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第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編
1-1.キールの受難と獣の尻尾
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「キール」
名前を呼ばれたような気がして、彼はまぶたを開いた。しかし目の前にあったのは、代わり映えのしない秋の森の光景と——何か茶色いモフっとしたもの。腰掛けているベンチからたった数歩の距離に横たわる『それ』をぼうっと見つめる。
「……さすがに異常だよなぁ」
独りごちると、そのモフモフしたものがビクリ、と震えた。どうやら見間違いでもなんでもないらしい。改めてそれを観察するキールの視線の先で、三角の耳がフルフルと揺れる。大きさから推測するに、ちょっと大きめのネコ科の獣だろうか。
今だにぼんやりしているキールの前で、ふわりと長い尻尾が立ち上がる。そのふわふわした茶色の尻尾は、見た目からして触り心地が良さそうだった。触媒としても使えるかもしれない。どうでもいいことのように考えを巡らせながら、何気なく目の前を横切った尻尾をもんずと掴んだその瞬間——
「——ぎニャアぁぁアアアアああ——っ‼︎」
「ひ」
何が「ひ」なのか何なのか。自分でも理解できないまま、キールは恐慌状態と化したネコ科少女の狙い澄ました一撃を喰らい、ベンチごと後方に吹っ飛んだ。
名前を呼ばれたような気がして、彼はまぶたを開いた。しかし目の前にあったのは、代わり映えのしない秋の森の光景と——何か茶色いモフっとしたもの。腰掛けているベンチからたった数歩の距離に横たわる『それ』をぼうっと見つめる。
「……さすがに異常だよなぁ」
独りごちると、そのモフモフしたものがビクリ、と震えた。どうやら見間違いでもなんでもないらしい。改めてそれを観察するキールの視線の先で、三角の耳がフルフルと揺れる。大きさから推測するに、ちょっと大きめのネコ科の獣だろうか。
今だにぼんやりしているキールの前で、ふわりと長い尻尾が立ち上がる。そのふわふわした茶色の尻尾は、見た目からして触り心地が良さそうだった。触媒としても使えるかもしれない。どうでもいいことのように考えを巡らせながら、何気なく目の前を横切った尻尾をもんずと掴んだその瞬間——
「——ぎニャアぁぁアアアアああ——っ‼︎」
「ひ」
何が「ひ」なのか何なのか。自分でも理解できないまま、キールは恐慌状態と化したネコ科少女の狙い澄ました一撃を喰らい、ベンチごと後方に吹っ飛んだ。
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