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2章
30.「感謝の言霊」
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一通り話も纏まり、まだ安静にしといた方がええやろって事でエルフリーデさん…くんかな?に毛布を掛け「ねんねんころり~よ。」とポンポン叩いて寝かしつけようとしたら照れられた。
『嬉しいですが、恥ずかしいですね…。』と顔の下半分、毛布で隠しながら困ったように言われたんでうっかり萌えて鼻血出そうになったのを気合いで堪え、何とか食器だけ受け取ってライゼと民家を出たんやが、直ぐに呼び止められた。
「ダイチ、少し待ってくれ。」
「…ん?どうしたん?」
一瞬、エルフリーデくんに萌えたのがバレたんかとも思ったけど、何故か俺よりライゼの方が落ち着きなくて様子がおかしい。まさか、同士かとシンパシー…やないな。
「礼がしたかったのだが…。」
お礼?何かしたかと思いつつ向き合う姿勢になれば何故かじっと凝視される。考え込むように眉を寄せるからなんや?て、更に困惑すればライゼが自分の肩に掛かった長い銀髪を片手で後ろに払い「失礼。」と一声掛けて顔を寄せて来た。
しかも、そのまま外套のフードの中ってか首筋に近づいて来て肌に鼻先がくっつく。息が掛かって擽ったいと思ったのも束の間、匂い嗅がれてると気がついた。
「ぬあ!?」
「…っと、すまない。確認したい事があったんだ。」
俺が驚いたんで素早く体を離してくれたんやけど、むず痒さと恥ずかしさが残ってて首筋を押さえながら何度も撫でる。
「…確認?一体なんの?」
「『加護』の確認だ。今回の諸々の礼にでもと思ったのだが、既に強い加護を受けているようだな。人族には殆ど分からない感覚だろうが、亜人や鼻の効く者、魔力の機微に敏い者には混じった魔力の香りというのか、感じる所があるのだ。それを確認した。」
は!?マジか!?『加護』って言ったら外套に神様のんとエーベルさんやけど、神様の力で肉体が作られてるから混じったとしたらエーベルさんの加護かな?
「加護の重ね掛けと言うのは有りなのだが、…その、なんと言うか…先に掛けた者に喧嘩を売るようなものなのだ。」
え?なにそれ凄い物騒。てか、『加護』ってそんな意味合いもあんの!?全然知らんかってんけど、つまりエーベルさんの魔力の残り香があって、手出したら…よろしい、ならば戦おう。て、事か!?
ちょちょちょ、そんな大事な事なんも言われんかったで!?この世界やったら常識やから?でも、説明しといて欲しかったです、エーベルさーん!!!!
「私とその者が争う…となると、礼どころか迷惑になるかと先に確認させて貰った。」
「いや、礼は別にええけど、その配慮はめっちゃ助かります!!!ほんまに良かった!エーベルさんとライゼが争うとか見たくないし!?」
思わぬ落とし穴ってか展開に力が抜ける。二人共、ええ人やのにそんな理由で争い(?)とかありえへんし!
「だから、『加護』には劣るが『無の民』に伝わる良き旅路を願う『言霊』を贈らせて貰って良いだろうか?これは力が弱い分、目立たないし…見つかっても圧倒的に『加護』の方が強いので反抗の意思がないのが分かるだろう。」
言霊?おまじないみたいなもんかな?まあ、ガチファイトにならんのやったら、良い旅になるよう願って欲しい。なんせ、波乱含みの悪寒しかせぇへんしな!
「それで喧嘩にならんのやったら嬉しいし有難いんで、お願いします。」
「ああ、大丈夫だ。それでは、手を出してくれ。」
促されるまま右手を出すとライゼは両手でそれを恭しく包み込み、少し屈み込みながら自分の額へ近づけ触れさせた。
すると、触れた指や手の甲から涼風って感じの涼しくて優しい、緩やかな感覚が流れ込んで来る。
『加護』と少し似てるけど、確かに力が加減されてるのが分かった。
「我らが同胞と認めしこの者に、旅の安寧と祝福を。たとえ困難に出会おうとも風の導きがあらん事を心から願う。」
『言霊』を言い終えるとゆっくり手を離し、薄らとライゼが笑った。
「『無の民』は常に旅をする『理』の一族なのだ。だから、旅の無事を願い、親しい者にこの言葉を贈ると父が言っていた。安寧は勿論、運命に惑いそうな時、困難に出会った時、ささやかな導きだが助けとなるよう貴方を想う気持ちを贈る。」
うわ、格好良いし嬉しいな。乗り越えるのは自分やけど、さりげなく想って応援してますよって感じがまたええ。
それに、お父さんの話し出て来たって事は会ってるんやなと安心も出来た。お母さんの話しだけしか聞いてなかったからてっきりおらんのかと思ってたけど『理』と関係しとったんか。
「ありがとうな、感動したわ。なんか俺も返せたらええんやけど…。」
「既に貰っているから礼がしたかったのだ。それにダイチから力を返されると『盟約』になってしまって、それこそ『加護』を与えた者に恨まれるだろう。」
「『盟約』てなんです?」
また、新しい単語が出て来たんで首を傾げる。
「『加護』と『言霊』が一方からのものとすれば、『盟約』は互いに結ぶものだ。それも色々と種類はあるらしいのだが、最古のものは相当に威力が強いと聞く。まぁ、今では知っている者も数少ないし、知っていても結ぶ者は稀だ。」
「なんで、結ぶ人が少ないん?」
「効力が強すぎて制約が厳しいからだと聞いた。一度結べば解除も難しいと言うか…出来ない物が多いとか。場合によっては命に制約が掛かる物もあるらしいから、危険を冒してまで結ばないと言う事だろうな。」
ハイリスク、ハイリターンって事やねんな。
それにしても『盟約』『加護』『言霊』て…これは『理』とか『スキル』とはまた別の概念なんか?結構、自由に使える印象やし…想いを力にって感じでロマンチックな感じもする。
「なるほど、色々あるんやね。礼も有難い上に勉強にもなったわ、ほんまにありがとう。」
「そうか、役に立てて良かった。危ない所を助けて貰い、長年の妄執と向き合え、晴れやかな未来も覗けた。こちらこそ、心から感謝を…ありがとう。」
うん、改まって礼言われんのは相変わらず照れるし焦るけど嬉しいな。朝から気分良くて、その日は絶好調のハイテンションで一日を過ごせた。
『嬉しいですが、恥ずかしいですね…。』と顔の下半分、毛布で隠しながら困ったように言われたんでうっかり萌えて鼻血出そうになったのを気合いで堪え、何とか食器だけ受け取ってライゼと民家を出たんやが、直ぐに呼び止められた。
「ダイチ、少し待ってくれ。」
「…ん?どうしたん?」
一瞬、エルフリーデくんに萌えたのがバレたんかとも思ったけど、何故か俺よりライゼの方が落ち着きなくて様子がおかしい。まさか、同士かとシンパシー…やないな。
「礼がしたかったのだが…。」
お礼?何かしたかと思いつつ向き合う姿勢になれば何故かじっと凝視される。考え込むように眉を寄せるからなんや?て、更に困惑すればライゼが自分の肩に掛かった長い銀髪を片手で後ろに払い「失礼。」と一声掛けて顔を寄せて来た。
しかも、そのまま外套のフードの中ってか首筋に近づいて来て肌に鼻先がくっつく。息が掛かって擽ったいと思ったのも束の間、匂い嗅がれてると気がついた。
「ぬあ!?」
「…っと、すまない。確認したい事があったんだ。」
俺が驚いたんで素早く体を離してくれたんやけど、むず痒さと恥ずかしさが残ってて首筋を押さえながら何度も撫でる。
「…確認?一体なんの?」
「『加護』の確認だ。今回の諸々の礼にでもと思ったのだが、既に強い加護を受けているようだな。人族には殆ど分からない感覚だろうが、亜人や鼻の効く者、魔力の機微に敏い者には混じった魔力の香りというのか、感じる所があるのだ。それを確認した。」
は!?マジか!?『加護』って言ったら外套に神様のんとエーベルさんやけど、神様の力で肉体が作られてるから混じったとしたらエーベルさんの加護かな?
「加護の重ね掛けと言うのは有りなのだが、…その、なんと言うか…先に掛けた者に喧嘩を売るようなものなのだ。」
え?なにそれ凄い物騒。てか、『加護』ってそんな意味合いもあんの!?全然知らんかってんけど、つまりエーベルさんの魔力の残り香があって、手出したら…よろしい、ならば戦おう。て、事か!?
ちょちょちょ、そんな大事な事なんも言われんかったで!?この世界やったら常識やから?でも、説明しといて欲しかったです、エーベルさーん!!!!
「私とその者が争う…となると、礼どころか迷惑になるかと先に確認させて貰った。」
「いや、礼は別にええけど、その配慮はめっちゃ助かります!!!ほんまに良かった!エーベルさんとライゼが争うとか見たくないし!?」
思わぬ落とし穴ってか展開に力が抜ける。二人共、ええ人やのにそんな理由で争い(?)とかありえへんし!
「だから、『加護』には劣るが『無の民』に伝わる良き旅路を願う『言霊』を贈らせて貰って良いだろうか?これは力が弱い分、目立たないし…見つかっても圧倒的に『加護』の方が強いので反抗の意思がないのが分かるだろう。」
言霊?おまじないみたいなもんかな?まあ、ガチファイトにならんのやったら、良い旅になるよう願って欲しい。なんせ、波乱含みの悪寒しかせぇへんしな!
「それで喧嘩にならんのやったら嬉しいし有難いんで、お願いします。」
「ああ、大丈夫だ。それでは、手を出してくれ。」
促されるまま右手を出すとライゼは両手でそれを恭しく包み込み、少し屈み込みながら自分の額へ近づけ触れさせた。
すると、触れた指や手の甲から涼風って感じの涼しくて優しい、緩やかな感覚が流れ込んで来る。
『加護』と少し似てるけど、確かに力が加減されてるのが分かった。
「我らが同胞と認めしこの者に、旅の安寧と祝福を。たとえ困難に出会おうとも風の導きがあらん事を心から願う。」
『言霊』を言い終えるとゆっくり手を離し、薄らとライゼが笑った。
「『無の民』は常に旅をする『理』の一族なのだ。だから、旅の無事を願い、親しい者にこの言葉を贈ると父が言っていた。安寧は勿論、運命に惑いそうな時、困難に出会った時、ささやかな導きだが助けとなるよう貴方を想う気持ちを贈る。」
うわ、格好良いし嬉しいな。乗り越えるのは自分やけど、さりげなく想って応援してますよって感じがまたええ。
それに、お父さんの話し出て来たって事は会ってるんやなと安心も出来た。お母さんの話しだけしか聞いてなかったからてっきりおらんのかと思ってたけど『理』と関係しとったんか。
「ありがとうな、感動したわ。なんか俺も返せたらええんやけど…。」
「既に貰っているから礼がしたかったのだ。それにダイチから力を返されると『盟約』になってしまって、それこそ『加護』を与えた者に恨まれるだろう。」
「『盟約』てなんです?」
また、新しい単語が出て来たんで首を傾げる。
「『加護』と『言霊』が一方からのものとすれば、『盟約』は互いに結ぶものだ。それも色々と種類はあるらしいのだが、最古のものは相当に威力が強いと聞く。まぁ、今では知っている者も数少ないし、知っていても結ぶ者は稀だ。」
「なんで、結ぶ人が少ないん?」
「効力が強すぎて制約が厳しいからだと聞いた。一度結べば解除も難しいと言うか…出来ない物が多いとか。場合によっては命に制約が掛かる物もあるらしいから、危険を冒してまで結ばないと言う事だろうな。」
ハイリスク、ハイリターンって事やねんな。
それにしても『盟約』『加護』『言霊』て…これは『理』とか『スキル』とはまた別の概念なんか?結構、自由に使える印象やし…想いを力にって感じでロマンチックな感じもする。
「なるほど、色々あるんやね。礼も有難い上に勉強にもなったわ、ほんまにありがとう。」
「そうか、役に立てて良かった。危ない所を助けて貰い、長年の妄執と向き合え、晴れやかな未来も覗けた。こちらこそ、心から感謝を…ありがとう。」
うん、改まって礼言われんのは相変わらず照れるし焦るけど嬉しいな。朝から気分良くて、その日は絶好調のハイテンションで一日を過ごせた。
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