猫系社畜リーマンのふたりの愛の行方は……??
ついでに志鶴の居ない世界でもいままでにない変化が??
第11回BL小説大賞に応募させて頂きます。今回も何卒宜しくお願いいたします。
※いつも通り竜帝陛下には変態みがありますのでご注意ください。また「※」付きの回は性的な要素を含みます
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる