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死刑執行 ギロチン台へ

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ワゴン車に乗せられ刑務所の牢へ。多くの罪人は突きつけられた刑に怯えながら最期の時を過ごしますが、私はぼんやりとこれからの自分を想像します。
「苦しい思いはせずに済むのね」
首を吊って息ができない苦しみを思いだし、楽に死ねることに安心します。
夕食はメザシの塩焼きとご飯。私にとっては贅沢な食事をすべて食べ、翌朝は目玉焼きに鯛の味噌汁。
「鯛なんて久しぶり・・・」
じっくり味わう私。
食器を下げられ待つこと一時間。廊下から看守の靴音がコツコツと響きます。靴音はだんだん大きくなり、そして私の牢の前で立ち止まり鍵が開けられ
「大塚早苗、出なさい」
少年のような幼げな顔の看守が命じ
「はい・・・」
静かに立ち上がり両手を差し出します。ガチャリと手錠をかけられ廊下を進み階段を降り地下へ。薄暗い通路の一番奥の扉が開かれると血の匂い・・・死の匂いが漂ってきます。目の前には大きなギロチン台が。
「入りなさい」
看守に命じられ足を踏み入れる私。見上げれば大きな刃は研がれたばかりで光っていて、その下の木製の台は赤黒く染み着いています。
「大塚早苗、これより殺人の罪で死刑を執行します」
「はい・・・」
肩を掴まれ仰向けに寝かされ鋭い刃を見つめます。ギロチン台が放つ血の匂いはあの日と同じ匂いで、首を斬り落とされ血を噴き出して死ぬ自分を想像します。看守は胸にベルトを巻き、腰も太もももきつく縛り付けます。作業を進める看守の姿に自分の死が刻一刻と近づくのを感じ涙がぽろりとほほに流れます。死ぬつもりだったのに、やっとあの子に会えるのに歯がカチカチ震えるのはなぜ・・・ 涙が止まらないのはどうして・・・
看守がレバーの前に立つと嗚咽を漏らし
「グズンッ・・・ グズンッ・・・・ 覚悟していたはずなのに・・・・・」
看守はポケットからハンカチを出してそっと涙を拭き
「刑は一瞬で終わります。痛みはありません。」
一瞬で死ぬ・・・・
情状が配慮されての処刑方法だと分かっているのに恐怖で手が震え手錠を鳴らし、
「楽に死ねる。あの子に会える。痛くない・・・ 痛くない・・・・」
自分に言い聞かせながら目をぎゅっと閉じ、カチャリと音がしてシュルシュルと刃が落ちる音で股間を小尿で濡らしてしまい・・・
ガタンッ!
鈍い痛みとともに落ちていくのを感じ、
ゴトッ
床に転がりながら意識は永遠の闇に・・・・・

早苗の顔は白目を剥いて、ジャバジャバと血の流れる音が処刑室に響きます。
ピクッ・・・ ピクッ・・・
身体はわずかに痙攣し、心臓は弱々しく最期の鼓動を続けトクトクと血を流し続けます。
看守はじっと早苗の最期の姿を見つめています。脳へ送り込まれるはずの血は床に流れ、それでも心臓は動き、
トク・・・トク・・・・・トク・・・・・・・・・・
鼓動を終えたことを確認し
「10時34分、執行完了」
そっと手を合わせ、処刑室を去っていきます。
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