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3話 先輩の部屋で

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「どうぞ」

「おじゃまします」

初めての先輩の部屋。
キッチンを過ぎるとベッドとテーブルとソファ。
綺麗に片づけられていて、テーブルにはノートパソコンが置かれています。

「ここ座ってて」

ソファに促され、腰掛けます。
先輩は目の前でノートパソコンを開き電源を入れ、

「紅茶飲める?」

「はい、あっ、いえ、お構いなく」

「いいから。そこで待ってて」

先輩がお茶を用意してくれる間、つい部屋をキョロキョロ見渡します。
あのベッドで先輩は寝てるんですね。
やっぱり彼氏とかいるのかな。
ここに来てたりするのかな。
ここで彼氏と・・・

「お待たせ」

「あっ、ありがとうございます」

変なこと想像しちゃってました。
カップを受け取り

「あぁ、いい香り」

リンゴの香りが漂ってきます。

「アップルティーにしたの。私のお気に入り」

甘酸っぱいリンゴの香り。
ほんのり渋い紅茶の味。
紅茶の渋さは苦手だったけど、これ美味しいです。

「叶音さんは所得税申告は初めて?」

「はい、やり方全然分からなくて」

「私はこんな感じで帳簿作ってるよ」

先輩はパソコンを操作し、何かソフトを起動しています。
「やよいの青色申告・・・ですか」

「そうよ。弥生会計って聞いたことある?」

「名前だけは。
会社とかで使うソフトですよね」

「そうそう。
会社の経理で使う会計ソフト。
弥生会計は会社も個人も使えて4万円以上するけど、個人専用の「やよいの青色申告」は14,000円くらいで買えるの。
操作方法は弥生会計とほとんど同じ」

先輩はマウスを操作し、帳簿の画面を開きます。





仕訳日記帳・・・?
借方勘定科目・・・・?

「ここに取引を入力するの。
ガソリン代を現金で払ったときは借方に車両費、貸方に現金、金額を540円って入力」

「・・・・・」

「簿記の勉強やったことない人には難しいよね」

「すみません」

商業高校に行った友達が簿記3級を受けるとか言ってたかな。
簿記ってこれのことなんですね。
私には意味不明です。

先輩はソフトを閉じ、

「叶音さん、青色申告って聞いたことある?」

「はい」

これも知ってるのは名前だけ。
税務署の前の電柱に「青色申告で経営の合理化を」って看板があったような。
何がどうなって合理化するんでしょう。

「でも聞いたことあるだけで、どんな申告なのかは全然。
青色って、何が青いんですか」

「昔は用紙の色が青だったの。
今は違うけど名前だけ残ってるって感じ。」

「へぇ・・・」

「青色申告にするとね、税金が安くなるの」

「えっ?」

「いろいろ優遇制度があってね」

「先輩も青色申告やってるんですか」

「うん、青色申告だから税金ゼロだよ。
去年の稼ぎは150万円くらい。
親の扶養にも入れてるよ」

「103万円を越えると扶養から外れるんじゃないんですか」

「それはバイトして給料もらってる人の話。
個人事業主で青色申告してると違うの」

「青色申告ってすごいんですね」

「叶音さんもやってみれば?」

「私にもできるんですか?簿記とか全然わからないですけど」

「できるよ。65万円控除は難しいけど、10万円控除なら簡単」

「10万円控除・・・?」
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