80 / 86
第四部「さよならを告げる風の彼方に」編
6.君が為に彼は逝く
しおりを挟む
いつだったか。思い出せないほど幼い頃の話だ。ヴィルは家から出て行く父を追いかけたことがあった。小さな足を懸命に動かし、遠ざかって行く後ろ姿を追って走った。けれど、走っても走っても、父には追いつけない。最後には地面につまずき、無様に倒れこんだ。
待って、と呼びかけても父の足は止まらない。ヴィルの存在に気づかないのか、気づこうとしていないのか。どちらにせよ、泣き声もらす幼子を騎士が振り返ることはなかった。
泣きながら立ち上がって、子供は父の姿がもないことに気づく。オロオロと見回したところで、父の姿を見つけるどころか帰り道もおぼつかない。泣きじゃくりながら幼いヴィルは、道を歩き出した。しかし行けども行けども、家は見えてこない。
そこでやっと、子供は自分が迷ったらしいことに思い至った。不安が心を満たし、ふらふらと更に道を彷徨い歩く。通り過ぎる人もおらず、見覚えのある場所も存在しない。あまりの状況に、ヴィルはわっと叫ん駆け出していた。
見るもの全てが、恐ろしいものにしか思えない。混乱の果てに、ヴィルはどこか暗い場所に迷い込んだ。泣き疲れ、うずくまった子供を助けてくれる誰かはいない。「たすけて」と小さな声で呼んでも、父の声が返ることもない。
目を閉じ、耳を塞いだ。何も見たくないと心を閉ざした。それっきりヴィルの意識は途絶えた。あの後どうやって帰ることが出来たのか。それだけが思い出せない。けれどそれ以来、ヴィルの心の中には深い闇が残り続けていた。
「滑稽《こっけい》だな」
闇を進みながら、ギルベルトはそんな言葉を漏らした。拙い瞳で子供は大人を見上げる。黒い髪の下の瞳は、ヴィルを見ることもない。暗いばかりの闇を宿し、父であるはずの男は語る。
「お前は、私がどうして戦いに赴いていたのか知っているのか?」
「しらない……戦いが、好きだったから。じゃないの」
「戦いが好き、か。それも一つの真実ではあるがな。好きであったから、お前たちを顧みることもなかった。そう言えば納得するのか?」
「さいてい、だよ。そんなの理由にもなってない」
「最低、な。最低な父親なんだよ。私はな。金と名誉と戦いが全てで、家族を振り返ることもない。戦いに明け暮れ、そして気づけば病に倒れ——結局、何を残せたと言うのだろうな」
虚しい瞳で闇をすくい上げ、男は両手を見つめる。その手の中には何も残っていない。金も名誉も、戦いさえも、死んでしまえば手のひら分の意味合いも残さない。
それを虚しいと笑って、ギルベルトはやっとヴィルを見下ろした。英雄であったはずの男は、疲れ果てた顔をしている。駆け抜けるように過ぎていった人生を悼むように、その目は遠くを見つめていた。
「とうさんは、後悔しているの。俺たちのほうを見なかったこと」
「どうだろうな……後悔はしていない。そう言い切れるほどのものも残せなかった。そのことは後悔している。ヴィルヘルム、お前には憎しみしか残してやれなかったようだしな」
どうしてそんな風に言うのか。幼い訴えに耳を貸さず、父であったはずの男は遠い闇を見つめ微笑んだ。かつて存在した何かを懐かしむような笑顔は、あまりにも空虚だった。
「いつか変われると思っていたんだ。家族のために戦い続け、家を潤していれば誰も苦しまない。そう信じていた頃は楽だったよ。目の前の任務だけに集中していればよかった。だが時が過ぎるに従って、私の考えは間違っていただろうかと……お前に憎しみの目を向けられるようになって、特にそう思うようになった」
夢に見る光景のような儚い光を瞳に宿し、彼は前を向いた。何かを犠牲にするとしても、何故それが家族だったのか。わからない。首を横に振る子供に向かって、大人は寂しいため息を漏らす。
「何故、家族と距離を置いたか。そんな理由なんて大したものじゃなかった。私自身、家族というものに縁が薄い人間だったから。父は若くして死に、母も既に亡く。没落して行くだけの家を守ることでしか、自分を守れない。そんな人間だったから」
そんな人間が、家族を持っていいはずがなかった。悔恨の呟きを闇に落とし、男は届かないものを求めるように手を伸ばす。けれどその手には相変わらず何もなく、掴めるだけの余分も存在しない。
「傷つくのが怖かった。そんな程度の想いでしか、人に関われない人間だった。だから家族を持っても、どう接して行けばいいのかわからなかった。ただ金を稼ぐだけしか出来ない。そんな父親になりたかったわけではないのだけど」
だが、気づけばそんな風な父親になっていた。子供を抱き上げることも、頭を撫でてやることさえできない。理屈では理解していたのだと、父になりきれなかった男は語る。そんな男を、子供は何も言わずに見上げることしかできない。
「だから、せめて少しはマシな父親になろうと思ったんだ。けれど、これも代償なのかな。そう思った矢先に病が見つかり、私の命は終わった」
ゆらゆらと白い花びらが舞い散る。葬儀の祭壇に供えられた花の分だけ、流された涙の分だけ。彼の人生は報われたのだろうか。家族に向き合えず、向き合う時間も奪われて、英雄は結局、幸せになれたのだろうか。
「英雄になれば、お前にも少しは認めてもらえると思ったのだけどな」
見込み違いも甚だしかった。乾いた笑いで軽く流し、嘆きの白い花びらを踏みにじるのは、他ならぬ英雄自身だった。彼は今度こそヴィルを振り返ると、そっと手を差し出した。
「これが、お前が追いかけようとした父親だ。何も残せず、何も得られなかった男の末路だ。お前は、どうかお前だけはこんなものになってくれるな。闇を遠ざけたければ、目を開くだけでいい」
「とうさん」
幼い手が、大きな手に触れようとした。だがその手は触れた瞬間、何事もなかったかのように空を切る。もう存在しないのだと、そう知らしめる手の空白にギルベルトは笑う。
「英雄である私はここまでだ。私がお前に与えてやれなかったものを、父である私がお前に返そう。その想いをどう扱おうとお前の自由だ。ヴィルヘルム、お前にはそれを踏みにじる権利があるのだから」
ゆっくり、一歩ずつ。男は闇の向こうへと遠ざかって行く。ヴィルは手を伸ばし、いつかと同じように袖を掴もうとした。だが手はいつかと同じくすり抜けてしまう。涙をこぼし唇を噛む子供に、英雄である男は最後に笑いかける。
「私がお前に与えてやれるものは、そんなものだけだ。お前の後悔は私が一緒に持って行ってやる。だからせめて——お前はお前の望むように生きろ」
——目を開くと、光が見える。それだけのことなのに、何故かひどくまぶたが熱い。いつしか闇は遠ざかり、目の前には見覚えのある村の光景が広がっていた。
「おい、少年。生きているか」
「え、あ……」
目の前で手を振られ、ヴィルは緩慢に顔を上げた。そこには心配顔の魔法使い。そして——
「急に動かなくなったっていうから、驚いたよ。気分はどうだい。気持ち悪かったりとかは?」
「……っ」
そこにはこちらを見つめるギルベルトがいた。そのことに安堵するよりも先に、感情が溢れ出す。両手で顔を覆い、ヴィルは嗚咽をかみ殺す。
理由なんてどうでもよかった。ただ、ここにいて話すことができれば、いつかは変わったはずだったのに。それだけのことさえもう、手の届かない場所になってしまった。
「とうさん」
やっぱりあなたが嫌いだ。愛しているなんて言葉は欲しくない。ただ生きてそばにいてくれる。それだけが一番大切だったのに。
待って、と呼びかけても父の足は止まらない。ヴィルの存在に気づかないのか、気づこうとしていないのか。どちらにせよ、泣き声もらす幼子を騎士が振り返ることはなかった。
泣きながら立ち上がって、子供は父の姿がもないことに気づく。オロオロと見回したところで、父の姿を見つけるどころか帰り道もおぼつかない。泣きじゃくりながら幼いヴィルは、道を歩き出した。しかし行けども行けども、家は見えてこない。
そこでやっと、子供は自分が迷ったらしいことに思い至った。不安が心を満たし、ふらふらと更に道を彷徨い歩く。通り過ぎる人もおらず、見覚えのある場所も存在しない。あまりの状況に、ヴィルはわっと叫ん駆け出していた。
見るもの全てが、恐ろしいものにしか思えない。混乱の果てに、ヴィルはどこか暗い場所に迷い込んだ。泣き疲れ、うずくまった子供を助けてくれる誰かはいない。「たすけて」と小さな声で呼んでも、父の声が返ることもない。
目を閉じ、耳を塞いだ。何も見たくないと心を閉ざした。それっきりヴィルの意識は途絶えた。あの後どうやって帰ることが出来たのか。それだけが思い出せない。けれどそれ以来、ヴィルの心の中には深い闇が残り続けていた。
「滑稽《こっけい》だな」
闇を進みながら、ギルベルトはそんな言葉を漏らした。拙い瞳で子供は大人を見上げる。黒い髪の下の瞳は、ヴィルを見ることもない。暗いばかりの闇を宿し、父であるはずの男は語る。
「お前は、私がどうして戦いに赴いていたのか知っているのか?」
「しらない……戦いが、好きだったから。じゃないの」
「戦いが好き、か。それも一つの真実ではあるがな。好きであったから、お前たちを顧みることもなかった。そう言えば納得するのか?」
「さいてい、だよ。そんなの理由にもなってない」
「最低、な。最低な父親なんだよ。私はな。金と名誉と戦いが全てで、家族を振り返ることもない。戦いに明け暮れ、そして気づけば病に倒れ——結局、何を残せたと言うのだろうな」
虚しい瞳で闇をすくい上げ、男は両手を見つめる。その手の中には何も残っていない。金も名誉も、戦いさえも、死んでしまえば手のひら分の意味合いも残さない。
それを虚しいと笑って、ギルベルトはやっとヴィルを見下ろした。英雄であったはずの男は、疲れ果てた顔をしている。駆け抜けるように過ぎていった人生を悼むように、その目は遠くを見つめていた。
「とうさんは、後悔しているの。俺たちのほうを見なかったこと」
「どうだろうな……後悔はしていない。そう言い切れるほどのものも残せなかった。そのことは後悔している。ヴィルヘルム、お前には憎しみしか残してやれなかったようだしな」
どうしてそんな風に言うのか。幼い訴えに耳を貸さず、父であったはずの男は遠い闇を見つめ微笑んだ。かつて存在した何かを懐かしむような笑顔は、あまりにも空虚だった。
「いつか変われると思っていたんだ。家族のために戦い続け、家を潤していれば誰も苦しまない。そう信じていた頃は楽だったよ。目の前の任務だけに集中していればよかった。だが時が過ぎるに従って、私の考えは間違っていただろうかと……お前に憎しみの目を向けられるようになって、特にそう思うようになった」
夢に見る光景のような儚い光を瞳に宿し、彼は前を向いた。何かを犠牲にするとしても、何故それが家族だったのか。わからない。首を横に振る子供に向かって、大人は寂しいため息を漏らす。
「何故、家族と距離を置いたか。そんな理由なんて大したものじゃなかった。私自身、家族というものに縁が薄い人間だったから。父は若くして死に、母も既に亡く。没落して行くだけの家を守ることでしか、自分を守れない。そんな人間だったから」
そんな人間が、家族を持っていいはずがなかった。悔恨の呟きを闇に落とし、男は届かないものを求めるように手を伸ばす。けれどその手には相変わらず何もなく、掴めるだけの余分も存在しない。
「傷つくのが怖かった。そんな程度の想いでしか、人に関われない人間だった。だから家族を持っても、どう接して行けばいいのかわからなかった。ただ金を稼ぐだけしか出来ない。そんな父親になりたかったわけではないのだけど」
だが、気づけばそんな風な父親になっていた。子供を抱き上げることも、頭を撫でてやることさえできない。理屈では理解していたのだと、父になりきれなかった男は語る。そんな男を、子供は何も言わずに見上げることしかできない。
「だから、せめて少しはマシな父親になろうと思ったんだ。けれど、これも代償なのかな。そう思った矢先に病が見つかり、私の命は終わった」
ゆらゆらと白い花びらが舞い散る。葬儀の祭壇に供えられた花の分だけ、流された涙の分だけ。彼の人生は報われたのだろうか。家族に向き合えず、向き合う時間も奪われて、英雄は結局、幸せになれたのだろうか。
「英雄になれば、お前にも少しは認めてもらえると思ったのだけどな」
見込み違いも甚だしかった。乾いた笑いで軽く流し、嘆きの白い花びらを踏みにじるのは、他ならぬ英雄自身だった。彼は今度こそヴィルを振り返ると、そっと手を差し出した。
「これが、お前が追いかけようとした父親だ。何も残せず、何も得られなかった男の末路だ。お前は、どうかお前だけはこんなものになってくれるな。闇を遠ざけたければ、目を開くだけでいい」
「とうさん」
幼い手が、大きな手に触れようとした。だがその手は触れた瞬間、何事もなかったかのように空を切る。もう存在しないのだと、そう知らしめる手の空白にギルベルトは笑う。
「英雄である私はここまでだ。私がお前に与えてやれなかったものを、父である私がお前に返そう。その想いをどう扱おうとお前の自由だ。ヴィルヘルム、お前にはそれを踏みにじる権利があるのだから」
ゆっくり、一歩ずつ。男は闇の向こうへと遠ざかって行く。ヴィルは手を伸ばし、いつかと同じように袖を掴もうとした。だが手はいつかと同じくすり抜けてしまう。涙をこぼし唇を噛む子供に、英雄である男は最後に笑いかける。
「私がお前に与えてやれるものは、そんなものだけだ。お前の後悔は私が一緒に持って行ってやる。だからせめて——お前はお前の望むように生きろ」
——目を開くと、光が見える。それだけのことなのに、何故かひどくまぶたが熱い。いつしか闇は遠ざかり、目の前には見覚えのある村の光景が広がっていた。
「おい、少年。生きているか」
「え、あ……」
目の前で手を振られ、ヴィルは緩慢に顔を上げた。そこには心配顔の魔法使い。そして——
「急に動かなくなったっていうから、驚いたよ。気分はどうだい。気持ち悪かったりとかは?」
「……っ」
そこにはこちらを見つめるギルベルトがいた。そのことに安堵するよりも先に、感情が溢れ出す。両手で顔を覆い、ヴィルは嗚咽をかみ殺す。
理由なんてどうでもよかった。ただ、ここにいて話すことができれば、いつかは変わったはずだったのに。それだけのことさえもう、手の届かない場所になってしまった。
「とうさん」
やっぱりあなたが嫌いだ。愛しているなんて言葉は欲しくない。ただ生きてそばにいてくれる。それだけが一番大切だったのに。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる