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3章
83.「困った時の神頼み」
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『こちら、神。何かあったか?』
うんまあ、スパイ風なノリは分かるんですけど…毎回、小ネタを出して来て感心しますわ!
『いやぁ、普通に出ると逆に落ち着かないよね~。で、どうしたの?随分と静かに掛けて来たね?』
言わんでも分かってそうですが『竜王』の事と絶望の渦についてちょっとばかし、聞きたいんです。
『なるほどね。竜王、についてはお願いもしていた、治療の件かな?』
そうです、そうです。
でも、【魔力吸収】とか吸収系以外のスキルって結局は魔力が相手に流れて残ってまう感じでしょ?
そう考えると、俺がしてきたスキルでの治療はやっぱり無理なんですかね?
『そうだね。仮にダイチに【成長促進】て、スキルを与えても効果が出るまで魔力を使う前に今の竜王では容量を超えてしまって堪えられないだろうね。君が持っている【生命力譲渡】も与える時に魔力を多く使うから、余り変わらないかな。』
そうですか、いやシュリヒトさんに【癒しの光】を止められた時に薄々は思ったんですが、もしかしたら抜け穴無いかと思いまして。
『今の所は無いね、魔力とはまた別の力なら干渉出来るかもしれないけれど、やはり今の状態では器が脆すぎる。只、そうなったのは本人の心の問題で間違いないから、それが何かのきっかけで解消されれば一気に改善するとは思う。それを探すのが難しいのは分かるけど、自分で自分を封印してしまってるようなものだから。』
自分自身で封印ですか…。
覚えが無い感覚でもないような…なんやったか…。
考え込みそうやったが、【神話】をあんま長く続けんのも怪しまれるんで絶望の渦に話を移す。
正直、ウンエントリヒさんを信用する気持ちもあるねんけど、何と言っても非常事態。
一体、何が起こるか分からんて思うと不安が拭い切れんかった。
全く相談せんよりはマシやろと、心境を伝え、偵察の人らが危なくなった時にお助けアイテム的なもんとかありませんか?て、聞いた。
『ふーむ、丸め込まれたと思い気や、ちゃんと考えてたってのにダイチの成長を感じるよねぇ。よし!そんなスパイの後輩に一肌脱ぐのが神様の役目だよね!』
あ、まだその設定生きてるんですねと思いながらも何かあるんかと待ってたら、ぬぬぬぬぬ~て声がして、ポンッ!て、間抜けな音が響くと腹の上に真っ白な卵、しかもダチョウの卵ぐらいのサイズのがいきなり落ちて来たんで慌ててキャッチする。
『ごめん、生き物(?)だったからアイテムボックスに送れなかったよ~。』
送れなかったよ~、じゃないわーい!後、生き物な筈やのになんで疑問系やねん!?
て、ツッコミ入れてる間に異変に気がついたフォルクとヴィーダーさん、リベラにシュリヒトさんが駆け寄って来て、ひっくり返ってる俺と抱えてる卵、不思議そうに卵を見てるクライとかいう意味不明な状況に固まってた。
「ダイチ、ソレハ…?」
「その、例の、そう!俺らの上司がいきなり送りつけて来て!なんか、ウンエントリヒさんに渡せってさ!」
「例の…ああ、あいつか。大丈夫なのか?危険物だろう。」
「危険物なの?」
何とか言い訳と事情説明をしたらヴィーダーさんが物凄く的確な指摘をして来て、フォルクもリベラも不安そうや。
確かに神様に貰ったもんて高性能やけど、何処かしらおかしい、常識を逸脱してるのは定番やった。
心配のあまりそういう所、すっぽ抜けてたのは失敗したなぁ…。
『もう!大丈夫だよ!その子の力も大分縮小してあるから、本当に非常時に役立つってばー!』
まだ、【神話】中やったなと頭に響く声に存在を思い出して頷く。
お願いしたんはこっちやし、高性能なんは間違いないやろうから…今回は有り難く借りとこう。
すいません、神様。折角、用意してもろたのに…因みにこれはこのままで大丈夫なんですか?
『分かれば良いんだよ。非常時になったら目を覚ますように設定してあるから、そのまま渡すと良いよ。肌身離さずとは言わないけど、可能な限り近くに置いておくと良い。』
了解です。ほんまに疑って悪かったです、助かります。
『もう、良いってば。日頃の行いって言葉を知ってるからね!』
うん、まあ、知ってるなら日頃から気をつけて下さいね、ほんま。
なんか、遠くを見つめたくなる気分を抱えながら状況に付いていけてないシュリヒトさんにも言い訳せなあかん。
『じゃ、一先ずお願いするね。また、何かあったら連絡して。』
【神話】終わらせようとしたら神様の方から言い出したんで何でかなって思ったら…。
『スパイって出来る男っぽいよね!設定は守るよ!じゃあね!』
て、通信が切れた。なるほど、今までで一番こっちに有難い設定やった。
感謝しながらも現実に意識が戻って来たんで、起き上がってシュリヒトさんに話をする。
一先ず、神様の正体とか事情は言わずに俺とフォルクには指示出してる人がおって、困った時は助けてくれると説明した上で、卵も助力になればと送ってくれた事を説明する。
すると、難しい顔で考え出したんでどうしたと思ったら、やっぱり上司が胡散臭かったらしい…。
「ウンエントリヒに渡せという事は何らかの方法で先程の話を聞いており、更にそれを転送して来たのだろう?私は長寿なので、それなりに魔力の扱いや魔法に長けている方なのだが…全く感知出来なかった。この意味は分かるだろうか?」
なんか、全て言わずにこっちに聞くって上手いよな~。うっかり余計な事、喋ってまいそうやわ。
どうしたもんかと考えてたら、見兼ねたフォルクが割って入ってくれた。
「度々スマナイガ、ソレモ事情ガ有ル。確カニ指示ヲ与エテイルモノハ常人トハ掛ケ離レテイルガ、悪意ハ無イ。ソレダケハ、分カッテ頂ケナイダロウカ?」
「…危険と感じれば考えを変えるやもしれんが、一先ずは、承知した。」
話し合いの時もそうやったけど、フォルクが入ってくれるとシュリヒトさんは途端に大人しくなる。
なんか、理由があるんかなと首を捻りつつも助かったんでフォルクの方見たら微笑んで頷いてくれて…かわいいです。
疲れてんかなと思いながらも、大きさ以外は何の変哲も無い卵をベッドに置いたら、興味津々やったクライが座りながら小さい腕で抱え込んだんで…かわいいです。
やっぱり、疲れてるんやなと思いながらも、シュリヒトさんも相好を崩してたんで、疲れてんのは俺だけやなかったと察知する。
「じゃあ、明日にでも届けに行きますね。そう言えば、王都にはいつ出発します?」
「可能ならば明日にでもと考えている。調整をしてくるので…クライノート様を…暫く…。」
「付いて行って良いんやったら、一緒に行ってええですか?」
見るからに離れるの嫌そうやし、聞かれて良い話やったらと思ったんやが、シュリヒトさんは何とかって様子で首を振った。
「いや、行ってくるので暫くの間、頼む。」
「…そうですか、任せといて下さい。」
俺らを信用したと言うよりは、何となくやが、心境の変化があったのかもしらん。
少し悲しげに、でも、凛とした様子で部屋を出て行った。
うんまあ、スパイ風なノリは分かるんですけど…毎回、小ネタを出して来て感心しますわ!
『いやぁ、普通に出ると逆に落ち着かないよね~。で、どうしたの?随分と静かに掛けて来たね?』
言わんでも分かってそうですが『竜王』の事と絶望の渦についてちょっとばかし、聞きたいんです。
『なるほどね。竜王、についてはお願いもしていた、治療の件かな?』
そうです、そうです。
でも、【魔力吸収】とか吸収系以外のスキルって結局は魔力が相手に流れて残ってまう感じでしょ?
そう考えると、俺がしてきたスキルでの治療はやっぱり無理なんですかね?
『そうだね。仮にダイチに【成長促進】て、スキルを与えても効果が出るまで魔力を使う前に今の竜王では容量を超えてしまって堪えられないだろうね。君が持っている【生命力譲渡】も与える時に魔力を多く使うから、余り変わらないかな。』
そうですか、いやシュリヒトさんに【癒しの光】を止められた時に薄々は思ったんですが、もしかしたら抜け穴無いかと思いまして。
『今の所は無いね、魔力とはまた別の力なら干渉出来るかもしれないけれど、やはり今の状態では器が脆すぎる。只、そうなったのは本人の心の問題で間違いないから、それが何かのきっかけで解消されれば一気に改善するとは思う。それを探すのが難しいのは分かるけど、自分で自分を封印してしまってるようなものだから。』
自分自身で封印ですか…。
覚えが無い感覚でもないような…なんやったか…。
考え込みそうやったが、【神話】をあんま長く続けんのも怪しまれるんで絶望の渦に話を移す。
正直、ウンエントリヒさんを信用する気持ちもあるねんけど、何と言っても非常事態。
一体、何が起こるか分からんて思うと不安が拭い切れんかった。
全く相談せんよりはマシやろと、心境を伝え、偵察の人らが危なくなった時にお助けアイテム的なもんとかありませんか?て、聞いた。
『ふーむ、丸め込まれたと思い気や、ちゃんと考えてたってのにダイチの成長を感じるよねぇ。よし!そんなスパイの後輩に一肌脱ぐのが神様の役目だよね!』
あ、まだその設定生きてるんですねと思いながらも何かあるんかと待ってたら、ぬぬぬぬぬ~て声がして、ポンッ!て、間抜けな音が響くと腹の上に真っ白な卵、しかもダチョウの卵ぐらいのサイズのがいきなり落ちて来たんで慌ててキャッチする。
『ごめん、生き物(?)だったからアイテムボックスに送れなかったよ~。』
送れなかったよ~、じゃないわーい!後、生き物な筈やのになんで疑問系やねん!?
て、ツッコミ入れてる間に異変に気がついたフォルクとヴィーダーさん、リベラにシュリヒトさんが駆け寄って来て、ひっくり返ってる俺と抱えてる卵、不思議そうに卵を見てるクライとかいう意味不明な状況に固まってた。
「ダイチ、ソレハ…?」
「その、例の、そう!俺らの上司がいきなり送りつけて来て!なんか、ウンエントリヒさんに渡せってさ!」
「例の…ああ、あいつか。大丈夫なのか?危険物だろう。」
「危険物なの?」
何とか言い訳と事情説明をしたらヴィーダーさんが物凄く的確な指摘をして来て、フォルクもリベラも不安そうや。
確かに神様に貰ったもんて高性能やけど、何処かしらおかしい、常識を逸脱してるのは定番やった。
心配のあまりそういう所、すっぽ抜けてたのは失敗したなぁ…。
『もう!大丈夫だよ!その子の力も大分縮小してあるから、本当に非常時に役立つってばー!』
まだ、【神話】中やったなと頭に響く声に存在を思い出して頷く。
お願いしたんはこっちやし、高性能なんは間違いないやろうから…今回は有り難く借りとこう。
すいません、神様。折角、用意してもろたのに…因みにこれはこのままで大丈夫なんですか?
『分かれば良いんだよ。非常時になったら目を覚ますように設定してあるから、そのまま渡すと良いよ。肌身離さずとは言わないけど、可能な限り近くに置いておくと良い。』
了解です。ほんまに疑って悪かったです、助かります。
『もう、良いってば。日頃の行いって言葉を知ってるからね!』
うん、まあ、知ってるなら日頃から気をつけて下さいね、ほんま。
なんか、遠くを見つめたくなる気分を抱えながら状況に付いていけてないシュリヒトさんにも言い訳せなあかん。
『じゃ、一先ずお願いするね。また、何かあったら連絡して。』
【神話】終わらせようとしたら神様の方から言い出したんで何でかなって思ったら…。
『スパイって出来る男っぽいよね!設定は守るよ!じゃあね!』
て、通信が切れた。なるほど、今までで一番こっちに有難い設定やった。
感謝しながらも現実に意識が戻って来たんで、起き上がってシュリヒトさんに話をする。
一先ず、神様の正体とか事情は言わずに俺とフォルクには指示出してる人がおって、困った時は助けてくれると説明した上で、卵も助力になればと送ってくれた事を説明する。
すると、難しい顔で考え出したんでどうしたと思ったら、やっぱり上司が胡散臭かったらしい…。
「ウンエントリヒに渡せという事は何らかの方法で先程の話を聞いており、更にそれを転送して来たのだろう?私は長寿なので、それなりに魔力の扱いや魔法に長けている方なのだが…全く感知出来なかった。この意味は分かるだろうか?」
なんか、全て言わずにこっちに聞くって上手いよな~。うっかり余計な事、喋ってまいそうやわ。
どうしたもんかと考えてたら、見兼ねたフォルクが割って入ってくれた。
「度々スマナイガ、ソレモ事情ガ有ル。確カニ指示ヲ与エテイルモノハ常人トハ掛ケ離レテイルガ、悪意ハ無イ。ソレダケハ、分カッテ頂ケナイダロウカ?」
「…危険と感じれば考えを変えるやもしれんが、一先ずは、承知した。」
話し合いの時もそうやったけど、フォルクが入ってくれるとシュリヒトさんは途端に大人しくなる。
なんか、理由があるんかなと首を捻りつつも助かったんでフォルクの方見たら微笑んで頷いてくれて…かわいいです。
疲れてんかなと思いながらも、大きさ以外は何の変哲も無い卵をベッドに置いたら、興味津々やったクライが座りながら小さい腕で抱え込んだんで…かわいいです。
やっぱり、疲れてるんやなと思いながらも、シュリヒトさんも相好を崩してたんで、疲れてんのは俺だけやなかったと察知する。
「じゃあ、明日にでも届けに行きますね。そう言えば、王都にはいつ出発します?」
「可能ならば明日にでもと考えている。調整をしてくるので…クライノート様を…暫く…。」
「付いて行って良いんやったら、一緒に行ってええですか?」
見るからに離れるの嫌そうやし、聞かれて良い話やったらと思ったんやが、シュリヒトさんは何とかって様子で首を振った。
「いや、行ってくるので暫くの間、頼む。」
「…そうですか、任せといて下さい。」
俺らを信用したと言うよりは、何となくやが、心境の変化があったのかもしらん。
少し悲しげに、でも、凛とした様子で部屋を出て行った。
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