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1話 先輩に憧れてウーバーの仕事始めたけれど

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「あぁ~」
「うぅぅ・・・」

ペダルが重いです。

大きな保冷バッグを背負い自転車のペダルをこいでいます。
「これなら踏切で待ったほうがいいよぉ」

この跨線橋は3年前にできたらしいです。
それまでは踏切があってよく渋滞していたとか。
だから線路を越える橋を、って話に
おかげで車はスイスイ走れますが、自転車にはしんどい坂道です。

ドゥルルルルルルル ガチャッ ドゥルルルルルルルルル

後ろから独特なエンジン音が聞こえます。
私の右を通り過ぎるのは赤いスクーターに乗った女性。
私と同じ保冷バッグを背中に背負っています。

「あっ、本庄先輩だ」

あの人は同じ大学の本庄茜ほんじょうあかね先輩です。
学年は二つ上の3年生。
スラリと背は高く凛々しい目。
それでいて綺麗な肌。
その姿は女子たちにも人気です。

本庄先輩も私もウーバーイーツの配達をしています。
先輩がウーバーの仕事をしていると知り、同じ仕事をしたらお近づきになれるかなと思って私もウーバーの仕事を始めました。

でも結局、仕事でも会話することはありません。
ウーバーの配達員って、各自がネットで登録してスマホアプリで仕事を受けるってやり方で、同僚って感じじゃないんです。

でも、自由な時間に仕事できるのはありがたいです。
バイトのシフトは「今週は暇だから仕事増やしたい」とか簡単には希望通らないから、そんな時にウーバーの仕事をしています。

背中の保冷バッグにマクドナルドのハンバーガーを載せ、今日も重たいペダルを踏んで、目指すはえっと・・・

スマホを操作し住所を表示させると、
「えっ、梅ヶ丘市営住宅502号室・・・」

ここは行ったことがあります。
この橋を越えて3キロ走り、また丘を登ったところです。
エレベーターはありません。

跨線橋を登り終え自転車は軽やかに下ります。
運転手の心は絶望的です。
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