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6話 経費を55万円ってことに? 家内労働者等の必要経費の特例
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「あ、でも最初に聞いておくけど、今年の稼ぎはどのくらいになりそう?」
「えっと・・・ コンビニの給料が3万円くらいで、ウーバーは5万円くらいで。」
「経費を差し引く前のウーバーの報酬はどのくらい?」
「経費はほとんどかかってないです。自転車なんで。報酬は5万円いったりいかなかったり」
「コンビニのバイトを始めたのはいつ?」
「4月です」
「バイトの給料は令和5年は4月から12月までの9ヶ月分で27万円くらいかな。
1月から大学に入るまではバイトやってた?」
「やってました。高校時代も月3万円くらいです」
「アルバイトの収入は年間で36万円くらいね」
「そのくらいだと思います」
「ウーバーの仕事はいつからやってるの?」
「8月からです」
「じゃあ、ウーバーの報酬は5ヶ月分で25万円くらいね」
「でも夏休みは頑張りました。
8月と9月はずっとウーバーの仕事をして、8月は15万円で9月は20万円くらいです」
「ウーバーの報酬が60万円くらいね。
経費差し引き前で。
アルバイトの給料と合わせて96万円くらい」
「そのくらいだと思います」
「うーん、微妙だねぇ」
「何がですか」
「帳簿作ったり青色申告したりしなくても親の扶養に入れて所得税はゼロになりそうだから」
「そうなんですか。
でもウーバーの利益は雑所得で、収入60万円から経費を引いて計算するんですよね。
経費はほとんどないから、雑所得は50万円超えると思うんですが」
「ウーバーの仕事には『家内労働者等の必要経費の特例』って制度があるの」
「家内労働者・・・特例・・・」
先輩はまたパソコンを操作し、国税庁のホームページを出します。
(リンク6-1 国税庁WEBサイト「家内労働者等の必要経費の特例」
リンク先は公式ブログ内「リンク先一覧」にあります。
ブログURLは本小説あらすじページにあります。)
「さっき、給与所得から給与所得控除55万円を引いて給与所得を計算するって説明したよね」
(4話参照)
「はい」
「でも、内職の仕事をしている人は、報酬から実際にかかった経費だけを差し引いて事業所得か雑所得を計算するってなったらどう思う?
家で封筒の糊貼りの仕事をやって年50万円の報酬を受け取って、経費はまったくかからない。
こういう人にも所得税を払わせることになってたの。
扶養控除も適用できないわ。
でもコンビニでバイトして100万円を稼ぐ人は所得税を払わずに済むし、扶養控除も適用できる。
これは不平等って話になったの」
「確かに変ですね」
「だから、内職仕事している人には経費を55万円ってことにできる特例ができたの。
実際の経費か55万円か、どちらか大きい金額が経費になるわ」
「ウーバーの配達は内職って感じじゃないと思いますけど」
「内職だけじゃなく、特定の相手に役務、つまりサービスを提供して対価を得る事業所得・雑所得が対象になるの。
たとえば外交員。
生命保険やヤクルトを売って回って販売手数料を貰う人も対象。
大学生だと、家庭教師会社を通して家庭教師の仕事をして報酬を貰う人もいるんじゃないかな。家庭教師会社に対して家庭教師業務を提供しているからこの特例の対象。」
「ふむふむ・・・」
「ウーバーの配達も、ウーバーイーツに配達業務という役務を提供し対価を貰っているから対象になるわ」
「なるほど。
じゃあ、ウーバーの報酬が60万円なら、実際の経費が10万円でも経費55万円ってことで雑所得5万円になるんですね」
「給与収入がゼロならばね。
でも叶音さんの給与収入が36万円なら、
みなし経費=55万円-給与収36万円=19万円
になるの」
「じゃあ、ウーバーの雑所得は
60万円-19万円=41万円
になるんですね」
「その通り。
給与所得=給与収入36万円-給与所得控除55万円=0円
雑所得=収入60万円-みなし経費19万円=41万円
合計所得金額=給与所得0円+雑所得41万円=41万円」
「ふんふん・・・」
「所得控除は基礎控除だけで48万円あるから課税所得、所得税はゼロ。
所得48万円以下だから親の扶養にも入れるわ」
「帳簿とか書かなくていいんですか」
「必要ないわ。
報酬の集計だけすれば、経費をみなし額で計算すればいいの。
所得税が発生しないなら申告も必要ないわ」
「それなら楽ですね」
「ただ、アルバイト給与36万円、ウーバーの配達報酬60万円というのは正確な見積もりじゃないわよね」
「そうですね、思った以上に稼げるかもしれません」
「今のうちに開業届と青色申告の申請を出した方がいいかもね」
「税金が出そうになってからじゃだめですか」
「青色申告の申請ができるのは、開業初年度は開業日から2ヶ月以内なの」
「8月の初め頃からウーバーの仕事を始めたから、10月上旬までですね。
急がないと」
「青色申告の申請をしたら帳簿を書かないといけないけど、大丈夫?」
「うーん・・・ 私にもできるかな」
「そんなに難しくはないけど、面倒ではあるね」
「今のペースだと所得は全部で41万円。
48万円までなら扶養に入れるんでしたね。
自分も税金は払わなくていいんですよね」
「うん、扶養控除の基準は48万円。
所得税も48万円まではゼロよ。
でも住民税はもう少し低い基準で課税されるわ」
「いくらからなんですか」
「叶音さんは家はどこ?」
「赤羽の近くです」
「東京23区なら合計所得金額45万円を越えると住民税がかかるわ」
「・・・荒川越えて、川口市です。埼玉県の」
「川口市はどうだったかな」
先輩はパソコンで検索し、
「川口市も所得45万円以下が基準のようね」
「思ったより収入が4万円多くなることって・・・ 冬休みに頑張ったら越えそうですね」
「そうね、年末のウーバーは稼ぎ時だからね」
帳簿とか書くの大変だろうな。
でも、せっかく先輩にやり方教えてもらえるんだし、
「青色申告、頑張ります!」
「えっと・・・ コンビニの給料が3万円くらいで、ウーバーは5万円くらいで。」
「経費を差し引く前のウーバーの報酬はどのくらい?」
「経費はほとんどかかってないです。自転車なんで。報酬は5万円いったりいかなかったり」
「コンビニのバイトを始めたのはいつ?」
「4月です」
「バイトの給料は令和5年は4月から12月までの9ヶ月分で27万円くらいかな。
1月から大学に入るまではバイトやってた?」
「やってました。高校時代も月3万円くらいです」
「アルバイトの収入は年間で36万円くらいね」
「そのくらいだと思います」
「ウーバーの仕事はいつからやってるの?」
「8月からです」
「じゃあ、ウーバーの報酬は5ヶ月分で25万円くらいね」
「でも夏休みは頑張りました。
8月と9月はずっとウーバーの仕事をして、8月は15万円で9月は20万円くらいです」
「ウーバーの報酬が60万円くらいね。
経費差し引き前で。
アルバイトの給料と合わせて96万円くらい」
「そのくらいだと思います」
「うーん、微妙だねぇ」
「何がですか」
「帳簿作ったり青色申告したりしなくても親の扶養に入れて所得税はゼロになりそうだから」
「そうなんですか。
でもウーバーの利益は雑所得で、収入60万円から経費を引いて計算するんですよね。
経費はほとんどないから、雑所得は50万円超えると思うんですが」
「ウーバーの仕事には『家内労働者等の必要経費の特例』って制度があるの」
「家内労働者・・・特例・・・」
先輩はまたパソコンを操作し、国税庁のホームページを出します。
(リンク6-1 国税庁WEBサイト「家内労働者等の必要経費の特例」
リンク先は公式ブログ内「リンク先一覧」にあります。
ブログURLは本小説あらすじページにあります。)
「さっき、給与所得から給与所得控除55万円を引いて給与所得を計算するって説明したよね」
(4話参照)
「はい」
「でも、内職の仕事をしている人は、報酬から実際にかかった経費だけを差し引いて事業所得か雑所得を計算するってなったらどう思う?
家で封筒の糊貼りの仕事をやって年50万円の報酬を受け取って、経費はまったくかからない。
こういう人にも所得税を払わせることになってたの。
扶養控除も適用できないわ。
でもコンビニでバイトして100万円を稼ぐ人は所得税を払わずに済むし、扶養控除も適用できる。
これは不平等って話になったの」
「確かに変ですね」
「だから、内職仕事している人には経費を55万円ってことにできる特例ができたの。
実際の経費か55万円か、どちらか大きい金額が経費になるわ」
「ウーバーの配達は内職って感じじゃないと思いますけど」
「内職だけじゃなく、特定の相手に役務、つまりサービスを提供して対価を得る事業所得・雑所得が対象になるの。
たとえば外交員。
生命保険やヤクルトを売って回って販売手数料を貰う人も対象。
大学生だと、家庭教師会社を通して家庭教師の仕事をして報酬を貰う人もいるんじゃないかな。家庭教師会社に対して家庭教師業務を提供しているからこの特例の対象。」
「ふむふむ・・・」
「ウーバーの配達も、ウーバーイーツに配達業務という役務を提供し対価を貰っているから対象になるわ」
「なるほど。
じゃあ、ウーバーの報酬が60万円なら、実際の経費が10万円でも経費55万円ってことで雑所得5万円になるんですね」
「給与収入がゼロならばね。
でも叶音さんの給与収入が36万円なら、
みなし経費=55万円-給与収36万円=19万円
になるの」
「じゃあ、ウーバーの雑所得は
60万円-19万円=41万円
になるんですね」
「その通り。
給与所得=給与収入36万円-給与所得控除55万円=0円
雑所得=収入60万円-みなし経費19万円=41万円
合計所得金額=給与所得0円+雑所得41万円=41万円」
「ふんふん・・・」
「所得控除は基礎控除だけで48万円あるから課税所得、所得税はゼロ。
所得48万円以下だから親の扶養にも入れるわ」
「帳簿とか書かなくていいんですか」
「必要ないわ。
報酬の集計だけすれば、経費をみなし額で計算すればいいの。
所得税が発生しないなら申告も必要ないわ」
「それなら楽ですね」
「ただ、アルバイト給与36万円、ウーバーの配達報酬60万円というのは正確な見積もりじゃないわよね」
「そうですね、思った以上に稼げるかもしれません」
「今のうちに開業届と青色申告の申請を出した方がいいかもね」
「税金が出そうになってからじゃだめですか」
「青色申告の申請ができるのは、開業初年度は開業日から2ヶ月以内なの」
「8月の初め頃からウーバーの仕事を始めたから、10月上旬までですね。
急がないと」
「青色申告の申請をしたら帳簿を書かないといけないけど、大丈夫?」
「うーん・・・ 私にもできるかな」
「そんなに難しくはないけど、面倒ではあるね」
「今のペースだと所得は全部で41万円。
48万円までなら扶養に入れるんでしたね。
自分も税金は払わなくていいんですよね」
「うん、扶養控除の基準は48万円。
所得税も48万円まではゼロよ。
でも住民税はもう少し低い基準で課税されるわ」
「いくらからなんですか」
「叶音さんは家はどこ?」
「赤羽の近くです」
「東京23区なら合計所得金額45万円を越えると住民税がかかるわ」
「・・・荒川越えて、川口市です。埼玉県の」
「川口市はどうだったかな」
先輩はパソコンで検索し、
「川口市も所得45万円以下が基準のようね」
「思ったより収入が4万円多くなることって・・・ 冬休みに頑張ったら越えそうですね」
「そうね、年末のウーバーは稼ぎ時だからね」
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でも、せっかく先輩にやり方教えてもらえるんだし、
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