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 ……今日も残業だった。とにかく疲れた……。終電で家に帰るの、何日目……? あ、でも明日はようやくつかめた休みだから、ぐっすり眠ってはまっている乙女ゲームをしよう……。そう考えながら歩いていると、くらりと眩暈がして――……そこからの意識がない。




 ――という夢を見た、わけじゃない。
 あれは私の前世の最期。眩暈がした後はわからないけれど、気が付くと私は『私』になっていた。
 私の名はルシル。ヒロインだ。……いきなり何を言っているんだ、って思った人も居るだろうけど、ここは『ルシル~花の乙女~』と言う乙女ゲーム(ソシャゲ)の世界だ。
 そう、あろうことか私はこの世界のヒロインとして転生してしまったのだ。
 どのルートでも安全安心なヒロイン。生まれ変わるなら悪役令嬢じゃないのか……と前世を思い出した私は思わずそう考えてしまった。
 まさかヒロインに生まれ変わるとは思わないじゃない……。だって巷には悪役令嬢に生まれ変わって断罪イベントを回避する小説や漫画がたくさんあるから。もちろん、すべて楽しく読ませてもらっていた。
 ちょっと悲しいのは、そのすべてを失ってしまったこと。だって、日課のように読んでいたものもあれば、纏めて一気に読み進めようと思っていた小説もあった。主にウェブ。
 とは言え、前向きなのが私の取り柄!
 この世界に生まれ変わったからには、世界を満喫しないと勿体ない!
 悪役令嬢たちにも幸せになって欲しいから、攻略対象には近付かないでおこう!
 目指せ、ノーマルエンドー!
 ……って、ここゲームの世界だけど……『ルシル』にとっては現実なのよね。ゲーム脳もほどほどに、萌えと燃えを楽しむわ!
 ……そう決意してから数日後、私は『ルシル~花の乙女~』の舞台である、王都のアカデミーへ向かうことになった。

「……まさか、ルシルが選ばれるなんて……」
「人生何が起こるか分かったもんじゃないね……」
「お父様、お母様、そんなに言わなくても……」

 私が通う予定の学園は王都にあり、平民貴族を問わずに魔力がある人だけ入学できるという魔術学園。男女も関係なく入学できる共学。……まぁ、そうしないとロマンスも発生しないだろうし……。
 私は男爵令嬢として入学することになる。……男爵令嬢って言っても私はどちらかと言うと平民に近いと思う。前世も普通の一般市民(社畜)だったし。うちの領は村くらいの大きさだし……、なんだろう、村長の娘、的な……?

「つらくなったらいつでも帰って来て良いからな」
「親戚のおば様によろしくね」
「はーい、行ってきまーす!」

 ルシル・L・マレット、この世界を堪能するため、学園へ出発します!
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