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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知
38話 征戦騎士
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「待て。貴様を殺してしまう前に聞いておこう。他の転移者はどこにいる? 1人だけではないことは知っている。隠し立てはできんぞ」
「……他の転移者なら、今は全員王城にいるはずだ」
レノンの騎士たちと門番の騎士たちが見守る中、コウトは目の前の横柄な態度をとる男と向き合う。
先程投げ渡された剣は持つときに覚悟したほど重くはなく、扱いに苦労はなさそうだった。
――これも人柱を使った召喚の影響なのか……。
そんなことを考えながら剣を抜く。厚めの両刃の刀身は白く濁っている。
「……いつでもいいぞ」
レノンはその言葉にフッと笑い、口上を述べる。
「我が名はレノン・ドラグハート!! 先代勇者の聖剣に選ばれた騎士。世界の敵を、今ここで討ち果たしてみせよう!!」
「どこからでもかかってこい、と言いたいところだが」
レノンは顔に浮かべていた余裕を消す。
「時間稼ぎをされても困るからな。速攻で終わらせよう」
言葉が終わるのと同時にレノンの体が動き出した。地面を蹴った彼の足は鎧を着込んだ体とコウトとの距離を一気に詰めた。
その勢いのまま繰り出された蹴りを間一髪で避けたコウトに続けざまに振り下ろされた聖剣。それを手に持つ剣でなんとか受け止める。
「よく反応した」
「ッ!」
コウトは上から押さえつけるように力を加えられる。ギリギリと嫌な音を立てる剣は今にもへし折れてしまいそうだ。
このままではまずい。コウトはクレイリングを使い地面を隆起させる。牙のような岩がレノン目掛けて伸びていく。
「小癪な!」
彼はそう叫び岩を拳で粉砕する。が、同時にコウトに距離を取られたことに気付く。
冷や汗を拭ったコウトだったが、空けた距離は一息で詰められてしまう。突きを避け、風の魔法を使って高く跳躍する。そのまま背後を斬りつけるが鎧に阻まれてしまい、手応えはない。
「ウォォォォ!!」
「……ッ!」
空気を震わせる雄叫びは、しなる腕とそこに握られた聖剣に、より一層の力を加えるかのよう。
コウトはクレイリングを使い咄嗟に足元の地面をせり上がらせる。彼の頭を狙う一撃は岩柱を粉砕した。
崩れ、飛び散る足場。レノンがコウトの姿を探したとき、すでにその岩柱の上にコウトはいない。
「くらえッ!」
自身をレノンの視界の外に追いやったコウトは、相手の意識の埒外から頭部めがけて体重を乗せた平打ちを叩き込む。
鈍い音が鳴り、よろけるレノン。今ならば攻撃に対応されることはない。チャンス。だがそうとわかった上で、コウトは後ろへと飛び退いてしまった。
彼は追撃を行わなかった。いや、行えなかった。
腕に伝わってきた振動、感触。そのどれもが初めて感じる気持ちの悪いものだった。
初めて自らの手で人に攻撃をした。リアルすぎる手応えが消えない。その実感に酷く動揺し呼吸が乱れていく。
やがてレノンは背筋を伸ばして立ち上がり、剣を強く握り直す。
コウトを見据える目には怒りの炎が宿っている。
手の震えをなんとか抑えて剣を構えるコウトだが臆する心を隠せていない。マナ知覚を発動するが、そのことすらも及び腰が現れ出ているかのようだ。
「殺す!」
動いたのはレノンだった。
剣がぶつかり、火花すら散る。噂に名高い征戦騎士の剣にコウトは食らいついていた。そして剣戟の末、聖剣による一太刀が下される。
頭上からの振り下ろし。右足を後ろに引き、体をそらす。獲物に避けられた聖剣が地面を斬りつけた。
反撃をしようと剣を握ったコウトだったが、聖剣が光りだしたことに気づく。
やがてそれは大きな爆発を起こした。
「……他の転移者なら、今は全員王城にいるはずだ」
レノンの騎士たちと門番の騎士たちが見守る中、コウトは目の前の横柄な態度をとる男と向き合う。
先程投げ渡された剣は持つときに覚悟したほど重くはなく、扱いに苦労はなさそうだった。
――これも人柱を使った召喚の影響なのか……。
そんなことを考えながら剣を抜く。厚めの両刃の刀身は白く濁っている。
「……いつでもいいぞ」
レノンはその言葉にフッと笑い、口上を述べる。
「我が名はレノン・ドラグハート!! 先代勇者の聖剣に選ばれた騎士。世界の敵を、今ここで討ち果たしてみせよう!!」
「どこからでもかかってこい、と言いたいところだが」
レノンは顔に浮かべていた余裕を消す。
「時間稼ぎをされても困るからな。速攻で終わらせよう」
言葉が終わるのと同時にレノンの体が動き出した。地面を蹴った彼の足は鎧を着込んだ体とコウトとの距離を一気に詰めた。
その勢いのまま繰り出された蹴りを間一髪で避けたコウトに続けざまに振り下ろされた聖剣。それを手に持つ剣でなんとか受け止める。
「よく反応した」
「ッ!」
コウトは上から押さえつけるように力を加えられる。ギリギリと嫌な音を立てる剣は今にもへし折れてしまいそうだ。
このままではまずい。コウトはクレイリングを使い地面を隆起させる。牙のような岩がレノン目掛けて伸びていく。
「小癪な!」
彼はそう叫び岩を拳で粉砕する。が、同時にコウトに距離を取られたことに気付く。
冷や汗を拭ったコウトだったが、空けた距離は一息で詰められてしまう。突きを避け、風の魔法を使って高く跳躍する。そのまま背後を斬りつけるが鎧に阻まれてしまい、手応えはない。
「ウォォォォ!!」
「……ッ!」
空気を震わせる雄叫びは、しなる腕とそこに握られた聖剣に、より一層の力を加えるかのよう。
コウトはクレイリングを使い咄嗟に足元の地面をせり上がらせる。彼の頭を狙う一撃は岩柱を粉砕した。
崩れ、飛び散る足場。レノンがコウトの姿を探したとき、すでにその岩柱の上にコウトはいない。
「くらえッ!」
自身をレノンの視界の外に追いやったコウトは、相手の意識の埒外から頭部めがけて体重を乗せた平打ちを叩き込む。
鈍い音が鳴り、よろけるレノン。今ならば攻撃に対応されることはない。チャンス。だがそうとわかった上で、コウトは後ろへと飛び退いてしまった。
彼は追撃を行わなかった。いや、行えなかった。
腕に伝わってきた振動、感触。そのどれもが初めて感じる気持ちの悪いものだった。
初めて自らの手で人に攻撃をした。リアルすぎる手応えが消えない。その実感に酷く動揺し呼吸が乱れていく。
やがてレノンは背筋を伸ばして立ち上がり、剣を強く握り直す。
コウトを見据える目には怒りの炎が宿っている。
手の震えをなんとか抑えて剣を構えるコウトだが臆する心を隠せていない。マナ知覚を発動するが、そのことすらも及び腰が現れ出ているかのようだ。
「殺す!」
動いたのはレノンだった。
剣がぶつかり、火花すら散る。噂に名高い征戦騎士の剣にコウトは食らいついていた。そして剣戟の末、聖剣による一太刀が下される。
頭上からの振り下ろし。右足を後ろに引き、体をそらす。獲物に避けられた聖剣が地面を斬りつけた。
反撃をしようと剣を握ったコウトだったが、聖剣が光りだしたことに気づく。
やがてそれは大きな爆発を起こした。
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