禁教の信徒 村のため処刑場に身を捧げる

菊池葵

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処刑人を命じられ

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太陽が沈みかけた頃、俺は上役の呼び出しを受け部屋に入る。
「お呼びでしょうか」
上役はいつもより厳めしい顔つきで
「慎之介、お主は槍の扱いが得意であったな」
「はっ、いささか心得がございます」
武士の基本は剣術。それ故、剣の腕を鍛える者は多く、その中で秀でることは難しい。しかし、槍は戦となれば大いに役立つが本腰を入れて稽古する者は少ない。武士といっても身分の低い大谷家の三男の俺が役目を頂くには学問か武術で秀でるしかない。
そう考えた俺は槍術の道場で必死に稽古し一番弟子となり、その腕を認められ村役人の地位につくことができた。
「ではお主に役目を命じる」
槍が上手だからといって戦でもないのに何の役目であろうか。まさか・・・
「先ほど捕らえた耶蘇教の娘、楓。この者の死罪が決まった。明日、河原の刑場で磔に処す」
「はっ・・・」
唇を噛みしめながら上役のさらなる言葉を待つ俺。
「慎之介、お主に処刑役を命じる」
この手で楓さんを・・・
できるはずがない。楓さんを殺すなんて。
何と申し上げて断ろうか考えていると
「できぬと申すか」
「そ、そのようなことは・・・」
お上の命令を断れば俺は村役人としての役目を失うだろう。そうなれば俺はどのように生きていけばよいか。それに、俺が断っても楓さんの運命は変わらない。誰か別の者の手で殺される。ならば俺がやっても同じではないか・・・
しばしの沈黙の後、
「承知・・・致しました」

悲痛な思いで詰所に座る俺は明日のことを考える。
鍛えた槍の腕を活かす初めての機会が楓さんを殺すこととは・・・
外は暗くなり、夕食に出た握り飯をぼんやりと食べていると、上役から地下牢の見張り番を命じられた。どんな顔して楓さんと会えばいいのか。
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