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3章
80.「事実」
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シュリさんが正気になって即行でしたのはヴィーダーさんとリベラの治療や。
リベラはフォルクが庇ってくれたらしく打ち身や擦り傷程度で、ヴィーダーさんは珍しく指とか腕、肋骨が折れてて重傷やってんけど本人的には内臓逝ってなければ大丈夫だ…と、相変わらずマイペースやった。
で、フォルクは血濡れながらも傷は完全に塞がってるから問題ないって言われたものの、一応【癒しの光】を掛ける。
更に全員に【浄化】も使ったら濡れてた衣服も乾いたんでびっくりした。
仲間が復活した後は怒り心頭のウンエントリヒさんに挨拶に行った。
これまたびっくりやねんけど建物の下で気絶してたのと攻撃食らった分を合わせても軽傷やったらしく、治療は固辞され、まだ下敷きになってる従業員を見てくれと頼まれた。
ええ上司やなと感動した後は建物の下敷きになってる従業員の人らを掘り出して、片っ端から治療して行く。
殆どが竜人やったり鍛えてる人らばっかりでなんとか命に別状も無く、被害に合った周囲の店の従業員も見て回ったら死人が出て無くて不幸中の幸いやった。
シュリさんはクライを抱えたままやったけど、救助の手伝いと比較的動ける双子の一人に軍に連絡を頼んで応援を呼んでくれてた。
正直、双子の治療も考えんでは無かった…。
でも、仲間を傷つけられたのと本人達はまだ威嚇気味やし、シュリさんからもそこまで気にしなくて良いって無茶苦茶遠慮されたんで止めといた。
自分らで対処出来る事を終えると軍の施設で話し合いがしたいって、敵対してたときとは偉い違いでお願いされ、クライは元よりで、一先ず俺、フォルク、ヴィーダーさん、リベラ、ウンエントリヒさん、シュリさん、それに回復薬である程度傷を治した双子も移動になった。
後、何気に驚いてたんやけど…シュリさん、ウンエントリヒさん、双子の服が自動的に元に戻ってた。
道中、気になって聞いてみたらフォルクが装備してる魔道具と原理は一緒らしくて、竜になって戻った時に一々服を着直さなあかんのが面倒で竜人で装備してる人は多いらしい…。
確かに、毎回毎回全裸はきついよな…戦闘中はツッコまんかったけど、際どいちらりはあったと言って置こう。
呑気な事を考えられる程度には落ち着きを取り戻し、港に近い軍の建物に到着するとルツは預かって貰ってから応接室に案内されて向かった。
部屋の中で高そうなお茶も出され、クライを抱えたシュリさんが向かいに座り、何故かこっちの席には俺とウンエントリヒさんが並んで座らされる。
残りのメンバーは互いの陣営の後ろに立った状態で、さっきの今やし警戒してくれてるっぽい。
心の中で感謝してるとウンエントリヒさんが口火を切ってくれた。
「で、その方が竜王レーベン・クライノート・シュターペルラオフ様で間違いがないと…?」
「ウンエントリヒ、その物言いは「いや、言わせて貰う。」」
やけど、最初から中々物騒な物言いやった。
「生誕から百九十九年…そのお姿はどういう事なんだ?俺は一応、あんたを信用していたんだが?誰も何も言わなかったのか?」
「…それは…。」
「あんたが隠していたのか?」
シュリさんが追及に口篭って沈黙してもうたんで、それが肯定やと示してしまう。
その様子に怒りが再熱したように唸り出したウンエントリヒさんの様子に慌てて手で待ったを掛けた。
争いに来たんや無くて、話し合いやからね、落ち着いて欲しい。
「すいませんが、部外者で事情が分からんのですが…クライはその姿やと何か問題なんですか?」
見るからに幼児の姿ではあるが、何処か欠損してるって感じには見えん。
さっきの魔力過多になったのだけは気になるなと視線をウンエントリヒさんに向けると真剣な表情で頷かれた。
「竜王は既に成人している。姿も幼子では無く、大人になっていなければおかしい。並みの竜人ならばまだ良かったかもしれないが…竜王は年月と共にその身に莫大な魔力を保有する。散らしてはいるようだが、今のままでは器が小さ過ぎて何れは肉体が耐え切れなくなり…早死にする。」
「…早死に…?クライが…?死ぬ?」
その言葉は数日間しか行動を共にしてない俺でさえ目の前が真っ暗になる程の衝撃で、現実を直ぐには受け入れられへん。
暫く、呆然として思考停止してもうてたんやが、机を強く叩く音で思考が再開した。
「そんな事は分かっている!!!!私が今まで何もせずにいたと思うのか!?打てる手は全て打った!だが!あの方はもう、この世に存在しないのだ!私ではクライノート様の心を埋める事は出来ない!!!!」
まだ鈍い思考を動かしながら、声を荒げる彼の言葉を整理する。
「……えっと、シュリさんはクライが成長せぇへん理由が分かってるんですか?」
「当たり前だ!竜人は愛する者の為に生きる…っ、それが叶わない事は死よりも辛いと私自身が知っている!!!!」
つまり、クライは愛してた人を失って成長を止めてしまったんやなと理解し、更に現在進行形でシュリさんも…失い掛けてると…。
流石に全員が悲痛な叫びに押し黙り、怒ってたウンエントリヒさんも冷静になったんか難しい顔で考え込んでる。
「……だが、不甲斐ないものだ…我らが竜王よ。貴方はそれで、そのままで本当に宜しいのか?貴方の騎士も民も酷く泣いている。」
ウンエントリヒさんがぽつりと真摯な心情を零した。
それが、波紋のように俺の心にも届いて、小さな火が灯った気がする。
「…そうやな、クライ。俺はクライに死んで欲しくない。クライがもう誰も愛せなくても、クライを愛してる人はいっぱいおる。生き残る方法かってまだ見つかって無いだけで、見つかるかもしらん。クライは今、生きてるんや…諦めずに探して見よう?」
語りかけるとシュリさんの腕の中で静かに成り行きを見守ってたクライは戸惑いながらも俺の瞳を見返して、小さく、頷いてくれたように見えた…。
リベラはフォルクが庇ってくれたらしく打ち身や擦り傷程度で、ヴィーダーさんは珍しく指とか腕、肋骨が折れてて重傷やってんけど本人的には内臓逝ってなければ大丈夫だ…と、相変わらずマイペースやった。
で、フォルクは血濡れながらも傷は完全に塞がってるから問題ないって言われたものの、一応【癒しの光】を掛ける。
更に全員に【浄化】も使ったら濡れてた衣服も乾いたんでびっくりした。
仲間が復活した後は怒り心頭のウンエントリヒさんに挨拶に行った。
これまたびっくりやねんけど建物の下で気絶してたのと攻撃食らった分を合わせても軽傷やったらしく、治療は固辞され、まだ下敷きになってる従業員を見てくれと頼まれた。
ええ上司やなと感動した後は建物の下敷きになってる従業員の人らを掘り出して、片っ端から治療して行く。
殆どが竜人やったり鍛えてる人らばっかりでなんとか命に別状も無く、被害に合った周囲の店の従業員も見て回ったら死人が出て無くて不幸中の幸いやった。
シュリさんはクライを抱えたままやったけど、救助の手伝いと比較的動ける双子の一人に軍に連絡を頼んで応援を呼んでくれてた。
正直、双子の治療も考えんでは無かった…。
でも、仲間を傷つけられたのと本人達はまだ威嚇気味やし、シュリさんからもそこまで気にしなくて良いって無茶苦茶遠慮されたんで止めといた。
自分らで対処出来る事を終えると軍の施設で話し合いがしたいって、敵対してたときとは偉い違いでお願いされ、クライは元よりで、一先ず俺、フォルク、ヴィーダーさん、リベラ、ウンエントリヒさん、シュリさん、それに回復薬である程度傷を治した双子も移動になった。
後、何気に驚いてたんやけど…シュリさん、ウンエントリヒさん、双子の服が自動的に元に戻ってた。
道中、気になって聞いてみたらフォルクが装備してる魔道具と原理は一緒らしくて、竜になって戻った時に一々服を着直さなあかんのが面倒で竜人で装備してる人は多いらしい…。
確かに、毎回毎回全裸はきついよな…戦闘中はツッコまんかったけど、際どいちらりはあったと言って置こう。
呑気な事を考えられる程度には落ち着きを取り戻し、港に近い軍の建物に到着するとルツは預かって貰ってから応接室に案内されて向かった。
部屋の中で高そうなお茶も出され、クライを抱えたシュリさんが向かいに座り、何故かこっちの席には俺とウンエントリヒさんが並んで座らされる。
残りのメンバーは互いの陣営の後ろに立った状態で、さっきの今やし警戒してくれてるっぽい。
心の中で感謝してるとウンエントリヒさんが口火を切ってくれた。
「で、その方が竜王レーベン・クライノート・シュターペルラオフ様で間違いがないと…?」
「ウンエントリヒ、その物言いは「いや、言わせて貰う。」」
やけど、最初から中々物騒な物言いやった。
「生誕から百九十九年…そのお姿はどういう事なんだ?俺は一応、あんたを信用していたんだが?誰も何も言わなかったのか?」
「…それは…。」
「あんたが隠していたのか?」
シュリさんが追及に口篭って沈黙してもうたんで、それが肯定やと示してしまう。
その様子に怒りが再熱したように唸り出したウンエントリヒさんの様子に慌てて手で待ったを掛けた。
争いに来たんや無くて、話し合いやからね、落ち着いて欲しい。
「すいませんが、部外者で事情が分からんのですが…クライはその姿やと何か問題なんですか?」
見るからに幼児の姿ではあるが、何処か欠損してるって感じには見えん。
さっきの魔力過多になったのだけは気になるなと視線をウンエントリヒさんに向けると真剣な表情で頷かれた。
「竜王は既に成人している。姿も幼子では無く、大人になっていなければおかしい。並みの竜人ならばまだ良かったかもしれないが…竜王は年月と共にその身に莫大な魔力を保有する。散らしてはいるようだが、今のままでは器が小さ過ぎて何れは肉体が耐え切れなくなり…早死にする。」
「…早死に…?クライが…?死ぬ?」
その言葉は数日間しか行動を共にしてない俺でさえ目の前が真っ暗になる程の衝撃で、現実を直ぐには受け入れられへん。
暫く、呆然として思考停止してもうてたんやが、机を強く叩く音で思考が再開した。
「そんな事は分かっている!!!!私が今まで何もせずにいたと思うのか!?打てる手は全て打った!だが!あの方はもう、この世に存在しないのだ!私ではクライノート様の心を埋める事は出来ない!!!!」
まだ鈍い思考を動かしながら、声を荒げる彼の言葉を整理する。
「……えっと、シュリさんはクライが成長せぇへん理由が分かってるんですか?」
「当たり前だ!竜人は愛する者の為に生きる…っ、それが叶わない事は死よりも辛いと私自身が知っている!!!!」
つまり、クライは愛してた人を失って成長を止めてしまったんやなと理解し、更に現在進行形でシュリさんも…失い掛けてると…。
流石に全員が悲痛な叫びに押し黙り、怒ってたウンエントリヒさんも冷静になったんか難しい顔で考え込んでる。
「……だが、不甲斐ないものだ…我らが竜王よ。貴方はそれで、そのままで本当に宜しいのか?貴方の騎士も民も酷く泣いている。」
ウンエントリヒさんがぽつりと真摯な心情を零した。
それが、波紋のように俺の心にも届いて、小さな火が灯った気がする。
「…そうやな、クライ。俺はクライに死んで欲しくない。クライがもう誰も愛せなくても、クライを愛してる人はいっぱいおる。生き残る方法かってまだ見つかって無いだけで、見つかるかもしらん。クライは今、生きてるんや…諦めずに探して見よう?」
語りかけるとシュリさんの腕の中で静かに成り行きを見守ってたクライは戸惑いながらも俺の瞳を見返して、小さく、頷いてくれたように見えた…。
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