やさしい魔法と君のための物語。

雨色銀水

文字の大きさ
上 下
9 / 86
第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編

8:やさしい時間の残し方

しおりを挟む
 雪が解けるように、木漏れ日が揺れるように。たった一度の季節は緩やかに過ぎていく。
 たとえ同じ季節が訪れようとも、同じ風が吹くことはない。出会いはただ一度のもので、二度と同じものは訪れない。だからこそ出会うことは奇跡に似ている。ほんの些細な、出会うことの意味。

 魔法より、運命より必然よりも大切なもの。それに気付けたならきっと。

 この世界はずっと、やさしくなる。やさしい時間を、残してやれる。


 ※ ※  ※

 時は巡る。ゆっくりと、確実に時間は流れていく。

 冬を過ぎた森の木立には、白い雪が降り積もっていた。重たげに枝を下げ、疎ましそうに雪のかけらを降らせた梢の下で、子供が熱心に雪玉を転がしている。
 それを少し離れた場所で眺めていた魔法使いは、白い息を吐き出し身を震わせた。
 季節は冬の真ん中を越え、一番寒い時期は通り過ぎていた。あとは春に向かって暖かくなっていくだけ——とは言え、雪が溶けるにはまだ早い。
 見事に晴れ渡っていても、雪が残る森に吹く風は冷え冷えとしている。それでも子供は活発に動き回っていた。寒さを感じないのだろうか——疑問に感じたものの、魔法使いが疑問を口にすることはない。
 考えるまでもなく、寒いものは寒い。ただ感じ方が違う。単にそれだけなのだろうと、魔法使いは襟元をかき合わせた。

「元気だなあ。若いというのは羨ましい限りだ」

 背後でそんなぼやきをもらした騎士に、魔法使いは苦笑いを浮かべる。若いなどと羨む台詞を口にしているが、騎士は青年と言っていい年齢のはずだ。

 わざわざ子供を羨むあたり、自分の年齢を気にし始めているのか。密かに笑いを噛み殺しながら、魔法使いは意趣返しとばかりに言葉を放つ。

「若さを羨むなんて騎士にあるまじき行為だな。中年になると子供がそんな風に映るものなのか?」
「……ある程度年齢行くと、子供の頃が懐かしくなるもんだよ。俺よりずっと歳食ってる癖に白々しいぞ。それに騎士関係ないし。そして俺は中年でもない」
「なるほどな。みな無い物ねだりという事か。そして首を絞めるななヴィルヘルム」

 首を絞め上げ始めた騎士に、魔法使いは腕を叩いて抗議する。しかし当然というべきか、ヴィルは華麗にそれを無視した。

 当人たちが真剣であることを差し引いても、傍目からはじゃれ合いにしか見えない。
 そんな地味な命のやり取りに気づいた子供は、大人たちに呆れの混じった苦笑いを向けた。

「なにやってるの? そんなことしてるとイクスの首が折れちゃうよ」
「大丈夫だ。折れない絶妙な力加減を実現している」
「折れなければいいというものではないぞ。私は今、冗談ではなく死に向かっている」
「大丈夫だ。お前はそれくらいじゃ死なないと信じている」
「それって大丈夫なの?」
「結論から言おう。大丈夫なわけは——ない!」

 言うなり魔法使いは顎を引き、勢いをつけてヴィルの顎に頭を打ち付けた。
 ごん、と音がして、さすがの騎士も仰け反り一歩後退る。その瞬間、無防備な顔面に向かって雪玉の一撃が炸裂した。無論投げたのは魔法使いだ。騎士は雪を貼り付けたまま、無言で立ち尽くす。

「侮るな、『黒獅子』。お前はいつも詰めが甘い」
「……ふ、ふ」

 騎士の顔から雪がはがれ落ち、下から満面の笑顔が現れた。一片の曇りもない笑顔なのに、薄青い目は全く笑っていない。笑いながら雪を集め始めたヴィルの姿に、子供の顔が引きつる。

「ねえ、あれって大丈夫なの?」
「いやあれは終わった」
「勝手に終わらすな馬鹿野郎っ! これでも喰らえ——‼︎」

 大人気ない叫びと共に、無数の雪玉が乱れ飛ぶ。笑顔で雪玉を投げつけてくる黒い騎士から、魔法使いと子供は逃走する。

 雪玉を投げつけられて、そのうち投げ返して当て返して。
 寒いばかりだった森の中に、楽しげな笑い声が響く。

 ※ ※  ※

「いやあ、さすがに冷えた、冷えた」

 椅子に腰掛けるなりそういって、ヴィルは両手をさすった。
 その目の前に熱い茶を置いてやりながら、『はしゃぎすぎなんだよ』と魔法使いは呟く。

 窓の外を見れば、子供の雪だるま製作も佳境に入っている。
 大きな雪玉を重ねてしまえば、雪だるまは子供の背よりも高くなっていた。さすがにそんな大きな雪玉を子供が重ねられるわけもない。だから重ねたのはヴィルだが、それ以外は子供作だ。
 残るは雪だるまの飾り付けだけ。熱心に目の位置を調整している子供を眺めながら、ヴィルは笑う。

「今更だけど、ずいぶん変わったな」

 同じように窓の外を見つめ、魔法使いは静かに頷いた。

「まあ、な。前より口数も増えたし……そのぶん、文句や反論も増えたが」
「それはそうなんだがなぁ。ま、言わぬが華か」
「含みのある言い方だな。何か文句でもあるのか」
「だからさ。悪くない、って言ってるんだよ」

 悪びれもせず騎士は笑う。なんとなく納得できず、魔法使いは口元をへの字に曲げる。
 変わった、と言われれば、確かに変わったのだろう。単純に存在が馴染んだというだけではなく、心とそのものが通った。たぶん、そういうことなのだ。

 けれどそれを指摘されてしまうと、どうにもむず痒さが先立つ。魔法使いが中途半端な笑みを浮かべると、ヴィルは軽く瞬いて片眉を吊り上げた。

「なんだよ、変な顔してさ」
「いや。ただ、なんと言うか……おかしなものだと思ってな」
「何がだ?」

 取り留めのない感情を見定めるように、魔法使いは目を閉じた。
 こんな自分では、何かを得ることなどできないと思っていた。しかし強く手を伸ばせば、カケラくらいは掴み取れたのだろう。結局、得られたはずの何かを振り捨てていたのは、魔法使い自身だったと思い知る。

 いつだったか、忘れてしまうほど遠い昔。繋いでいた大きな手が離れてしまう前に、もし、もう一度自分からその手を掴むことができたなら。
 魔法使いは『魔法使い』にならず、ただの『イクス』とし生きていけただろうか。たった一つでも、人として当たり前の温かさを、その手に握りしめることができただろうか。

 今更だと、魔法使いは心の中で笑った。それはあり得ない夢だった。一度踏み出してしまった後に振り返る記憶など、所詮《しょせん》は永遠に届かない蜃気楼《しんきろう》でしかない。

 それに、今は——まぶたを開けば、夢などより確かな現実が残っている。

「こんな風に誰かがいて、当たり前に過ごしていること。それはなんというか……私には、過ぎたことだと思って」
「なんだよ、今更後悔しているなんて言わないだろうな?」
「こんなもの、今までに比べれば後悔のうちに入るわけもない。ただ、私にとって『過ぎたこと』だったとしても……少しでも、この場所がマシなものであったなら——とな」

 窓の外には穏やかな光景が広がっている。いつしかその景色に心を寄せていたのは、どちらだったのだろう。この光景が幸せだけをもたらすわけではない。いつか振り返る瞬間に涙することもあるかもしれない。

「少しでも——そうであったなら。私はこの選択を、本物の奇跡だったと信じられる」

 騎士は黙って、その横顔を見つめている。揺れることも、嘆くこともなく。まっすぐに願いたどり着いた場所は、本当に温かなものだった。

 それが子供だけでなく、魔法使いを変えたのだとしたら、その奇跡に間違いはなかった。だからこそ、繋いだ手を離すことを——『かなしい』と、思うべきではないのだ。

 温かな記憶に寄せた想いに、魔法使いは名前をつけない。本のページに栞を挟むように、ということだけを覚えておく。

 穏やかな日々、とても優しい、やさしい時間。
 その終わりは、すぐそこにまで迫っていた。

 ※ ※  ※

 古い絵本を開き、子供はその物語を追う。

 物語の主人公は、魔法使いの弟子である少年だ。
 彼はある日、師匠の留守に『願いを叶える杖』を手に入れる。それを使って願いを叶え、少年は多くのものを手に入れていく。欲しかったものや、お金自体。そして果ては権力まで欲し、杖はその願いを叶えた。

 そこまで読んで、子供は思わず苦笑いしてしまった。絵本にしては中々にえげつない。しかしながら、人の欲望はなんてものは、似たり寄ったりなのかもしれなかった。

 物語は進み——抱えきれないほどのものを手に入れた少年は、いつしか虚しさを感じ始める。
 すべてを手に入れたはずのなのに、少年の周りには誰もいなかった。かつては少なからず存在した友人も、誰一人として彼のそばには残っていない。

 そこで彼は願った。『誰かそばに来て欲しい』——その願いも杖は叶える。少年の周りには、常に誰かがいるようになった。けれど、彼がそばにいて欲しいと願った人は、誰一人として現れることはなかった。

 そこまでに至って、少年はやっと気づく。
『願いを叶える杖』は、確かになんでも願いを叶えてくれる。だが——本当に欲しいものだけは、という呪いの上に成り立つものだったのだ、と。

 手に入れるほどに孤独になっていく自分に気づいて、少年はついに魔法の杖を手放した。
 その瞬間、魔法で手に入れたあらゆるものは消えていく。しかし少年の手の中には、たった一つだけ残ったものがあった。

 それは、一番最初に師匠から贈られたなんの変哲も無い杖。
 魔法が初めて使えるようになった記念にと、師匠が少年のために作ってくれた杖だった。

 何もかも失った少年は、一本の杖だけを握りしめ歩き出す。その目には、かつて大切だったものが美しい光として映し出されていた——。

 終わりを告げた物語に込められたもの。それは『本当に大切なものは、魔法だけでは手に入らない』。
 魔法使いが与えた物語にしては、少々皮肉な内容ではあった。けれど魔法使いに関わってきたからこそ、子供には理解できる。魔法使いにとって、この物語は救いだったのだ。

 万能であるが故に、『孤高』へと堕ちた魔法使い。
 けれど魔法では奪い去れない大切なものがあると、魔法使いは伝えようとしたのかもしれない。

「……もう、このお話も終わりだな」

 最後のページをめくり、しばらく眺め——ゆっくりと本を閉じた。
 ぱたんと、密やかな音が部屋の中に響いて、子供は向かいに座る魔法使いを見た。

「イクス、読み終わったよ。ずいぶん時間かかっちゃったけど」
「……そうか、よく頑張ったな。これは絵本にしては難しい方だったのだが」
「そんなの渡してたの? いつも思うけどイクスって厳しすぎだよね」
「一言もないな。だが、別にそれが嫌なわけでもないんだろう」
「まあ、もう慣れたかな。気にならない程度にはなったかも」
「お前はお前で手厳しいな。もう少し褒めれば踊るかもしれんぞ」
「はは、それはそれで見て見たいかも」

 気兼ねなく言葉をかわすことができるようになるとは、最初はお互いに思いもしなかった。
 そばにいればどんなものでも少しずつ情が移るとはいう。だが恐らくそれだけでは、少し足りなかった。時を重ねて、想いを重ねて、その先でやっと重なったからこそ、この光景は存在している。

 それは魔法が起こした奇跡ではなく、積み重ねた先にあった大切な時間だった。

「なあ、イクス」

 子供は微笑んだ。流れていった時間をいとおしむような、優しい笑い方だった。過ごした短い季節を思い返す瞳は、魔法使いをも温かなものとして捉えていた。

「……楽しかったな」

 たった一言だけ。短く紡がれた言葉に魔法使いは目を見開き——そして浮かべたのは不恰好な笑顔だった。互いの想いは、言葉にならなくとも痛いほどに伝わっていく。これが最後になるのだと、『かなしい』想いが胸をかき乱す。
 しかし今は、その想いに囚われはしない。魔法使いは笑う。すべての想いを込めて笑いかける。

「ああ、楽しかった。私も、本当に楽しかったよ。きっと、今まで生きて来て、一番楽しかった」
「そっか」

 良かった。短く告げて、子供は照れ臭そうに笑う。
 その言葉には、本当に全てが込められている。きっと、忘れることはない。魔法使いも子供も、この日々を何度も思い出すだろう。

「だから、おれは行くよ」

 それは最初で最後の、別れの挨拶。

 魔法使いは頷き、目を伏せた。今感じている想いを、子供に背負わせてはならない。この心にある綺麗な想いだけを、この時間に残していく。

「……ああ、そうだな」

 さよならとも、ありがとうとも言えない。
 それでも時間は流れ、その日は静かに訪れる。

 ※ ※  ※

 雪が溶け始め、春が訪れる頃、その日はやってきた。

 家の前に置かれた雪だるまを眺め、子供はゆっくりと歩き出す。
 雪だるまは春を前にして、半ば溶け傾いている。かつての思い出を背に、子供は顔を上げる。振り返ることなく歩いていく。

 見送るものは誰もいない。一人その道を行き——ひときわ高い木の下で足を止める。


「……来たか」
「うん、来た」

 正式な騎士装束をまとったヴィルを前にして、子供は一つだけ頷いた。
 木の枝の先には新たな緑が芽吹く。雪の下から顔をのぞかせた小さな花が強く葉を伸ばす。
 そんな季節真ん中で、子供は歩き出そうとしていた。それはとても嬉しいことだと、騎士は思う。けれど同時にとても哀しいとも思っている。口には出さなくとも、いままでの想いを消すことはできない。

「もう、いいのか」
「うん、別れはもう済ませてきた。……だから、行こう」

 子供は騎士に頷きかけ、自ら前へと歩き出す。地面を踏みしめ進む足取りに、迷いはなかった。まっすぐに、顔を上げ前へと歩いていく。
 決然とした背中にヴィルは何か言いかけ——すぐに口を閉ざす。口にしようとした言葉を胸に閉じ込め、子供の横に並んで歩き出す。

 二人の姿が遠ざかっていく。その後ろ姿を見守るのは、森の木々だけだ。だが決して寂しい道行きではない。子供の黒い瞳には、未来を見据える強い輝きが宿っている。

 だからもう、振り返らない——そのはずだったのに。

 足音が、小さく響いた。聞き慣れてしまった特徴のある、わずかに靴底をこする足音。
 気づけば、子供の足は止まっていた。何かをこらえるように目を伏せ、しかし振り返りはしない。だが騎士にそっと背中を叩かれ、やっと——背後を振り返った。

「——イクス」

 その名を呼んだ。けれど言葉は返らない。魔法使いはまっすぐに子供を見つめていた。緩やかに風が頰を撫で——ゆっくりと歩き出す。子供へと、向かって。


『今、別れるのだとしても』

 子供は歩く。魔法使いへと向かって。ゆっくりと、少しずつ早足で。次第に駆け足で、最後には走り出す。

『それは決して、終わりではない』

 走って、走って。息が切れても止まらない。今、会いに行く。それだけを心に埋めて。

『遠い時間であっても想い続ける。それが本当に——』

「イクス!」

 子供が腕に飛び込んでくる。魔法使いは強く子供を抱きしめた。

 今ここにあると確かめるように、温もりを抱きしめる。

「ただ、これっきりで『さよなら』っていうのもありだとは思ったんだけど」

 両手で小さな顔を包んで、魔法使いは微笑んだ。
 その瞳は穏やかで優しくて、子供の目に透明なものが滲んでいく。

「ひとつだけ、大切なことを忘れていた」

 微笑みのまま、子供の耳元に顔を寄せる。
 穏やかに、安らかな声が子供の耳元で響き、そして。

「お前の旅立ちに、これだけは贈らせてくれ」

 ――そして、魔法使いはその名前を呼んだ。





 もしお前が、いつかこの日を思い出してくれる時があったなら。
 私にとってそれは幸せなことだ。
 ここから私は離れることができないけれど、いつもお前の幸せを祈っている。

 だがあえてここで、さよならとは言わない。
 。そういう魔法なら悪くはないだろう?



 ——森が遠ざかり、空は果てしなく広がっていく。
 子供は振り返らない。けれど決して心が遠ざかることはない。

「なあ、ヴィル。お願いがあるんだけど」
「うん? どうした、俺にできることか」

 珍しい『お願い』に、騎士は不思議そうな顔をする。子供は晴れやかに笑って——一番最初の願いを口にした。

「図鑑をおれにくれないか。調べて、教えてあげたいことがあるんだ。花の名前なんだけど」

 たぶんその物語は、長く続く旅の途中。
 けれど刻まれた記憶は、小さな心をずっと守り続けている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!

音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。 愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。 「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。 ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。 「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」 従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...