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5話 所得いろいろ
しおりを挟む「コンビニのバイト代は給与収入なんですね。
でもウーバーの配達報酬は違うんでしたっけ」
「ウーバーの配達員は業務委託になってるの。
個人事業主と同じ。
受け取った報酬は事業所得か雑所得になるわ」
「事業所得と雑所得ってどう違うんですか」
「これが曖昧なんだけどねぇ」
先輩は紅茶をズルルと飲みながら、
「本業と言えるくらいにその仕事をやれば事業所得、副業レベルだと雑所得かな。
大雑把に言うと」
「じゃあ、私は雑所得になるんですか」
「ウーバーの配達報酬は年に300万円超えそう?」
「いえ、月に何万円かなんで」
「それなら、帳簿を書かなければ雑所得ね」
「帳簿を書くかどうかで決まるんですか」
「うん・・・ 変な話だとは思うんだけどね。
国税庁はそう言ってるの」
先輩はパソコンでブラウザを開きます。
検索バーに「国税庁 雑所得 通達」と入力し、エンターキーをパチンッ!
ここなんだけどね。
(※リンク5ー1
国税庁Webサイト「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」)
(アルファポリスの小説本文にURLを書いても読者の皆様はコピーすることができないため、公式ブログ内「先輩!教えてくださいシリーズ ポータルページ」からリンクを貼っています。
公式ブログのURLは本小説のあらすじ・もくじページにあります。)
「今までは事業所得と雑所得は曖昧だったんだけど、令和4年10月に通達が改正されたの」
「通達・・・?」
「国税庁長官が税務署の職員に対して出した業務命令みたいなもの。
この税法はこのように解釈しなさい、って」
「それがネットで読めるんですか」
「えぇ、公開されてるの。
通達は法律とは違って私たち納税者が従う義務は無いわ。
そのはずなんだけどね。
でも、税法の世界じゃほとんど法律と同じ。
みんな、これは法律だと思って読んでるわ」
先輩は「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説(PDF/270KB)」を開きます。
「それで、なんて書いてるんですか」
ごちゃごちゃ書いてるけどよく分からないです。
「ざっくり言えば、個人事業主っぽい仕事をしてても、売上が年300万円以下で帳簿を書いてなければ、雑所得だよって」
「帳簿を書けば事業所得なんですか。
売上が少なくても」
「他にも条件があってね」
先輩は画面を下に進め
「通達改正の解説文で、収入が僅少だと雑所得って言ってるわ。
収入ってのは売上のことね。
主たる収入、会社員やアルバイトだと給与収入のこと、これと比べて、その仕事の収入が10%以下だと、その仕事の利益は雑所得って書いてるわ。
それと、黒字が出ていること、または、例年赤字なら、黒字化の取り組みをしていることが条件って」
「うん・・・うん・・・・・」
「叶音さん、バイトのお給料はどのくらい?」
「月に3万円くらいです」
「じゃあ、ウーバーで月に3000円以上稼いで、黒字で、帳簿を書いていれば事業所得になるってことよ」
「へぇ・・・ なんで事業所得か雑所得かを分けないといけないんですか。
もし雑所得だと計算が違うんですか」
「少し違うね。
雑所得も、収入つまり売上から必要経費を引いて所得を計算するの。
これは事業所得と同じ。
でも青色申告は雑所得には無いわ」
「じゃあ、青色申告特別控除も無しですか」
「そうよ。
それと、もし赤字が出たときに他の所得と損益通算、つまり相殺ができるか。
事業所得だとできるけど、雑所得だと出来ないわ」
「赤字で相殺?」
「たとえば、会社員がウーバーの仕事を始めるために12月に9万円で原付を買ったとするわ。
1ヶ月だけやって配達報酬は3万円。
6万円の赤字ね。」
「そうですね」
「この人のウーバーの利益が雑所得だと、雑所得はマイナスにはならずに0円。
事業所得だとマイナス6万円になって、給与所得と損益通算、つまり相殺できるの。
給与所得から6万円引いた金額が合計所得金額になるわ」
「帳簿を書いて、主たる収入は給与だから給与収入の10%以上稼いで・・・ 赤字だけどいいんですか」
「ウーバーの仕事を頑張るなら、それが黒字化の取り組みだから大丈夫だと思うわ。
普通にやれば原付代9万円なんてすぐに取り返せるでしょ。
たまたま12月に始めたから年度単位で見れば赤字になったってだけで」
「なるほど。帳簿を書くだけでいいことあるんだけどね」
「ビットコインで損したウーバー配達員が書いてた帳簿を破り捨てて雑所得にしたって話もあるけどね」
先輩は小声でボソッっと。
「えっ、なんのことですか」
「いえ、ややこしい話だからやめとくわ。
帳簿を書くと事業所得になって、青色申告できて、税金が安くなる。
だから面倒だけど帳簿はちゃんと書いたほうがいいわ」
「はい! 頑張ります」
【補足説明】
ビットコインの売却益は基本的に雑所得です。
雑所得の赤字は他の所得と損益通算(相殺)できません。
ビットコインで売却損が出て、ウーバーの利益は事業所得にすると、損益通算ができず、ウーバーの利益が丸々課税されるのです。
なので、帳簿を無かったことにして、ウーバーの利益を雑所得にするというやり方があります。
雑所得の中なら、ビットコインの赤字とウーバーの黒字を相殺できます。
と、本庄さんは言おうとしたのですが、こんなやり方を税務署が許すかどうかは、ちょっと分かりません。
でもウーバーの配達報酬は違うんでしたっけ」
「ウーバーの配達員は業務委託になってるの。
個人事業主と同じ。
受け取った報酬は事業所得か雑所得になるわ」
「事業所得と雑所得ってどう違うんですか」
「これが曖昧なんだけどねぇ」
先輩は紅茶をズルルと飲みながら、
「本業と言えるくらいにその仕事をやれば事業所得、副業レベルだと雑所得かな。
大雑把に言うと」
「じゃあ、私は雑所得になるんですか」
「ウーバーの配達報酬は年に300万円超えそう?」
「いえ、月に何万円かなんで」
「それなら、帳簿を書かなければ雑所得ね」
「帳簿を書くかどうかで決まるんですか」
「うん・・・ 変な話だとは思うんだけどね。
国税庁はそう言ってるの」
先輩はパソコンでブラウザを開きます。
検索バーに「国税庁 雑所得 通達」と入力し、エンターキーをパチンッ!
ここなんだけどね。
(※リンク5ー1
国税庁Webサイト「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」)
(アルファポリスの小説本文にURLを書いても読者の皆様はコピーすることができないため、公式ブログ内「先輩!教えてくださいシリーズ ポータルページ」からリンクを貼っています。
公式ブログのURLは本小説のあらすじ・もくじページにあります。)
「今までは事業所得と雑所得は曖昧だったんだけど、令和4年10月に通達が改正されたの」
「通達・・・?」
「国税庁長官が税務署の職員に対して出した業務命令みたいなもの。
この税法はこのように解釈しなさい、って」
「それがネットで読めるんですか」
「えぇ、公開されてるの。
通達は法律とは違って私たち納税者が従う義務は無いわ。
そのはずなんだけどね。
でも、税法の世界じゃほとんど法律と同じ。
みんな、これは法律だと思って読んでるわ」
先輩は「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説(PDF/270KB)」を開きます。
「それで、なんて書いてるんですか」
ごちゃごちゃ書いてるけどよく分からないです。
「ざっくり言えば、個人事業主っぽい仕事をしてても、売上が年300万円以下で帳簿を書いてなければ、雑所得だよって」
「帳簿を書けば事業所得なんですか。
売上が少なくても」
「他にも条件があってね」
先輩は画面を下に進め
「通達改正の解説文で、収入が僅少だと雑所得って言ってるわ。
収入ってのは売上のことね。
主たる収入、会社員やアルバイトだと給与収入のこと、これと比べて、その仕事の収入が10%以下だと、その仕事の利益は雑所得って書いてるわ。
それと、黒字が出ていること、または、例年赤字なら、黒字化の取り組みをしていることが条件って」
「うん・・・うん・・・・・」
「叶音さん、バイトのお給料はどのくらい?」
「月に3万円くらいです」
「じゃあ、ウーバーで月に3000円以上稼いで、黒字で、帳簿を書いていれば事業所得になるってことよ」
「へぇ・・・ なんで事業所得か雑所得かを分けないといけないんですか。
もし雑所得だと計算が違うんですか」
「少し違うね。
雑所得も、収入つまり売上から必要経費を引いて所得を計算するの。
これは事業所得と同じ。
でも青色申告は雑所得には無いわ」
「じゃあ、青色申告特別控除も無しですか」
「そうよ。
それと、もし赤字が出たときに他の所得と損益通算、つまり相殺ができるか。
事業所得だとできるけど、雑所得だと出来ないわ」
「赤字で相殺?」
「たとえば、会社員がウーバーの仕事を始めるために12月に9万円で原付を買ったとするわ。
1ヶ月だけやって配達報酬は3万円。
6万円の赤字ね。」
「そうですね」
「この人のウーバーの利益が雑所得だと、雑所得はマイナスにはならずに0円。
事業所得だとマイナス6万円になって、給与所得と損益通算、つまり相殺できるの。
給与所得から6万円引いた金額が合計所得金額になるわ」
「帳簿を書いて、主たる収入は給与だから給与収入の10%以上稼いで・・・ 赤字だけどいいんですか」
「ウーバーの仕事を頑張るなら、それが黒字化の取り組みだから大丈夫だと思うわ。
普通にやれば原付代9万円なんてすぐに取り返せるでしょ。
たまたま12月に始めたから年度単位で見れば赤字になったってだけで」
「なるほど。帳簿を書くだけでいいことあるんだけどね」
「ビットコインで損したウーバー配達員が書いてた帳簿を破り捨てて雑所得にしたって話もあるけどね」
先輩は小声でボソッっと。
「えっ、なんのことですか」
「いえ、ややこしい話だからやめとくわ。
帳簿を書くと事業所得になって、青色申告できて、税金が安くなる。
だから面倒だけど帳簿はちゃんと書いたほうがいいわ」
「はい! 頑張ります」
【補足説明】
ビットコインの売却益は基本的に雑所得です。
雑所得の赤字は他の所得と損益通算(相殺)できません。
ビットコインで売却損が出て、ウーバーの利益は事業所得にすると、損益通算ができず、ウーバーの利益が丸々課税されるのです。
なので、帳簿を無かったことにして、ウーバーの利益を雑所得にするというやり方があります。
雑所得の中なら、ビットコインの赤字とウーバーの黒字を相殺できます。
と、本庄さんは言おうとしたのですが、こんなやり方を税務署が許すかどうかは、ちょっと分かりません。
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