呪われた騎士と関西人

ゆ吉

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2章

52.「路地裏Ⅲ」※

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 人生初めて、しかもあのヴィーダーさんにフェラされて余りの事になんも考えられへんようになってたら、何故か下半身剥かれて素脚を左右に広げられると言う夢であって欲しい事案が発生してた。
 素早く閉じようとしたけどそこは歴戦の勇士も顔負けなお方。
 行動が予想されてて体を上手く間に挟み込まれて易々と防がれる。
 そんな所で才能の無駄遣いは心底して欲しくなかったし、その力はもっと有意義な事に使って下さいお願いします!

 なんて願いは虚しく飛んでって、ヴィーダーさんが衣服緩めて自分のモノを取り出したんで目眩を覚えた。
 しかも、なんか…俺のと違って色とか大きさとか形が…色々もうぉおおっ!
 ぐるぐる混乱しながら逃げるに逃げられずな状態で見てたら萎えた俺のに立派なのを擦りつけて来て、羞恥とかより衝撃的過ぎて本日何度目かになる許容量オーバーし掛けた。
 でも、そんな脳内大混乱を知ってか知らずか楽しげに、何処か艶っぽく腰を前後に動かすし時々身を乗り出して来ては唇を優しく啄んで行く。
 その動作が擬似的にしてるようで…挿入する気はないんかなって安心してたけど安心するには早かったし、二回も射精してもうええやろって思うのに刺激されれば何故かまた元気になっていく自分自身の体にも戸惑った。

「なんで…またっ…」

「は…っ…体力と性欲があるからだろ、ッ…その方が助かるがな…」

 何が助かるねんて深く聞いたらあかん気が全力でしつつ、戸惑ってる間にもヴィーダーさんが動いてて感じてるんか苦しげに眉間に皺寄せて荒い呼吸を吐く。
 正直、大人の色気があり過ぎて目に毒やし、急所にも直接的な刺激があってゾワゾワゾクゾクしてあかん。
 いっそ意識を失えたらええのにそれも出来んし、好き勝手に揺らされるまま只々快楽を拾うしかなくて、おかしくなりそうやった。

「あ……もっ…どう…したらっ…ぃ」

「どうもしなくて良い…から、感じてろ。」

 簡潔に答えられてそれが正解なような、少なくとも気が済むまで離してくれへんのやと思えばそうするしかなくて目を閉じようとして首を振る。
 不意に思い出したのはエーベルさんとした時にチラついた影で、現実逃避みたいに目を瞑ったらまたあの姿が浮かんで罪悪感に囚われそうで出来んかった。

「やっぱり強情だな…」

 首を振ったせいか拒否したみたいに捉えられたが、ヴィーダーさんは愉快げに目を細める。
 でも、こっちは脳裏を掠めた彼の僅かな存在だけでじわじわと只でさえ上がってた熱が更に上がって混乱する。
 路地に連れ込まれて恥ずかしい事ばっかりやったけど、今が一番恥ずかしいんとちゃうか。
 なんでもっと…本気で、どんだけ痛い目見てもええから抵抗しとかんかったんやと此処にきてやっと思い知って、そして言われたみたいに何処か体の方が心より軽視しとったと思う。

 心の奥さえ開かんかったら、体がどうなろうが何とでもなる。

 そんな気持ちが欠片も無かったとは言えんし、実際こんな状況やし…アホ過ぎるやろ。

「ほら…こっち見てろ。」

 思考が逸れてたら気づいたヴィーダーさんが顎を掴まえて深く口付けてくる。
 舌が入って来て何度もキスされたせいか少しは鼻から呼吸もできて苦しさはマシやけど、そんな事より舌の裏筋や上顎、歯茎なんかを舐められる度に気持ち良さが体に広がってやばい。
 長時間刺激されてたのも原因やろうが、何よりさっき思い出した存在が一番あかんてか…なんで考えただけで感じ易くなるねん!俺は変態か!
 泣きたい気分とやけっぱちな思いを抱きながらも体の方は刺激を受けて素直に反応し、萎えてたモンはすっかり存在を主張してて隠す事も出来ひんから感じ取ったヴィーダーさんが腰の律動を激しくして快感にまた呑まれて行く。
 ぐちゅぐちゅと音が煩いぐらいに聞こえてる気がして、既に出してた俺の精液なんか、それとも更に出してもうたんか…出来ればヴィーダーさんのでもあって欲しいってのは羞恥からとか…ああもう、段々と視界も思考もボヤけて来て訳わからんくなる。
 頭の芯が溶けるみたいに只々気持ち良くて、荒い呼吸音がどっちのもんかも分からんくなった頃、腹に熱い何かが掛かった。

「…ンッ…ぅ」

 顔を伏せて短く息をヴィーダーさんが詰めたんで何となく頭の隅で察しながらも漸くこれで開放されるんかと安心して力抜いたんやけど、何故か顔を上げた彼に熱っぽく見つめられて口付けられる。

「ダイチ…もっとだ…」

 半ばぐったりしてて反応は薄くなったけど、驚きに目を見開き、言葉の意味に心の中で悲鳴を上げた…。







 ヴィーダーさんにやっと離して貰えた頃にはすっかり夜も更け込んでたと思う。
 あの後、ひっくり返されて素股されるわ…全身、余すところなく噛み舐めされるわ…その後も、好き勝手弄られるわで…正直、何回イったか覚えてない。
 頭の中がグズグズになり過ぎて何か泣き叫んだような気もするし、過去の黒歴史が可愛く思えるレベルで地面に掘った深い堀にでも埋まりたい経験をさせられた気がする。

 それで流石に最後の方は意識がシャットダウンしてて今さっき気づいたんやけどなんか見知らぬ部屋におった。
 柔らかいベッドに寝かされてて、服も綺麗な寝巻きみたいなんを着せられてる。
 室内を見回すと家具の雰囲気は女性的で寝具も真っ白で綺麗やし、何処となく良い香りもする。
 クエスチョンマーク乱舞させながら薄暗い室内観察してたら扉がゆっくりと開いて洋燈持ったベツァオさんが入って来た。

「あら?お目覚めですか、ダイチ様。」

 予想外やけど数刻前に会ったばっかりの彼女に妙な安堵感もあって寝たまま凝視してたら、それはもうにこやかに微笑みながら近づいて来る。

「痛いところはございませんか?」

「…ベツァオさん?なんで…」

 相手の質問に答える前に自分の疑問が勝って聞いてみたら掠れた声が出た。
 気まずさに視線が彷徨ったんやけどベツァオさんは気にするでもなく自然な動作で洋燈をサイドテーブルに置いて、代わりに水差しを取ってグラスに水を注いで手渡してくれる。
 拒む理由も無いし、実際は大丈夫やろうが喉も痛んでるような気がして起き上がると有り難く貰って飲み干した。

「ハー…、ありがとうございます。」

「いいえ、少し…いえ、大分ヴィーダーが無茶をしましたから。」

 水をしっかり飲み終えた後で本当に良かったと思う。
 途中で言われたら確実に噴き出して毛布を汚してたやろうから…。

「ま……さか、見て…?」

 心臓バクバクさせながらグラスを割りそうな勢いで握り締めつつ、ベツァオさんに疑惑を投げたら口元に手を当てて可愛らしく笑われる。

「愚問ですわね。」

 やけに力強く通る綺麗な声が俺の心にクリティカルヒットを与えた。
 白い毛布に崩折れるように上半身を折り、色んな感情からプルプル震えてたら優しく背中を撫でられる。
 これが飴と鞭…ん?鞭と飴か?と、脳内で言葉を転がしてたらベツァオさんが語り出す。

「煽った手前、どうなるか心配でして。それに、まさか路地裏でなんて…いつ邪魔が入るか気が気ではありませんでしたの。ここはもう私が一肌も二肌も脱いで二人の邪魔者は全て排除させて頂きました。」

 やっぱり故意やったかと邪魔者排除て…?あの路地、全く人気がないと思ったら、そういう事!?

「排除て…生きてます!?」

「生きてますわよ。優しく、時には厳しく…お帰り頂いただけです。」

 口で言って効かん人らは鞭の餌食になったんか、はたまたあの純朴なボディガードさんが着いて来て睨みを効かせたんか…深く考えたらあかんなと、とりあえず生きてたらええかと意識を切り替えて体を起こしたら優しい眼差しでこっちを見てて動揺する。

「どうしたんです?」

「いえ、なんでもありませんわ…只、何故かとても嬉しく思っております。」

 本人も不思議そうに、おねーさんて見た目やのに純粋な少女みたいに屈託なく笑われて戸惑う。

「なんか、ベツァオさんて小さい女の子みたいですね…。」

 今、思ったまんまを口にしたら何度か瞬きしてからふっと遠くを見るように、でも澄んだ、愛しささえ感じさせる眼差しをされる。

「私はあの頃のまま時間が止まっているのです。動き出す時を願いながら…。」

 意味のある言葉やと思った、けれども先を聞けない雰囲気で…いや、だからこそ聞いとくべきやと思ってお互いに見つめ合うようにして口を開く。

「それって…」

 すると、タイミング悪く部屋の扉が開いた。
 視線を移すと風呂に入ってたんか上半身裸で髪が濡れてるヴィーダーさんが部屋に入って来て、パッと見て良い雰囲気の俺とベツァオさんを見るなり臨戦態勢に入り掛けたんで慌てて止めて話が逸れた。
 誤解を解きつつ、出鼻を挫かれたんで話を変えてここは何処かと改めて聞いたらベツァオさんのお宅やと教えてくれた。
 どうも…バレへんように覗き見、覗き見は最早趣味って断言されてツッコミ何処から入れたらええねんて唸りながらも余りの俺の惨状に頃合を見計らいまくって登場したらしい。
 んで、そのまま城に戻る気かと。若しくは下手な宿に泊まって苦労するかと。我が家は設備、衣類共に充実してる上に袖の下を渡せば口は誰よりも固いと売り込んだらしい。
 ちゃっかり儲けてる所が商人やけどヴィーダーさんも感情は兎も角、利害の一致で承諾して世話になったらしい。

「金払えば、下手な奴よりは信用できるからな…。」

「なんでしたら、監禁調教なども今回は特別に支援致しますわよ。」

「怖い怖い怖い!もうそん時は全力で家破壊して脱出しますからね!」

 冗談なんか本気なんか、いや目が本気っぽかったんで冷や汗かきつつもベツァオさんが間にいてくれるお陰でヴィーダーさんについて深く考えるべき事もその時は先送りに出来て何処かホッとしてた。
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