1 / 8
秘密の信仰
しおりを挟む
鶏の鳴く声とともに目覚めた私は今日も畑に出て草とりをしながら大根や白菜の出来具合を確かめます。
「楓、そろそろ時間じゃぞ」
父上が呼ぶ声がして家に戻り、床板を持ち上げ十字架をとり長老の家に寄合へ。この十字架は私たちが信じている神様の教えの象徴。神の子イエス様の尊い犠牲の証。
幕府は耶蘇教ーキリスト教とも呼ばれているーを禁じていて、信徒だと分かれば死罪になることもあります。多くの信徒は信仰を捨ててしまいましたが、この村の人々は神様とイエス様の教えを忘れず、固い秘密の中で信仰を守っています。そして今日は七日に一度の礼拝の日。村人は寄合と称し長老の家に集まり、十字架を握りながらともに神様に祈りを捧げます。
決して広くはない家に30人の村人が集まり、窮屈な姿勢で座ります。すでにほとんどの村人が集まり、少し遅れて来たのは村役人の大谷慎之介様。私と同じ18歳で、凛々しい顔で真摯に祈る姿はとても素敵に思っています。
「遅れて申し訳ない」
そう言いながら家に入り、空いている場所は私の隣だけで、
「失礼」
と詫びて座り私と肩が触れ合います。
これは神様が与えてくださった好機なのでしょうか。私は顔を赤くし緊張して長老の言葉が耳に入りません。分かっています。私はただの農家の娘。慎之介様は立派なお侍様。釣り合うわけがありません。それでも、慎之介様の肩と触れ合えるこの時間を神様に感謝します。
寄合が終わり村人たちは帰っていき、私は正座が続いて脚がしびれなかなか立ち上がれず、やっとの思い出立ち上がるとふらついて慎之介様の胸元に倒れ込み
「大丈夫かい、楓さん」
「は、はい・・・」
慎之介様に抱かれているようで鼓動が高まるのを感じます。このまま慎之介様に身体を預けたい。だけど恥ずかしくて少し離れ
「すみません」
顔を赤くしながら長老の家を後にする楓。帰り道、慎之介様の引き締まった身体の硬さと温もりをを思い出しながらぼんやりと歩いています。大事な十字架を道に落としたことにも気づかずに。
家に帰り床板をめくり懐から十字架を出そうとすると無いことに気づき
「無い・・・ なぜ・・・・」
慌てて帰り道を戻り血眼になって探すが夕暮れ時になっても見つかりません。意気消沈で家に帰り父上と母上に告げると
「あれがお役人様に見つかれば・・・」
怯える母上。
父上は松明を出そうとするも夜中に目立つ振る舞いはかえって危険だと思い直し、明日は朝から家族皆で探すことにして眠れぬ夜を過ごします。
「楓、そろそろ時間じゃぞ」
父上が呼ぶ声がして家に戻り、床板を持ち上げ十字架をとり長老の家に寄合へ。この十字架は私たちが信じている神様の教えの象徴。神の子イエス様の尊い犠牲の証。
幕府は耶蘇教ーキリスト教とも呼ばれているーを禁じていて、信徒だと分かれば死罪になることもあります。多くの信徒は信仰を捨ててしまいましたが、この村の人々は神様とイエス様の教えを忘れず、固い秘密の中で信仰を守っています。そして今日は七日に一度の礼拝の日。村人は寄合と称し長老の家に集まり、十字架を握りながらともに神様に祈りを捧げます。
決して広くはない家に30人の村人が集まり、窮屈な姿勢で座ります。すでにほとんどの村人が集まり、少し遅れて来たのは村役人の大谷慎之介様。私と同じ18歳で、凛々しい顔で真摯に祈る姿はとても素敵に思っています。
「遅れて申し訳ない」
そう言いながら家に入り、空いている場所は私の隣だけで、
「失礼」
と詫びて座り私と肩が触れ合います。
これは神様が与えてくださった好機なのでしょうか。私は顔を赤くし緊張して長老の言葉が耳に入りません。分かっています。私はただの農家の娘。慎之介様は立派なお侍様。釣り合うわけがありません。それでも、慎之介様の肩と触れ合えるこの時間を神様に感謝します。
寄合が終わり村人たちは帰っていき、私は正座が続いて脚がしびれなかなか立ち上がれず、やっとの思い出立ち上がるとふらついて慎之介様の胸元に倒れ込み
「大丈夫かい、楓さん」
「は、はい・・・」
慎之介様に抱かれているようで鼓動が高まるのを感じます。このまま慎之介様に身体を預けたい。だけど恥ずかしくて少し離れ
「すみません」
顔を赤くしながら長老の家を後にする楓。帰り道、慎之介様の引き締まった身体の硬さと温もりをを思い出しながらぼんやりと歩いています。大事な十字架を道に落としたことにも気づかずに。
家に帰り床板をめくり懐から十字架を出そうとすると無いことに気づき
「無い・・・ なぜ・・・・」
慌てて帰り道を戻り血眼になって探すが夕暮れ時になっても見つかりません。意気消沈で家に帰り父上と母上に告げると
「あれがお役人様に見つかれば・・・」
怯える母上。
父上は松明を出そうとするも夜中に目立つ振る舞いはかえって危険だと思い直し、明日は朝から家族皆で探すことにして眠れぬ夜を過ごします。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる