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2章
23.「土の国」
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緑の国から土の国、確か『ラントヴィルトシャフト王国』やったか…名前長いから合っとるか心配やの国境に向かう道中、神様との会話をフォルクに話して聞かせた。
エリアボスの存在にも驚いてたんやけど、呪いの関係で俺がボスを倒さなあかんって事情を説明したら唸り始める。やっぱ、他の魔獣より明らかに強いし危険やから心配してくれてるらしい。
話し合った結果、戦闘経験積みつつ戦いに慣れて行く事と、基本はフォルクが追い込んで止めを刺すって連携の練習をするのが現実的かと話が落ち着いた。
ついでに、使えそうなスキル試しとこうかと道中、背に揺られながら使ったり、たまに休憩がてら背から下りて使用してみたんやけど…。
【無敵の盾】は使う意思を示さんと発現せんけど、発現させたら範囲は何処までやねん!?て程、広い結界やった。耐久度もフォルクがかなり本気で攻撃してもビクともせん。マジ、無敵や…すごいわ。
他にも【武器召喚】はアイテムボックスに入れてる手持ちの武器を取り出せる所から、それ以外にも「エアツェール」に存在するって制限は掛かるけど、無数の武器が際限なく召喚出来た。取り出し戻し自由、壊れたら消えるけど…これだけでもチート過ぎて戦慄を覚える、庶民の心臓には悪いで!
固有スキルがめちゃくちゃ反則やったんで、通常のスキルはどうやろ?て、思って怖々試したら【扇技】これは別名【ハリセン技】やな。聖ハリセン使って叩いてみれば岩を粉砕し、広げて一刃したら木々を余裕で両断した。おいいい!!!
【槍技】に関しても聖槍使って軽く突けば岩を粉砕し、おまけに衝撃波で砕けた破片を砂に変える…俺もフォルクもビックリし過ぎて固まったわ。
あかん…確認すればする程、精神力が削られるのが神様クオリティ!
てか、たまたま平和ボケしてる人種やったから良かったけど、戦闘狂とかがこれ持ってたら世界が滅ぶぞ!て、涙目になった。
もう今日はムリぽって状態になったんで休憩で余計に疲れた俺は安心できるフォルクの背に戻りつつ、案外ボス倒せるんかな?と光明も同時に感じてた。
んで、スキル確認を途中で挫折したんで話を切り替える。
神様は『理』関係に口が重いし、フォルクに確認したい事もあったんで、申し訳ないけどエーベルさんの事情を掻い摘んで説明し、そんな『理』を知ってるか聞いてみた。
すると、フォルクは首を振った。全く知らんと聞いた事もないと…逆にその『理』はなんやと詳しく状況を聞き返してくる程やった。
フォルクやエーベルさんが嘘をつくとも思えんし、どちらも本当やと考えると…全員にこの現象が起こるとは限らんて事が一番有力かもしれん。
状態異常も全員やないって言ってたから…原理があるんかどうかは正直分からんが、フォルクは逃れ、エーベルさんは捕まったって感じか。
一応の見解を話すとフォルクも納得してくれたんか、追求を止めてエーベルさんの身を、フェイがいるとは言え案じてた。
『黒の民』に関してはフォルクも知ってるし聞こうかとも思ってんけど、神様渋ってたしな…と脳裏を掠めて今回は止める事にする。
いずれ訪れる国やろうし、嫌でも事情は分かるんちゃうかって、急がんでええかとも思う。
今の所、聞きたい話はこんなもんかと脳内整理してると、国境線沿いに近づいて来てフォルクが走ってたスピードを緩め出した。
通行を確認する官署があるとかで、そこで『紋印』出してフォルクは従魔として、俺も旅人やけど一応身元はしっかりしてまっせと正式に入国しようって話になってた。
『紋印』無かったら空から不法侵入やったから…皇帝様にはほんま感謝です!
疚しいところもなく気持ち良く通過するで~と、機嫌良く官署に更に接近したら異様な光景に完全に立ち止まる事になった。
潰された詰所らしき建物と、どう見ても大量の血が隆起した地面に染み込んだ跡。只、死体はない…考えられるんは…と、勝手に想像が進んで吐き気を覚え、咄嗟に口元を抑える。
「…うっ……。」
「ダイチ、俺ノ背ニシガミツイテ、目ヲ閉ジテイロ。無理ニ見ル必要ハナイ。」
頼もしいフォルクの言葉に素直に頷いた。これ以上、直視してても迷惑掛けるだけや。
俺はフォルクの鬣に顔を埋め、胴体にグッと両腕を回して視界を遮断した。太陽みたいな匂いに包まれ、体温と脈拍の鼓動に幾分落ち着けた。
「一気ニ通リ抜ケルカラ、振リ落トサレルナヨ。」
宣言通り、風になった様な錯覚を覚えるスピードで走り抜けた感覚が伝わる。
暫く振動が伝わり、動きが止まった頃に顔を上げると開けた街道の真ん中、周囲の畑みたいなんは荒れてるけど血の跡も臭いもない所におった。
「ごめんな…フォルク、ビックリしてもて…。」
「気ニスルナ。見慣レテイナイノダロウ?気分ガ良イモノデモナイ、当タリ前ノ反応ダ。」
慰めてくれる優しさと安堵感に肩から力が抜け、冷静に状況を考えられる思考が戻って来る。
「あれ、魔獣に襲われたんやでな…。」
「恐ラク。昔、襲ワレタ村ト状況ガ似テイタ…。」
「実際に見るとこんなに衝撃受けるもんか…。」
『緑の国』が平和やった分、甘く見てたと言っていい。フォルクが嘆願したのも分かるような状況やった。
アレがあっての努力と犠牲を払っての平和やってんな…頭が下がる思いや。
「フォルクがいてくれて、ほんまに良かった…俺だけやったら先に進めんかったかも…。」
「ソレハ、コチラモ同ジダ…ダイチガイナケレバ、俺モ先ニハ進メナカッタ。」
気持ちが重なった事が嬉しくて、お互いに思わず笑みが溢れた。
そして、ゆっくり歩き出したフォルクの背に掴まりながら周囲を確認する。
右手は山脈や大森林程ではないけど森が広がり、左手には広大な農地があったと思われる場所、あちこち荒れ果てて、掘り返された跡や作物が枯れた残骸があった。
勿論、人の姿なんかは無く、何年も放置されてるって印象を受ける。
「ここにおった人らは何処にいったんやろうか…?」
「…生キテイレバ街ニ逃ゲタノデハナイダロウカ?少ナクトモ、城壁ガアルダロウカラ…無事デアレバ良イナ…。」
「そうか…。」
何とも言えん状況に気落ちしつつも、落ち込んでるだけやったらどないしょうも無いんで、とにかく街道が続く限り先に進む事にした。進んでたら何かしらに出会えると思うしな。
そうして、【索敵】を念の為に使いながらフォルクに少し急いで貰いつつ駆け出す。
どれくらい進んだやろうか、村の残骸を幾つも発見し、日も傾き始めて野宿する所も考えななって所やった。
いきなりスクリーンに尋常でない数の『赤の丸』が出現して、おまけに『青の丸』も何個かそれに囲まれるように映る。でも、何故か色が綺麗な青だけでなく数名くすんでるし、状態異常のマークも見えた。
ヤバイんちゃうやろか!?俺は無意識に叫んでた。
「フォルク!この先、敵がめっちゃおるし、誰か囲まれてる!早くせな死んでまうかも!」
「分カッタ!飛ンデ囲マレテイル者ノ近クニ降リ立ツ!着イタラ、直グニ結界ヲ張ッテクレ!」
「了解!」
承諾するなりフォルクは地面を強く蹴り、翼を大きく広げて羽ばたきながら敵の渦中へと突っ込んだ。
エリアボスの存在にも驚いてたんやけど、呪いの関係で俺がボスを倒さなあかんって事情を説明したら唸り始める。やっぱ、他の魔獣より明らかに強いし危険やから心配してくれてるらしい。
話し合った結果、戦闘経験積みつつ戦いに慣れて行く事と、基本はフォルクが追い込んで止めを刺すって連携の練習をするのが現実的かと話が落ち着いた。
ついでに、使えそうなスキル試しとこうかと道中、背に揺られながら使ったり、たまに休憩がてら背から下りて使用してみたんやけど…。
【無敵の盾】は使う意思を示さんと発現せんけど、発現させたら範囲は何処までやねん!?て程、広い結界やった。耐久度もフォルクがかなり本気で攻撃してもビクともせん。マジ、無敵や…すごいわ。
他にも【武器召喚】はアイテムボックスに入れてる手持ちの武器を取り出せる所から、それ以外にも「エアツェール」に存在するって制限は掛かるけど、無数の武器が際限なく召喚出来た。取り出し戻し自由、壊れたら消えるけど…これだけでもチート過ぎて戦慄を覚える、庶民の心臓には悪いで!
固有スキルがめちゃくちゃ反則やったんで、通常のスキルはどうやろ?て、思って怖々試したら【扇技】これは別名【ハリセン技】やな。聖ハリセン使って叩いてみれば岩を粉砕し、広げて一刃したら木々を余裕で両断した。おいいい!!!
【槍技】に関しても聖槍使って軽く突けば岩を粉砕し、おまけに衝撃波で砕けた破片を砂に変える…俺もフォルクもビックリし過ぎて固まったわ。
あかん…確認すればする程、精神力が削られるのが神様クオリティ!
てか、たまたま平和ボケしてる人種やったから良かったけど、戦闘狂とかがこれ持ってたら世界が滅ぶぞ!て、涙目になった。
もう今日はムリぽって状態になったんで休憩で余計に疲れた俺は安心できるフォルクの背に戻りつつ、案外ボス倒せるんかな?と光明も同時に感じてた。
んで、スキル確認を途中で挫折したんで話を切り替える。
神様は『理』関係に口が重いし、フォルクに確認したい事もあったんで、申し訳ないけどエーベルさんの事情を掻い摘んで説明し、そんな『理』を知ってるか聞いてみた。
すると、フォルクは首を振った。全く知らんと聞いた事もないと…逆にその『理』はなんやと詳しく状況を聞き返してくる程やった。
フォルクやエーベルさんが嘘をつくとも思えんし、どちらも本当やと考えると…全員にこの現象が起こるとは限らんて事が一番有力かもしれん。
状態異常も全員やないって言ってたから…原理があるんかどうかは正直分からんが、フォルクは逃れ、エーベルさんは捕まったって感じか。
一応の見解を話すとフォルクも納得してくれたんか、追求を止めてエーベルさんの身を、フェイがいるとは言え案じてた。
『黒の民』に関してはフォルクも知ってるし聞こうかとも思ってんけど、神様渋ってたしな…と脳裏を掠めて今回は止める事にする。
いずれ訪れる国やろうし、嫌でも事情は分かるんちゃうかって、急がんでええかとも思う。
今の所、聞きたい話はこんなもんかと脳内整理してると、国境線沿いに近づいて来てフォルクが走ってたスピードを緩め出した。
通行を確認する官署があるとかで、そこで『紋印』出してフォルクは従魔として、俺も旅人やけど一応身元はしっかりしてまっせと正式に入国しようって話になってた。
『紋印』無かったら空から不法侵入やったから…皇帝様にはほんま感謝です!
疚しいところもなく気持ち良く通過するで~と、機嫌良く官署に更に接近したら異様な光景に完全に立ち止まる事になった。
潰された詰所らしき建物と、どう見ても大量の血が隆起した地面に染み込んだ跡。只、死体はない…考えられるんは…と、勝手に想像が進んで吐き気を覚え、咄嗟に口元を抑える。
「…うっ……。」
「ダイチ、俺ノ背ニシガミツイテ、目ヲ閉ジテイロ。無理ニ見ル必要ハナイ。」
頼もしいフォルクの言葉に素直に頷いた。これ以上、直視してても迷惑掛けるだけや。
俺はフォルクの鬣に顔を埋め、胴体にグッと両腕を回して視界を遮断した。太陽みたいな匂いに包まれ、体温と脈拍の鼓動に幾分落ち着けた。
「一気ニ通リ抜ケルカラ、振リ落トサレルナヨ。」
宣言通り、風になった様な錯覚を覚えるスピードで走り抜けた感覚が伝わる。
暫く振動が伝わり、動きが止まった頃に顔を上げると開けた街道の真ん中、周囲の畑みたいなんは荒れてるけど血の跡も臭いもない所におった。
「ごめんな…フォルク、ビックリしてもて…。」
「気ニスルナ。見慣レテイナイノダロウ?気分ガ良イモノデモナイ、当タリ前ノ反応ダ。」
慰めてくれる優しさと安堵感に肩から力が抜け、冷静に状況を考えられる思考が戻って来る。
「あれ、魔獣に襲われたんやでな…。」
「恐ラク。昔、襲ワレタ村ト状況ガ似テイタ…。」
「実際に見るとこんなに衝撃受けるもんか…。」
『緑の国』が平和やった分、甘く見てたと言っていい。フォルクが嘆願したのも分かるような状況やった。
アレがあっての努力と犠牲を払っての平和やってんな…頭が下がる思いや。
「フォルクがいてくれて、ほんまに良かった…俺だけやったら先に進めんかったかも…。」
「ソレハ、コチラモ同ジダ…ダイチガイナケレバ、俺モ先ニハ進メナカッタ。」
気持ちが重なった事が嬉しくて、お互いに思わず笑みが溢れた。
そして、ゆっくり歩き出したフォルクの背に掴まりながら周囲を確認する。
右手は山脈や大森林程ではないけど森が広がり、左手には広大な農地があったと思われる場所、あちこち荒れ果てて、掘り返された跡や作物が枯れた残骸があった。
勿論、人の姿なんかは無く、何年も放置されてるって印象を受ける。
「ここにおった人らは何処にいったんやろうか…?」
「…生キテイレバ街ニ逃ゲタノデハナイダロウカ?少ナクトモ、城壁ガアルダロウカラ…無事デアレバ良イナ…。」
「そうか…。」
何とも言えん状況に気落ちしつつも、落ち込んでるだけやったらどないしょうも無いんで、とにかく街道が続く限り先に進む事にした。進んでたら何かしらに出会えると思うしな。
そうして、【索敵】を念の為に使いながらフォルクに少し急いで貰いつつ駆け出す。
どれくらい進んだやろうか、村の残骸を幾つも発見し、日も傾き始めて野宿する所も考えななって所やった。
いきなりスクリーンに尋常でない数の『赤の丸』が出現して、おまけに『青の丸』も何個かそれに囲まれるように映る。でも、何故か色が綺麗な青だけでなく数名くすんでるし、状態異常のマークも見えた。
ヤバイんちゃうやろか!?俺は無意識に叫んでた。
「フォルク!この先、敵がめっちゃおるし、誰か囲まれてる!早くせな死んでまうかも!」
「分カッタ!飛ンデ囲マレテイル者ノ近クニ降リ立ツ!着イタラ、直グニ結界ヲ張ッテクレ!」
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