呪われた騎士と関西人

ゆ吉

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3章

91.「談話?」

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「私の年齢…?」

 勇気一割、好奇心九割でシュリヒトさんの年齢を尋ねると物凄くきょとんとした目をされた。
 美人さんの不思議そうな顔も良いですねと暢気な思考で待ってると、割りと重めの声で返事があった。

「永く、としか答えられないのだが…。」

「あ、すいません。やっぱり年齢を聞くのは失礼でしたよね。」

 男性でも女性でも嫌な人は嫌ですよねと納得して、聞いた理由も理由やったしあっさり手のひら返ししようとしたら緩く首を振られた。

「いや、そうでは無くて恐らく無理に答えようとするとだな…、私の…っ…」

 真剣な表情になって、話そうとしたんか口を開いた瞬間、シュリヒトさんの頬、綺麗な肌にピシッと一筋の亀裂が走ってだらりとゆっくり赤い血が垂れていく。

「なあっ!?大丈夫ですか!!!?」

 俺も動揺したけど、近くで話を静かに聞いてたフォルクもヴィーダーさんもリベラも皆、一様にそれぞれ驚いてる。リベラが直ぐにハンカチを取り出して、止血しようとしたらシュリヒトさんが片手を上げてそれを制した。

「大丈夫だ。傷は直ぐに塞がる。色々と知ってはいるのだが、その分制約も多い。血なまぐさくなっても良いのならば答えられるが、それを望んでいるようにも見えない。」

「当たり前ですよ!そんなん、なってまで問い質す訳ないじゃないですか!?」

「そうか。では、答えられる範囲では答えよう。」

 もう、どういう事なん!?いや、『理』が原因ぽいんかな。今まで言葉濁される事は多かったけど、そりゃ、こんなんなってまで聞きたくも言いたくもないって! 
 内心大慌てで、あわあわしてるのが伝わったんか少し可笑しそうに口端を上げたシュリヒトさんが片手を頬に滑らせて血を跡形も無く消し去って行く。
 何か呟いたんで、魔法なんかなと思いながら様子を伺ってるとぱっくり割れてた頬が何事もなかったように元通りになってた。

「良くないけど、良かったです。ええと、なんやったかな…驚き過ぎて…。」

「会話をするとの事だったが、私は永く生きていて余計な事も知っている。それを話そうとするとご覧の有り様だ。何か助言が出来れば良いのだが…難しいな。」

「いや、もうその難しい所は突かんで良いので、ほんま…せや!シュリヒトさんて、フォルクの事をどう思ってるんですか?なんか、対応が優しいですよね!」

 咄嗟に思い付いたのが今まで何となく気になってた事やってんけど、俺の質問のセンスー!センスって何処で売ってるんですか!?あるだけ大人買いしまっす!
 ぬおおおおと、若干、息切れしそうな心境でおったらシュリヒトさんが俺を見て、更に右隣に立ってるフォルクに視線を向ける。何処か眩しそうな表情で目を細めてから、眉を寄せた。

「羨ましく思っている。どうして、そう強くあれるのかと…。」

 そこで言葉を止め、俺の左隣で腕組んでたヴィーダーさんにも何故か視線が向く。

「本来ならば貴方を羨ましく思う筈なのだが、不思議だな。」

 いや、待ってくれ。物凄く気になるお言葉にむにょにょと口許がなってたら、フォルクの横で話を聞いてたリベラにも視線が移る。なんや、マジで待ったってくれへんかな。

「君も余り無茶をするな…。」

「え…?」

 何?俺、何かしてる?と、明らかに動揺した顔のリベラがこっちを見たんやけど、俺も分からんて!疑問符飛びまくりやったものの、シュリヒトさんが静かに目を閉じたんで、特にツッコめず…。

「私は余り、話が得意でないようだ。君たちの話を先に…お茶でもしながら聞かせてくれないか?」

「え、はい…分かりました。」

 いや、滅茶苦茶シュリヒトさんの話が気になってしゃあないんですけど、答えんて事は答えられへんてことですよね!
 戸惑いながらも、再び流血事件にならんように同意するとリベラが機転を利かせたというか、動揺してたのを落ち着かせたかったんかさっさとお茶の準備して持って来てくれて、簡易な椅子とテーブルがあったんでさっきの布陣で座り直した。

 温かいお茶を一口飲んで落ち着き、改めて皆を見渡すととても和やかに話す雰囲気ではないんやけど…フォルク先生が口火を切ってくれる、流石やで。

「過去、ナニカ有ッタト仮定シテ、現状、我々二関スル事デ危険ハ無イノダロウカ?」

「差し迫っては…。長い目で見れば、これから貴殿らは世界を巡るのだろうか?そうなると危険、若しくは何かしらある可能性は有る。」

「なんだ…結局、分からねぇのか。危険なんてのは無い方がおかしいぐらいの旅だろうよ。」

「そうね。良かったわ、何かしら今から不利になるのかと思っちゃった。」

 リベラが安心したようにこっちを見て苦笑したんで、俺も同じく安心して苦笑する。少し場が和んだんで、今度こそ雑談したい。

「ええと、俺らの話やったっけ?何が良いかな?」

「あ、じゃあ質問したいわ!」

「うん、なんやリベラ?」

「ずばり!ダイチは胸派?お尻派?勿論、皆も聞きたいわ。」

 ずこーっと、転ばんかったのを全力で褒めて欲しい。
 いや、酔っ払った大学生の深夜テンションとかやったら分かるんやけど、この面子でしかも、さっきの今でその話題て!とんでもセンスやで!?

「因みに私はお尻派。理由を聞きたいならいつでも部屋を訪ねて来て?ひっぱたきながら、教えてあげる。」

 うんもう、君は勇者か?大体、察したから絶対に行かんで。んで、なんで他の面子は俺を興味深げに見てんの?そんな目で見つめないで。

「え…?答えなあかんやつ?因みにヴィーダーさんは?」

「胸。だと、思ってたが…最近は誰のってのが重要なんだなとは学んだ。」

 即答は男らしいし、大事な学びを得てて素晴らしいんですが、俺の薄いまな板、じゃなくて胸板を見ながら口端を上げないで。完全にお遊びモードになってるやないかい!
 うっ…、持病の癪がって逃げ出したい気持ちと残りの二人の意見は気になる。
 思わず視線がちらついてもうて、フォルクとシュリヒトさんが視線を合わせてこっちを見直す。

「スマナイ、考エタ事ガナカッタ…。俺ハ、笑ッテイル顔ガ好キダ。」

「私も考えた事が無い。クライノート様が健やかで、叶うならば幸福であればそれで良い。」

「………っ!」

 おっぱい派ですと実は直ぐに思って、すいませんでしたー!清らかな二人のオーラにピカーッと目を潰されて、暫く戦闘不能になってもうた。 
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