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第二章
可愛いに要注意1(魔物とハートフルライフだなんて夢のまた夢だと悟った)
しおりを挟むヒスイが加わり、足場の悪い道を進んで30分。徐々に気温が下がっているような気がした。北に行くにつれてススキも元気がなくなっている。隣にいるエルを横目で見るが寒がっている様子はない。けれど風邪を引いては元も子も無いので皆の保温効果を高めるように念じた。
「喜べリゼ。アレ以外のお出ましだ。」
エルが指を刺す方に目をやる。可愛らしいイタチがチョコンと座っていた。通常サイズの茶色いイタチである。おめめはくるっくるで、尻尾がフワフワとしている。
「あぁ見えても出現率低いレアな魔物だよ。Gより強いから気をつけてね。」
『いや、なんでよ。見た目の振れ幅ありすぎ。可愛すぎて斬れんわ!』
「来るぞ!」
ヒスイの言葉と同時に此方に飛びかかってくるイタチを軽く避ける。再び向かってくるその子はシャー!っと爪を立ててきた。
『…ごめんっ!』
避けると背中に蹴りを食らわす。胸が痛い。キーッと小さく鳴くイタチに罪悪感を抱いた。が、それもすぐに無くなる。
『えー…。君、そうなるの。』
煙が立ち上り、みるみると大きくなっていく体。見上げた先には般若の様な形相をした3メートルくらいのイタチがいた。後ろ足2本で立っている。
「あれが本来の姿だ。」
エルは刀に手をかけた。私も鯉口を切ると敵を見据える。ソイツが前足の片方を下から上に振り上げる動作をすると風が襲いかかってきた。咄嗟に刀を抜き、しゃがみ込む。片膝を立てると地面に刃を突き刺し耐えた。
『…っ。』
吹き抜ける風と共に、身体中に走る痛みに冷や汗が頬を伝う。腕や足、肩等無数の切り傷ができていた。他の3人も同様の傷を負っている。
『鎌鼬か…。せめて言い伝え通り無痛にしてくれたら良かったのに。』
刀を引き抜き、一瞬で間合いを詰める。右足を狙うが全く手応えを感じない。続けて刀を振るが全く効いていないようだ。
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