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1.5章 会合
No.9 ナクシャ
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「よっと、ただ今帰りましたー!」
「ナクシャ」
「おっ、ラヴェイラじゃん!久しぶりー!」
「チッ、うるさいのがきた…」
「あ、ヴァルハーレ。…あれ、他にいないの?レブキーもいないなんて、珍しくない?」
「ゲンブとレブキーもいますよ。」
「レブキーはゼスタート様に頼まれたものを開発している。ずっと部屋にこもりっきりだ。」
「ふーん、ゲンブは?」
「知るか。」
「…ねえ、ヴァルハーレ。オレ会いたい奴がいるんだけど。」
「ゼスタート様なら、いつもの場所だ。」
「ゼスタート様の用事はもう終わったよ。って、違う違う。ヴァルハーレ。わかってるクセに。」
「他に誰がいると言うのだ。」
「もー、もったいぶらずに教えてよー。黒い氷を使う、ヨロイのデベルクのこと。」
「キサマ…!」
「ナクシャ…あなたなぜ…!?」
「オレの情報収集力…ナメないでよね。オレの記憶が正しいと…シニガミ以来じゃない?消滅せずに地球から戻ってこれたのって。そこから一度も地球に来てないってことは、ここにいるよね。」
「…。」
「ゲンブがいないってことは…彼とゲンブが一緒かな♪」
「…お前、地球で一体なにをやっている?お前とあいつだけだ。何をしているのか、動向が掴めないのは。」
「ねえ…それ、お前に教える必要…ある?」
口元を緩ませているのに反し、ナクシャの目は笑っていなかった。
その返答を聞いたヴァルハーレの瞳孔が開いた。
そして---
バチバチバチバチバチヴァチヴァチヴァチチチチチチチチ!!!!!
2人の気迫とオーラが、ぶつかりあったっ!!!
「やめてください。ここが壊れたらどうするんですか。」
「チッ…」
「ハァ…」
「ナクシャ、フェルゴールならエクスペリエンスルームです。」
「ラヴェイラ、なぜ!」
「彼はすでに知っていますし、隠しても無駄かと。それに遅かれ早かれいずれ皆に知られます。なにより--」
「なんだ?」
「フェルゴールが会いたがっていましたので。他のヒトケタに。」
「…そうか。なら何も言うまい。」
♢♢♢
エンディン船内
エクスペリエンスルーム
『今の!ヴァルハーレと、誰だ…!』
「ふむ…」
(ナクシャが…帰ってきたみたいじゃの)
「気にするな。いずれわかる。」
『そう、か。』
「どれ、ワシらも…」
『ふっ!』
「しぃっ!!」
ゲンブ流の組手や殺法を高速でやっていく2人。
バシィ
『くっ…!』
「甘いわ!」
『せぇ!』
「まだじゃ!」
『はあっ!!』
ガシッ
ギュォッ
バシィ
パッ
びゅぉっ!
「止め!」
『うっ!』
「力み過ぎじゃ。」
『すいません、ありがとうございます…』
パチ、パチ、パチ、
乱雑な拍手がエクスペリエンスルームに木霊した。
「へえ、キミが例の…黒い氷の能力を使う、ヨロイのデベルクかぁ。」
銀髪の頭に尖った耳を持ち、九つの尾を生やした青年がニコニコと笑顔で近づいてきた。
♢♢♢
「ナクシャ!」
(なるほど、こいつも化け物だ…!)
9本の尻尾を持ち、顔の両頬に隈取りのような赤いラインが入っていた。
「くぁぁ…!こいつには、フェルゴールのこと…知られたくなかったわ…」
「…え、なんで。みんな酷くない?なんで?そんなただのデベルクひた隠すの?」
「彼が特別だからよ」
『ラヴェイラ、ヴァルハーレ。』
「あなた、今私がそう言ってなければ…ヴァルハーレとゲンブがあなたに襲いかかったわよ。」
「ラヴェイラ…!お主か、ここを教えたのは。」
「ラヴェイラが言うには、フェルゴールが私達以外のヒトケタに会いたかったそうだ。」
「フェルゴール、このヒトケタはNo.9 ナクシャ。地球で何をしてるのか、全くわからないヒトケタです。」
『…さっきの気迫とオーラの正体ですか…』
ボウッとフェルゴールから気迫とオーラが噴き出した。
『あなたの実力を推し量る、そして自分の今の実力を…確認するのに、いい相手かもしれない…!』
「あれ…舐められてる、感じ?」
(なんやかんやで、フェルゴールはワシら全員と戦っておるからのう…)
(他のヒトケタに会いたいっていうのは…こういうことか。面白い。)
「どこまでできるか…見せてもらうぞ、フェルゴール。」
「うむ…」
「ははっ」
不意にナクシャが笑った声を出した。
「あのさぁ…オーラっていうのは、気迫っていうのは…こうやって出すんだよ!!」
ギュオオオオオ!!
フェルゴールよりも強く、大きいオーラと気迫が噴き出した。
(やってやる…!)
ダン、
仕掛けたのは、フェルゴール
一瞬で間合いを詰めた。
だが、
ドンという衝撃音と共に吹っ飛んだのはフェルゴールだった。
ナクシャの腕からは、煙が出ていた。
ナクシャが腕を振り下ろした。
その瞬間、斬撃のようなものが飛び出した。
『ちっ…!』
ガキィン
フェルゴールが黒い氷のシールドで防ぐ。
ナクシャは軽くステップを踏み出し、シャドウでフェルゴールの方へ、ラッシュを繰り出す。
今度は先程の斬撃とは違い、いくつもの弾丸のような空弾が放たれた。
再びシールドを展開した。フェルゴールは、全身にオーラを纏った。そして見えたのは、彼が強く濃いオーラを身に纏っていたということ。
そして理解した。彼の使う能力は気功術のような、その身に纏ったオーラを変幻自在に操って攻撃を繰り出す、他のヒトケタとは違う能力を持った異端児だということを。
『黒氷数多』
ヒュウウウウウウウ…
フェルゴールの一際強いオーラが、冷気へと変わっていく。
『槍』
たちまち冷気が100本の黒い氷の槍となり、刃がナクシャに狙いをつけた。
パチンとフェルゴールが指を鳴らすと、槍はナクシャ目掛けて飛んでいく…!
ポウッ…ギューン…
『っ!?』
「出たぞ、ナクシャの…」
「霊気球体」
『なに…!?』
いくつもの黒氷の槍は、灰塵となり、消えていった。
(遠距離戦はダメか…なら!)
ピン…
フェルゴールがコイントスのように何かを上に放った。
「アレは…」
「カプセルアームズか!」
やがてカプセルは宙で大鎌となった。
「シニガミの…!」
「違いマス!」
「『シニガミの』ではありません!アレはフェルゴールのカプセルアームズ!」
--『シニガミとフェルゴールを比べてはならぬ。フェルゴールは、シニガミとは同じデベルクでも、違う。事実、シニガミと違い、フェルゴールは私に忠誠を誓った。フェルゴールは地球人から受けた痛みを知り、我々と共有している。シニガミと一緒にしてはならぬ。フェルゴールはフェルゴールだ。』
(アナタの仰ることが正しいのなら、きっとあのアームズの変化も運命なのデショウ…!)
「まだ完成ではないですが…見せてあげなさい!あなたのカプセルアームズ…
“黒”氷河の大鎌---!
「アレが…」
「フェルゴールの、」
「カプセルアームズ…」
『黒の銀盤』
パキン
「おっと、」
タタタン…
すぐさま4人が飛び上がり各々の方法で回避した。
ヴァルハーレとラヴェイラは風を使って浮遊し、ゲンブとナクシャも高く飛び上がった。
そして問題ないことが分かると、ゲンブとナクシャは地に降りた。
すると、部屋には傷1つない壁床一面に黒いスケートリンクが現れた。
シャアアアアアアッ
壁を滑り、大鎌を携えナクシャに斬りかかった。
「シッ!」
ボン!
と大きな気弾が放たれたが、それは氷壁に防がれた。
(読んでるよ、それは!)
“黒”氷河の大鎌の黒い刃がギラリと光る。
(もらった!)
ドンッ!
『カハッ…!』
背後から翼を広げ、武装した女性を冠した巨大な盾が背後から突進した。
とてつもない衝撃が襲い来た。
(く…!巨大な…盾…!?目の前にも…!?)
「戦女神の大楯・二重奏」
盾が迫って…いや押されて…!
まずいッ!
「Shut!」
ガキィン
「潰れた!?」
「いや…」
「上じゃ」
『はぁ…はぁ…!』
『アレが…ナクシャのカプセルアームズ…』
「ふむ、面倒じゃな…」
「そうだな…あれがあってこそのナクシャの“絶対防御”だからな。」
「ナクシャのカプセルアームズ『戦女神の大楯』、複数の浮遊型の盾を操り、攻撃も防御も行う万能武器デス。」
「さて、どう潜り抜ける?」
『く…』
「スキだらけっ!」
(霊気連弾!)
ドドドド…と無数の拳の形をした光弾がフェルゴールに襲いかかる…!
あ、無理だ…!!
威力を落とすだけでも…!
『黒氷数多・盾!!』
パキン、パキンと次々に黒氷盾が砕け散る。
そして---
『があああああああ!』
(どうする!?どうすれば…)
『…』
(くそっ、すぐ疲れるんだけど…仕方ない!)
『やるしか…ない。』
ギュウウウウウンと一際オーラが強くなる。だが、そのオーラは小さくなり、左右の手には強く輝く漆黒があった。そして、フェルゴールは切り札を発動した。
『黒氷の質』
黒い雪の結晶が2つ出現した。
『く、まだ2つしか出せない…か…』
「?」
『黒の氷鏡』
2つの冷気を纏った黒い鏡が現れた。
側から見ればただ黒い鏡である。
そして1つの鏡はスゥーっと消えた。
「なにをしようとしてるのか知らないけど、それ壊せばお前の狙いも終わりでしょ?」
(霊気弾)
速い!
すぐさまフェルゴールは黒い鏡の中に入った。
鏡に当たった霊気弾は、反射してナクシャにの右側を通り抜けた。
「!」
「消えた…?」
「いや、あの中に入った…!」
「一体、どんな能力なのか…」
スッ
ガキィン
「えっ…!」
(鏡の中から…!?)
「戦女神の大楯・独奏Guard!」
(間に合え!)
ドンと
強い衝撃が横から襲いかかった。
(が…!だが…
狙い通り!)
しかし、一撃入るより
ナクシャの反応速度が上回った。
チッ
「ふぅ…!」
(かすった、だけか…!)
「戦女神の大楯・三重奏…!」
ナクシャから強いオーラが吹き出す。
だが、彼はとっさに3つの盾をカプセルに戻した。
「やめた」
『え…?』
「「「は!?」」」
「ふぅ…その鎌ホント嫌い…!疲れた…」
『なんで…』
「聞いてないの、レブキーから…」
--シニガミが持つと普通の大鎌から姿を変え、相手の生命力やエネルギーを一気に吸収できマスが、持ち主の生命エネルギーやグラッヂまで吸収する問題児。私が創り始めた頃に開発した武器なので仕方ないデスネ。
『あ…!』
「あのバカのシニガミじゃなくても適合してんなら、そのアームズの能力も十分発揮されるってこと…念頭になかったわ。」
「あーあ、遊ぶだけのつもりだったんだけど…いやー思った以上だった!ただのデベルクだって思ってたオレがバカだった!ヴァルハーレとゲンブの考えもわかるなあ。」
「っていうわけで、オレはナクシャ。
よろしくな、フェル。」
ナクシャが手を差し出したので、フェルゴールはそれに応じて握手した。
『なんですか、フェルって。俺、フェルゴールなんですけど。』
「名前長えよ。」
『ヴァルハーレも長いでしょう!?』
「ヴァルハーレにヴァルって呼んだら本気で怒られたから二度と呼ばない。」
『この…!』
「いいじゃん、俺の方が生きてるんだから。それともお兄様とでも呼ぶか?地球では年上の兄弟をそう呼ぶんだろ?」
『おかしいだろ!なんだその変な知識!』
ナクシャはふはっと笑って、フェルゴールの頭を撫でた。
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