禁教の信徒 村のため処刑場に身を捧げる

菊池葵

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秘密の信仰

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鶏の鳴く声とともに目覚めた私は今日も畑に出て草とりをしながら大根や白菜の出来具合を確かめます。
かえで、そろそろ時間じゃぞ」
父上が呼ぶ声がして家に戻り、床板を持ち上げ十字架をとり長老の家に寄合へ。この十字架は私たちが信じている神様の教えの象徴。神の子イエス様の尊い犠牲の証。
幕府は耶蘇教やそきょうーキリスト教とも呼ばれているーを禁じていて、信徒だと分かれば死罪になることもあります。多くの信徒は信仰を捨ててしまいましたが、この村の人々は神様とイエス様の教えを忘れず、固い秘密の中で信仰を守っています。そして今日は七日に一度の礼拝の日。村人は寄合と称し長老の家に集まり、十字架を握りながらともに神様に祈りを捧げます。
決して広くはない家に30人の村人が集まり、窮屈な姿勢で座ります。すでにほとんどの村人が集まり、少し遅れて来たのは村役人の大谷慎之介おおたにしんのすけ様。私と同じ18歳で、凛々しい顔で真摯に祈る姿はとても素敵に思っています。
「遅れて申し訳ない」
そう言いながら家に入り、空いている場所は私の隣だけで、
「失礼」
と詫びて座り私と肩が触れ合います。
これは神様が与えてくださった好機なのでしょうか。私は顔を赤くし緊張して長老の言葉が耳に入りません。分かっています。私はただの農家の娘。慎之介様は立派なお侍様。釣り合うわけがありません。それでも、慎之介様の肩と触れ合えるこの時間を神様に感謝します。

寄合が終わり村人たちは帰っていき、私は正座が続いて脚がしびれなかなか立ち上がれず、やっとの思い出立ち上がるとふらついて慎之介様の胸元に倒れ込み
「大丈夫かい、楓さん」
「は、はい・・・」
慎之介様に抱かれているようで鼓動が高まるのを感じます。このまま慎之介様に身体を預けたい。だけど恥ずかしくて少し離れ
「すみません」
顔を赤くしながら長老の家を後にする楓。帰り道、慎之介様の引き締まった身体の硬さと温もりをを思い出しながらぼんやりと歩いています。大事な十字架を道に落としたことにも気づかずに。

家に帰り床板をめくり懐から十字架を出そうとすると無いことに気づき
「無い・・・ なぜ・・・・」
慌てて帰り道を戻り血眼になって探すが夕暮れ時になっても見つかりません。意気消沈で家に帰り父上と母上に告げると
「あれがお役人様に見つかれば・・・」
怯える母上。
父上は松明を出そうとするも夜中に目立つ振る舞いはかえって危険だと思い直し、明日は朝から家族皆で探すことにして眠れぬ夜を過ごします。
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