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第五章 白鈴の文
(五)正体は、さとり
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「さてと」
阿国はぐびと、濁酒をひとくち。
「せっかく、この面々が集まってる。それなら、こっからの筋書きをひとひねりやるか」
おうとなる。王鈴が隅にある燭台に火を灯した。
「さて、手配りは。百学」
「急な船が出ます。なんでも医者がいるとかで、これ幸いと、あの道珍の遠縁のものと蘭学をひけらかしたら、すんなり。ちょうど、寺の漢方医がごねてたところに渡りに舟のようです」
ぽんと千石はひざを打つ。
「しめしめ。ここで宿にあった大ぶりな葛篭を薬箱にして、こさえたあれを隠す。才蔵は下男となって担いでもらおう」
「あれは、よく出来てる」
阿国はぷっと笑って小雪に向いた。
「はい。寺はこれといって。かえって少々気味が悪い。ちなみに、お陀仏の秀麿とやらが遊郭遊びから戻るとか。明後日には島へ渡ると耳にしました」
「あら、明後日」
阿国は渋くなる。
「ちなみに、島へは寺がらみの船の他は、近寄るなと立て札ってね」
うなずく百学と小雪。
千石は腕を組む。
「いま、その船は一つ。それで百学は島へ、病人をみるからすぐには戻れぬ。船だけ返してあくる日に、あの、おじゃるの乱破が島へ渡るという寸法か」
そしてと小雪。
「その船で百学さんが戻る。つまりは、その、ひと晩の間のうち」
ふむと千石はうなずいた。
「月夜に、才の字と鈴々は寺を抜けて浜にひそむ。おじゃるが登ってる間に船に乗って、降りてきた百学と湊へ戻る。まんまと、おじゃるをやり過ごさないとな」
まってと小雪。
「抜けるのが、夜なら」
はいなと阿国はくっと濁酒を呑む。
「ぶちりだね」
「くっ、そっちは、やり過ごせるものやら」
千石がぼやく。
「なら、仕切り直しますか」
小雪が眉をひそめる。
「いや、これから寺も島もぶちりの始末でどうなるやら。このときを逃せば、二進も三進もゆかなくなるかもしれない」
阿国はきっぱり。
「おうよ。それに、嫌なうわさもある」
「あにさま、なにか」
「ぶちりが鎮まらぬなら、寺はやっちまうってな」
王鈴が小雪が、あっとなった。
「まさか、えっ、それで鈴々、さらわれたか」
「ぬ、沼へ、生けにえ」
ぱんと、阿国が手を叩く。
「なら、なおのこと。儀式を指図する明海が島へ渡ればお陀仏。ためらってられない」
こくりと百学はうなずいた。
阿国はぐびと、濁酒をひとくち。
「せっかく、この面々が集まってる。それなら、こっからの筋書きをひとひねりやるか」
おうとなる。王鈴が隅にある燭台に火を灯した。
「さて、手配りは。百学」
「急な船が出ます。なんでも医者がいるとかで、これ幸いと、あの道珍の遠縁のものと蘭学をひけらかしたら、すんなり。ちょうど、寺の漢方医がごねてたところに渡りに舟のようです」
ぽんと千石はひざを打つ。
「しめしめ。ここで宿にあった大ぶりな葛篭を薬箱にして、こさえたあれを隠す。才蔵は下男となって担いでもらおう」
「あれは、よく出来てる」
阿国はぷっと笑って小雪に向いた。
「はい。寺はこれといって。かえって少々気味が悪い。ちなみに、お陀仏の秀麿とやらが遊郭遊びから戻るとか。明後日には島へ渡ると耳にしました」
「あら、明後日」
阿国は渋くなる。
「ちなみに、島へは寺がらみの船の他は、近寄るなと立て札ってね」
うなずく百学と小雪。
千石は腕を組む。
「いま、その船は一つ。それで百学は島へ、病人をみるからすぐには戻れぬ。船だけ返してあくる日に、あの、おじゃるの乱破が島へ渡るという寸法か」
そしてと小雪。
「その船で百学さんが戻る。つまりは、その、ひと晩の間のうち」
ふむと千石はうなずいた。
「月夜に、才の字と鈴々は寺を抜けて浜にひそむ。おじゃるが登ってる間に船に乗って、降りてきた百学と湊へ戻る。まんまと、おじゃるをやり過ごさないとな」
まってと小雪。
「抜けるのが、夜なら」
はいなと阿国はくっと濁酒を呑む。
「ぶちりだね」
「くっ、そっちは、やり過ごせるものやら」
千石がぼやく。
「なら、仕切り直しますか」
小雪が眉をひそめる。
「いや、これから寺も島もぶちりの始末でどうなるやら。このときを逃せば、二進も三進もゆかなくなるかもしれない」
阿国はきっぱり。
「おうよ。それに、嫌なうわさもある」
「あにさま、なにか」
「ぶちりが鎮まらぬなら、寺はやっちまうってな」
王鈴が小雪が、あっとなった。
「まさか、えっ、それで鈴々、さらわれたか」
「ぬ、沼へ、生けにえ」
ぱんと、阿国が手を叩く。
「なら、なおのこと。儀式を指図する明海が島へ渡ればお陀仏。ためらってられない」
こくりと百学はうなずいた。
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