悪役令嬢は可愛いものがお好き

梓弓

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第一章

25

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ギルバートさんは商会の長をしているため、各地にある商会に所属している店を見て回っているそうです。

話を聞いていると、私がよく知っているお店の名前も何軒か出てきました。

私が知らなかっただけで、ギルバートさんの経営するお店に行っていた事が分かりました。

「実は意外にギルバートさんのお店に行っていたみたいですね。」

「そのようですね。ローゼット家のお方に利用していただけるなんて、とてもありがたいことです。」

「ギル殿は大袈裟だなぁ。」

ギルバートさんはとても嬉しそうに笑顔で言い、祖父はそれに苦笑しています。

「ところでギル殿。また新しいアンティーク品を買ったのだが。」

「ふふ。ローゼット殿は相変わらずですね。」

「それはお互い様じゃないかな?聞いたよ。商会の本部にまたアンティークの家具が増えたとか。」

「良くご存じで。」

ギルバートさんは苦笑いしています。

「まあそれはともかく、せっかく我が家に来たのだから見て行くかい?」

「はい。ぜひ見せて下さい。」

「じゃあ、早速案内するよ。」

「お願いします。……では、ひとまず失礼しますね。」

ギルバートさんはこちらの方を向いて会釈すると、祖父とともにアンティークを見に行ってしまいました。

「……さ、ギルバートさんに挨拶も済んだ事だし、そろそろ帰り支度を始めた方が良いかもしれないわねぇ。」

と、祖母が言ってきました。

私達は昼食をここでとった後、自宅に帰る事になっています。

「そうですね。荷物をまとめてきます。」

「お土産も忘れないようにしなくちゃいけませんね!」

「ふふ、そうね。お父様やお母様達に喜んで貰う為にもね。」


そして荷物がまとめ終わった頃、ちょうど昼食の時間になりました。

メイドさんに連れられて食堂に着いた時にはもう、私とフィリア以外のみんなは席についていました。
ちなみにギルバートさんも昼食に招いたそうです。

「よし、全員揃ったな。ではいただこうか。ギル殿も遠慮せずに食べてくれ。」

「はい。……でも昼食までご馳走になるなんて、なんだか申し訳ないです。」

「はは。そう固くなるなよ。」

祖父の言葉に、ギルバートさんは恐縮しています。

「さ、シオンもフィリアも。帰りにお腹が空かないように、しっかり食べるんだよ。」

「はい。」

「はーい。」

祖父はこちらを向いてニコニコしながら私達に言ってきました。

「あ、お二人は今日お帰りになるのですか?」

ギルバートさんは食事をしている手を止め、聞いてきました。

「はい。昼食を食べたら帰ります。」

「そうですか……。申し訳ありません。せっかくの家族団欒にお邪魔してしまったのですね。」

私の返事にギルバートさんは少し眉を下げて言いました。

「ギルバートさん。気にしないで下さい。」

「そうだよ。寧ろ、ちょうど君をこの子達に紹介できたんだから、良かったのだよ。」

「そう、ですか?それなら良いのですが……」

私があわててフォローしようとした時、祖父が上手く納めてくれました。

その後はまた和やかな雰囲気に戻り、今回の滞在で最後の食事は過ぎていったのでした。
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