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20話 科目の使い分け 修繕費・消耗品費・減価償却費
しおりを挟む【修繕費】
「これも文字通りだね。バイクの修繕費は車両費にまとめたほうが計算が楽よ」
「じゃあ、修繕費にするものは、私にはなさそうですね」
「スマホの故障を直したら修繕費とか、そのくらいかな」
【消耗品費】
「10万円未満で物を買ったら消耗品費、ってやり方が多いかな」
「10万円を越えるとどうなるんですか」
「減価償却って計算よ。耐用年数に応じて費用化するの」
「どうやって計算するんですか?」
【減価償却費】
「一つが10万円以上の資産は、減価償却という計算になるの」
「げんか・・・しょうきゃく?」
「物の価値が減って、減価。帳簿の上で資産の金額を減らしてその分を経費にするのを償却っていうの。この経費のことを減価償却費というわ」
「・・・・」
「たとえば15万円で原付を買うとするでしょ」
「はい」
「原付の法定耐用年数は3年って決まっているから、15万円÷3年=5万円が一年間の費用になるの。実際の計算はもうちょっと複雑だけどね」
「15万円を払っても、15万円をその年の経費にしてはいけないんですね」
「その通り。いったん原付を資産に計上して、少しずつ減価償却費として経費にして、資産の金額を減らしていくの」
「でも、原付ってもっと長く使えないですか。友達は10年くらい乗ってるって言ってましたけど」
「実際に何年使えるかは関係なくて、法令で決まっているの。『減価償却資産の耐用年数等に関する省令』っていう、財務省が作った規則で」
「難しそうですね。計算も、年数で割り算するより、本当はもっと難しいんですか」
「そうねぇ。減価償却のやり方には定額法と定率法があるの。選択できるけど、個人事業は基本的には定額法。定率法を選択するには税務署に届出が必要です」
「どっちがいいんですか」
「うーん。定率法の方が初年度の経費、減価償却費が大きくなるけど、長い目で見れば減価償却費の合計は同じ。買った金額が経費になるだけ。減価償却費が毎年同じなのが定額法。減価償却費が最初に大きく、後半に小さくなるのが定率法。個人ならシンプルな定額法が分かりやすくていいかも」
「うぅぅ・・・」
分かったような分からないような。
「定額法だと、取得価額(購入金額)×償却率×供用月数÷12ヶ月=減価償却費になります。
原付バイクを8月20日に15万円で購入すれば、定額法で耐用年数3年の償却率は0.334だから、
150,000円×0.334×5ヶ月÷12ヶ月
=減価償却費20,875円
という計算になるわ。
その原付を仕事で8割、プライベートで2割使っていれば、
経費になる減価償却費=20,875円×80%=16,700円」
「やっぱり私には無理そうです。青色申告やめようかな」
「白色申告でも同じだよ」
「・・・ウーバーやめようかな」
「大丈夫。手計算しなくても、国税庁WEBサイトの申告書作成コーナーに購入金額・耐用年数・事業供用割合を入力すれば、あとは自動で計算してくれるから」
「そうなんですか」
「それも難しければ、申告会場にいる税理士にやってもらえばいいよ」
「それって、いくらくらいかかるんですか」
「無料よ」
「無料?? 税理士がタダでやってくれるんですか」
「うん。税務署が税理士にお金払って、無料相談をやってもらってるの」
「それなら、なんとかなりそうですね」
「あと、青色申告の優遇は減価償却にもあるの。30万円未満の車両や備品代は全額を買った年の経費にできます。『少額減価償却資産の特例』って制度があってね」
「えっ、じゃあ15万円の原付はそのまま経費になるんですか」
「その通りよ。でも、原付代15万円をそのまま車両費や消耗品費にするんじゃなくて、いったん減価償却資産として他の経費とは別枠で計算ね。普通なら1年分だけ減価償却費にするところ、青色申告の中小企業者は特例で15万円全部を減価償却費にできます」
「中小企業者?」
「個人事業主なら従業員数1000人以下。個人事業主はほぼ全員当てはまるね」
「利益が出ないように原付とかパソコンとか買って、減価償却費を増やして税金を安くする、なんてこともできますか」
「やってる人多いよ。節税ってことで。でも、その考え方は無駄遣いにつながるからおすすめはしないね。20万円でパソコン買って、全額経費にできても、安くなる税金は所得税5%か10%、住民税10%、国民健康保険料10%、合わせて30%だとして6万円。14万円は出費が増えるからね」
「なるほど」
「所得が48万円越えて親の扶養から外れそうとか、児童手当の所得制限を越えそうとか、今年だけ利益が多くて所得税率が高くなるとか、そういう人が来年買うつもりだった30万円未満の備品を買って所得を減らすなら賢いやり方だと思うけどね。あ、言い忘れてた。少額減価償却資産の特例を適用できる上限は一年間で300万円です。20万円のバイクを20台買って400万円を経費にすることはできません」
「バイクは1台あればいいかぁ(笑)」
「あと、10万円以上20万円未満の資産には『一括償却』というやり方も可能です」
「それも、買った年に全額を一括で減価償却できるんですか」
「いえ、3年間で均等に償却です。15万円で原付を買えば、15万円÷3=5万円が減価償却費として経費になります」
「じゃあ、定額法と同じですね。原付の耐用年数も3年だから」
「いや、少し違ってね。一括償却では何月に買ったか関係なく、3で割った金額が減価償却費になります」
「ふーん。なんで3年で割るのに一括償却って名前なんですか」
「原付を15万円で買って、パソコンを18万円で買って、工具を12万円で買って、それを一つ一つ計算するのは手間だから、令和5年購入の一括償却資産合わせて45万円÷3年=償却費15万円って制度なの。3つの資産を一括して償却計算するから一括償却」
「なるほど」
「今では、資産の購入金額と耐用年数を会計ソフトに一度入力すれば、それからは毎年ソフトが自動的に計算してくれるから有り難みを感じないかもしれないけど。昔は手計算だったからね。10年前に買った建物の減価償却費は今年はいくら、2年前に買った自動車の減価償却費は今年はいくら、ってソロバンでいちいち計算するのは大変でしょ。だから、金額が小さい資産は簡単なやり方で計算していいことになってるの」
「青色申告だといろいろ良いことあるんですね」
「一括償却は白色申告でも可能だよ。大企業でも」
「へぇ。いろいろあって複雑ですね」
「たとえば15万円で原付バイクを買えば、
・普通償却(定額法・定率法)
・一括償却
・少額減価償却資産の特例
この3つの選択肢があります」
「どれを選べばいいんですか」
「基本的には、今年の税金が安くなる方、つまり、購入年の減価償却費が大きくなる方だね。少額減価償却資産の特例を。でも、普通償却(定額法)でも税金がゼロなら、普通償却がいいかも。その方が来年以降の減価償却費が増えて、来年以降の税金が安くなるから」
「なるほどぉ」
「あと償却資産税を考えたら・・・ まぁ、いいかぁ。ウーバー配達員には関係ない話だから」
【補足】
減価償却資産の価値が150万円を越えると、固定資産税の一種である償却資産税が課税されます。
土地・建物にかかる固定資産税は有名ですが、個人事業主や会社が所有する備品にも固定資産税が課税されます。
対象になる資産は、普通償却の資産と、少額減価償却資産の特例を適用した資産です。
少額減価償却資産は購入年に全額を減価償却して、帳簿上の価値は0円として計算しますが、これは所得税・住民税の計算での話です。
償却資産税には関係ありません。
一括償却資産は償却資産税の対象外です。
建物は建物として固定資産税が課税されるから対象外。
自動車・バイクも、自動車税が課税されるから対象外です。
令和5年に購入した資産の一覧を翌年1月までに、「償却資産の申告」で市役所に提出しないといけません。
個人事業をやっていれば、そのうち市役所から用紙が送られると思います。
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