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1章 誕生
最後の勇姿
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デートである。
…デートだよね?
よくわからないけど、恋人同士でもないけど、これはデートだ!…と思いたい。
高校が早く終わった昼下がり。
僕は幼馴染の東雲 依桜と一緒にいる。
向かう先は川沿いにできたドーナツ屋さん。最近新しくできたところだ。
ドーナツ屋を見つけてきたのは依桜ちゃんの方だ。
僕がドーナツ好きなのを知っていたから…というのもあるが、実際行きたがっていたのは依桜ちゃんの方だった。
なんというか…かっこいいくせに甘いものが好きだったり、可愛いものが好きだった。
そういうところが僕は好きだ。
そんなところを見るたびになんていうか…胸がきゅうってなる。可愛いって思う。顔が熱くなる。
…そうです。好きです。
彼女のことが大好きです。
けれど、未だに告白出来ていません。
依桜ちゃんと喋っている男子を見るたびにイライラしたり、気になったりするし、他の子が依桜ちゃんの話をすると、自分のことでもないのに顔が赤くなるし、他の男子が依桜ちゃんの話をすると複雑な気持ちになる。
そんな風にやきもきするくらいなら、告白して付き合うか、振られてこの心苦しさに踏ん切りをつけた方が楽なのだろう。
わかっている。わかっているけれど、なかなかできない。僕は簡単に告白できる度胸はないし、自分の気持ちを周りに伝わるくらい表情豊かな人じゃない…と思う。告白する度胸の前に不安が邪魔する。
振られたらどうしよう
振られたら今まで通りの関係でいられるのか
もし付き合えたとしても、今まで通りでいられるのか
そんな側から見たら馬鹿馬鹿しいと思える悩みを引きずってもう何十日いや、何ヶ月だろう。
そして今日も『告白しよう』と毎日のように心の内で思うのだった。
♢♢♢
「ねえ、どうしたの。彩くん。大丈夫?顎に手を当てて…考え事?」
あ、あはは…ごめんごめん。」
「大丈夫ならいいけど…すぐに謝るのはやめた方がいいと何度も言ってるでしょ。悪いクセ抜けてないよ。」
「あ、あはは…は…」
頭が上がらない上に図星である。
我ながら情け無いと思う。
「ダメだなあ…僕は。」
ポツリと口から思ったことが口に出た。
「そうかな?私は、そう思わないけど。」
「…なんでそう…思うの?」
「ずっと見てきたから。分かるよ。」
「…っ!」
「私はどんな時でも彩くんのこと、ずっとずっと見てたから。頑張ってきた彩くんを。これからもずっと彩くんを見てる。彩くんががどんなに変わっても、彩くんが自分を信じられなくなっても、私は彩くんのそばでずっと見続ける。」
ダメだ。
嬉しくて、顔が熱くなっているのが分かる。
一瞬で顔が赤くなったのを悟って視線を逸らした。
「?ねえ、なんで目を逸らすの?」
「な…なんでもない…!」
「嘘。何もない訳ない。」
「なんで決めつけるの!?」
「分かるに決まってんでしょ。どれだけあなたと一緒にいたと思ってるの?」
「なんでもないから!」
「嘘!絶対何かある!私何かした?それとも彩くんが何かやったの!?ねえ!」
キッと睨むように依桜ちゃんは僕を見た。目は少し潤んでいる。
どうしよう…多分いや、絶対怒ってる…
どうしよう、どうすれば…えっと、えっと、えっと…
「答えて!」
ああ!もう!!
「好きな人にそう言われたら照れるじゃんか!!」
…。
…………。
いっ…言っちゃったああああ!
どっどうしよう!
「あ、えと、これは…」
「彩くん…今の、どういう…」
「…ええと…」
もう、ここまで来たんだ…言ってしまったものは仕方ない!
「僕は依桜ちゃんが好きです…僕の彼女になってくださいっ!!!」
言った…
言ったぞ…
結果はどうであれ、後悔は無い。
ちゃんの顔が赤くなった。
そしてドギマギしながら僕に問うた。
「あ、さっ、さささ彩くん…今、すすすす好きって…。」
「はい、すっ、好きです。」
「それって告白っ…」
「はい、告白…です。」
「そ、そそうです、か…」
彼女は髪をかきあげて、スキップして僕の先を行く。
「あの…へっ返事は…!」
返事をまだ聞いていない。
待って。
そう思って彼女を追いかけて行った。
「返事は----。」
そう言いかけた時、音沙汰もなく自分の背後に何者が現れた。
『到着かぁ…しかし、ここどこだ?』
その声を聞いた瞬間、ゾクッと悪寒が走った。
それだけで、自分の後ろにいる存在が同じ人間ではないと、わかってしまった。
冷や汗がドッと吹き出した。
「ッ!なんだ…こいつ…!」
バケモノ ---
その言葉を体現したような奴が、目の前にいた。全身が真っ黒のロボットみたいで、目が一つ目でガラス玉の様に透き通っている。体躯は明らかに人間離れしている。左胸の心臓の位置には、紅い血のような色で『30』とあり、この化け物の左手は長い銃身の様になっていた。
『げっ、チキュウジンか!?クソッタレ!!』
一つ目の化け物が舌打ちをし、依桜ちゃんを目に捉えた。
僕は化け物が依桜ちゃんを目に捉えることがわかっていたかのように、気づいたら走り出していた。
そして、化け物は左手の銃口を彼女に向けた。
「依桜ちゃんっっ!!!」
僕は依桜ちゃんを突き飛ばした。
化け物の銃口の先には僕がいた。
頭の中に今までの思い出がよぎる。
全部、全部
生まれてから、今日までの思い出が
………
父さん、母さん、ごめん
パァン
………
ああ…最後に…返事、聞かせて、欲しかったなあ………
死にたくない…
死にたくない。
死にたくない、
死にたくない
死にたく
死に
し
乾いた音が木霊した時には、僕の背は既に地面についていて、視界はもう真っ暗になっていた。
空が曇り、雨が降り始めた。
…デートだよね?
よくわからないけど、恋人同士でもないけど、これはデートだ!…と思いたい。
高校が早く終わった昼下がり。
僕は幼馴染の東雲 依桜と一緒にいる。
向かう先は川沿いにできたドーナツ屋さん。最近新しくできたところだ。
ドーナツ屋を見つけてきたのは依桜ちゃんの方だ。
僕がドーナツ好きなのを知っていたから…というのもあるが、実際行きたがっていたのは依桜ちゃんの方だった。
なんというか…かっこいいくせに甘いものが好きだったり、可愛いものが好きだった。
そういうところが僕は好きだ。
そんなところを見るたびになんていうか…胸がきゅうってなる。可愛いって思う。顔が熱くなる。
…そうです。好きです。
彼女のことが大好きです。
けれど、未だに告白出来ていません。
依桜ちゃんと喋っている男子を見るたびにイライラしたり、気になったりするし、他の子が依桜ちゃんの話をすると、自分のことでもないのに顔が赤くなるし、他の男子が依桜ちゃんの話をすると複雑な気持ちになる。
そんな風にやきもきするくらいなら、告白して付き合うか、振られてこの心苦しさに踏ん切りをつけた方が楽なのだろう。
わかっている。わかっているけれど、なかなかできない。僕は簡単に告白できる度胸はないし、自分の気持ちを周りに伝わるくらい表情豊かな人じゃない…と思う。告白する度胸の前に不安が邪魔する。
振られたらどうしよう
振られたら今まで通りの関係でいられるのか
もし付き合えたとしても、今まで通りでいられるのか
そんな側から見たら馬鹿馬鹿しいと思える悩みを引きずってもう何十日いや、何ヶ月だろう。
そして今日も『告白しよう』と毎日のように心の内で思うのだった。
♢♢♢
「ねえ、どうしたの。彩くん。大丈夫?顎に手を当てて…考え事?」
あ、あはは…ごめんごめん。」
「大丈夫ならいいけど…すぐに謝るのはやめた方がいいと何度も言ってるでしょ。悪いクセ抜けてないよ。」
「あ、あはは…は…」
頭が上がらない上に図星である。
我ながら情け無いと思う。
「ダメだなあ…僕は。」
ポツリと口から思ったことが口に出た。
「そうかな?私は、そう思わないけど。」
「…なんでそう…思うの?」
「ずっと見てきたから。分かるよ。」
「…っ!」
「私はどんな時でも彩くんのこと、ずっとずっと見てたから。頑張ってきた彩くんを。これからもずっと彩くんを見てる。彩くんががどんなに変わっても、彩くんが自分を信じられなくなっても、私は彩くんのそばでずっと見続ける。」
ダメだ。
嬉しくて、顔が熱くなっているのが分かる。
一瞬で顔が赤くなったのを悟って視線を逸らした。
「?ねえ、なんで目を逸らすの?」
「な…なんでもない…!」
「嘘。何もない訳ない。」
「なんで決めつけるの!?」
「分かるに決まってんでしょ。どれだけあなたと一緒にいたと思ってるの?」
「なんでもないから!」
「嘘!絶対何かある!私何かした?それとも彩くんが何かやったの!?ねえ!」
キッと睨むように依桜ちゃんは僕を見た。目は少し潤んでいる。
どうしよう…多分いや、絶対怒ってる…
どうしよう、どうすれば…えっと、えっと、えっと…
「答えて!」
ああ!もう!!
「好きな人にそう言われたら照れるじゃんか!!」
…。
…………。
いっ…言っちゃったああああ!
どっどうしよう!
「あ、えと、これは…」
「彩くん…今の、どういう…」
「…ええと…」
もう、ここまで来たんだ…言ってしまったものは仕方ない!
「僕は依桜ちゃんが好きです…僕の彼女になってくださいっ!!!」
言った…
言ったぞ…
結果はどうであれ、後悔は無い。
ちゃんの顔が赤くなった。
そしてドギマギしながら僕に問うた。
「あ、さっ、さささ彩くん…今、すすすす好きって…。」
「はい、すっ、好きです。」
「それって告白っ…」
「はい、告白…です。」
「そ、そそうです、か…」
彼女は髪をかきあげて、スキップして僕の先を行く。
「あの…へっ返事は…!」
返事をまだ聞いていない。
待って。
そう思って彼女を追いかけて行った。
「返事は----。」
そう言いかけた時、音沙汰もなく自分の背後に何者が現れた。
『到着かぁ…しかし、ここどこだ?』
その声を聞いた瞬間、ゾクッと悪寒が走った。
それだけで、自分の後ろにいる存在が同じ人間ではないと、わかってしまった。
冷や汗がドッと吹き出した。
「ッ!なんだ…こいつ…!」
バケモノ ---
その言葉を体現したような奴が、目の前にいた。全身が真っ黒のロボットみたいで、目が一つ目でガラス玉の様に透き通っている。体躯は明らかに人間離れしている。左胸の心臓の位置には、紅い血のような色で『30』とあり、この化け物の左手は長い銃身の様になっていた。
『げっ、チキュウジンか!?クソッタレ!!』
一つ目の化け物が舌打ちをし、依桜ちゃんを目に捉えた。
僕は化け物が依桜ちゃんを目に捉えることがわかっていたかのように、気づいたら走り出していた。
そして、化け物は左手の銃口を彼女に向けた。
「依桜ちゃんっっ!!!」
僕は依桜ちゃんを突き飛ばした。
化け物の銃口の先には僕がいた。
頭の中に今までの思い出がよぎる。
全部、全部
生まれてから、今日までの思い出が
………
父さん、母さん、ごめん
パァン
………
ああ…最後に…返事、聞かせて、欲しかったなあ………
死にたくない…
死にたくない。
死にたくない、
死にたくない
死にたく
死に
し
乾いた音が木霊した時には、僕の背は既に地面についていて、視界はもう真っ暗になっていた。
空が曇り、雨が降り始めた。
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「VS Heroes-Who is justice?-」の7話を投稿しました。もう少しで1章が終わります。拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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