悪役令嬢は可愛いものがお好き

梓弓

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第一章

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お買い物をしてから三日経ち、カイト様とスイーツデコをする日がやって来ました。
カイト様はこちらが指定した午前九時より少し前に、我が家へ到着しました。

「おはようございます。いらっしゃいませ、カイト様。」

「おはよう、シオンさん。こちらこそお邪魔するよ。今日は宜しくね。」

「はい。お任せ下さいな。」

私とカイト様はお互い笑顔で挨拶しあった後、私の案内で自室へと向かいました。

「…そういえば、随分と早いお返事でびっくりしました。」

「はは、そうだね。帰ってからすぐに予定を確認したからさ。」

「そうでしたか。私は昨日と一昨日は歴史の講師の方が来たりダンスのレッスンがあったのですが、カイト様も昨日と一昨日はご予定があったのですよね?」

「うん。一昨日は政治の講師が来て、昨日は護身術の講師が来たんだ。」

カイト様は私の隣を歩きつつ答えます。

「護身術は私も学んでいますが、もう政治を学ばれているんですね。」

「基本的に宰相はザイール家の世襲だからね。僕、将来は父を継ぐ事になってるし、政治はちゃんと学んでおきたいと思って。」

「なるほど…」

確かに宰相はザイール家が世襲する事になっているので将来はカイト様がこの国を支える宰相なのですよね。

(カイト様はまだ十歳だというのに、本当に頭が下がりますね。)

などと思っているとカイト様が、

「ところで昨日はダンスレッスンだったみたいだね。」

と、あまり聞いて欲しくない話題を降ってきました。

ダンスはどうにも苦手で、社交ダンスは前世にテレビや映画で観たりするのは好きでしたが、いざ自分でやるとなると、なのですよね。ただ、シオンのスペックのお陰かなんとか様になっているのでまだ良いのですが…。

「ええと、はい。そろそろ社交の場に出る事になりますので、ダンスのレッスンを本格的に始めました。」

「あ、ダンスはまだ始めたばかりなんだ。」

「はい。なので、皆さんにお見せ出来る位になるまではかなりダンスレッスンがあるそうです…。曲がりなりにも伯爵家の娘ですからね。」

と、少し苦笑いしながら答えました。

「そっか。僕は父に言われたからもう数年前からダンスを習っているんだけど、時間ある時は良ければ練習相手になろうか?」

「…練習相手ですか?」

「うん。どっちにしろこれからは僕とダンスを踊る事になるんだし今は僕もシオンさんと背もそれ程違わないからさ。練習相手にはちょうど良いんじゃないか?」

と、カイト様は私に爽やかな笑顔を向けて提案して来ました。

(確かにダンスの講師は大人の方ですから今はまだ私と同じ位の背のカイト様は踊り易いとは思いますが…)

「まだまだ初心者なので、カイト様にお相手して頂くのは申し訳無いのですが…。」

私は申し訳無く思いつつ答えたのですが、

「申し訳無くないさ。むしろシオンさんに頼って欲しいし。これでも僕は君の婚約者だからね。たまには格好付けさせて。」

とカイト様は言って急に立ち止まると、私の片手を取って跪き、ダンスを申し込む時のポーズをして、ニッコリと笑顔で返して来ました。

「は、はい。お願いします…。」

「うん、決まりだね。」

私が戸惑いつつ返すとカイト様は満足そうに頷き、立ち上がってまた私の隣へ来ました。
そして私は手を取られたまま、自室へ向かう事になったのでした。

…カイト様に急に片手を取られて跪かれた時に少しドキっとしたのは秘密です。
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