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番外編:エリオット殿下とお忍びデート。1
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「デート、ですか?」
「そう。……と言っても、お忍びで、だけど」
私は首を傾げてエリオット殿下を見た。
学園を卒業してから早数ヶ月。エリオット殿下は王太子として、城の仕事を任せられているらしい。とは言え、働き過ぎは身体に悪いってことで、陛下たちに休むように言われたらしい……。ワーカーホリックですか、殿下……?
「お忍び……?」
「そう、平民っぽい服を着て、王都を見回ろう。カリスタは市場の活気とか知らないだろ?」
小さくうなずく。買いたいものがある時は、その店の人を屋敷に呼ぶからね……。一度お忍びで王都に向かおうとしたら、秒で見つかってお父様とお母様に滅茶苦茶怒られた……。
「それは……、楽しそうですね」
自分の目で見て回る……それを想像して私はぱぁっと表情を明るくさせた。すると、エリオット殿下が心底愛しそうな眼差しを私に向けるから、ハッとして顔を背けた。
「学園を卒業してから、カリスタの魅力が増えたような気がするよ」
「……それは、学園を卒業する前は魅力がなかったということですか……?」
「まさか。君はいつだって魅力的な女性さ。ただ、最近は肩の力が抜けたように思うから、余計に魅力が増したんだよ」
肩の力が抜けた……。エリオット殿下にはバレバレか。悪役令嬢として断罪されるハズだったのに、卒業パーティーでは全然違う展開になった。マリー様はあれからどうなったのかわからないけれど、姿を見なくなった――いや、私も王妃教育で余裕がないからそう思うのかもしれないけど。
「平民っぽい服って、どこで手に入れたのですか?」
「秘密。カリスタの分もちゃんと用意してあるからね」
「ありがとうございます」
……あれ、私の服のサイズを知っていると言うこと……? な、なぜ……? もしや殿下には千里眼でも……!?
「カリスタも利用したことのあるデザイナーに頼んだんだ。なぜか燃え上っていたよ」
ああ、なるほどー! それなら私のサイズも知っているよね。って言うか……私も利用したことのあるデザイナーって誰だろう。平民っぽい服を作るのに燃え上る……?
「カリスタも、王妃教育の休暇が必要だろう?」
「……そうですね、流石に疲れました」
「……うん、そうやって弱音を言ってくれるの、嬉しい」
エリオット殿下はそう言って私の頬に触れた。悪役令嬢として、きちんとイベントをしなくちゃ! って強く思っていたから……。……ゲームのシナリオが終わったことで、私はきっと、ちゃんとエリオット殿下のことを見ることが出来ているのだと思う。
そして、そんな私のことを、エリオット殿下は見守ってくれていたのね。そのことに気付いて、私は自分が恥ずかしくなった。好きなゲームの中に転生して、攻略対象たちに会って舞い上がっていた。
悪役令嬢として、私はダメダメだったと思うけれど……。それでも、大事なことに気付けたから……。
「エリオット殿下も、弱音を言ってくださいね。ちゃんと聞きますから」
「……わたしは、どちらかと言うとこうして触れていると幸せだからなぁ」
え? と思っているうちにエリオット殿下の顔が近付いて来た。反射的に目を閉じると
ちゅっと軽いリップ音を立てて、額にキスをされたようだ。……ゲームのエリオット殿下と、現実のエリオット殿下の違いってここでもあるのよね……!
「真っ赤」
「……いきなりは反則ですわ……」
「可愛いなぁ、わたしのカリスタは」
ぎゅーっと抱きしめられて、恥ずかしいけれども嬉しさもあって、あぁあ、もうっ。穴があったら入りたい!
「そう。……と言っても、お忍びで、だけど」
私は首を傾げてエリオット殿下を見た。
学園を卒業してから早数ヶ月。エリオット殿下は王太子として、城の仕事を任せられているらしい。とは言え、働き過ぎは身体に悪いってことで、陛下たちに休むように言われたらしい……。ワーカーホリックですか、殿下……?
「お忍び……?」
「そう、平民っぽい服を着て、王都を見回ろう。カリスタは市場の活気とか知らないだろ?」
小さくうなずく。買いたいものがある時は、その店の人を屋敷に呼ぶからね……。一度お忍びで王都に向かおうとしたら、秒で見つかってお父様とお母様に滅茶苦茶怒られた……。
「それは……、楽しそうですね」
自分の目で見て回る……それを想像して私はぱぁっと表情を明るくさせた。すると、エリオット殿下が心底愛しそうな眼差しを私に向けるから、ハッとして顔を背けた。
「学園を卒業してから、カリスタの魅力が増えたような気がするよ」
「……それは、学園を卒業する前は魅力がなかったということですか……?」
「まさか。君はいつだって魅力的な女性さ。ただ、最近は肩の力が抜けたように思うから、余計に魅力が増したんだよ」
肩の力が抜けた……。エリオット殿下にはバレバレか。悪役令嬢として断罪されるハズだったのに、卒業パーティーでは全然違う展開になった。マリー様はあれからどうなったのかわからないけれど、姿を見なくなった――いや、私も王妃教育で余裕がないからそう思うのかもしれないけど。
「平民っぽい服って、どこで手に入れたのですか?」
「秘密。カリスタの分もちゃんと用意してあるからね」
「ありがとうございます」
……あれ、私の服のサイズを知っていると言うこと……? な、なぜ……? もしや殿下には千里眼でも……!?
「カリスタも利用したことのあるデザイナーに頼んだんだ。なぜか燃え上っていたよ」
ああ、なるほどー! それなら私のサイズも知っているよね。って言うか……私も利用したことのあるデザイナーって誰だろう。平民っぽい服を作るのに燃え上る……?
「カリスタも、王妃教育の休暇が必要だろう?」
「……そうですね、流石に疲れました」
「……うん、そうやって弱音を言ってくれるの、嬉しい」
エリオット殿下はそう言って私の頬に触れた。悪役令嬢として、きちんとイベントをしなくちゃ! って強く思っていたから……。……ゲームのシナリオが終わったことで、私はきっと、ちゃんとエリオット殿下のことを見ることが出来ているのだと思う。
そして、そんな私のことを、エリオット殿下は見守ってくれていたのね。そのことに気付いて、私は自分が恥ずかしくなった。好きなゲームの中に転生して、攻略対象たちに会って舞い上がっていた。
悪役令嬢として、私はダメダメだったと思うけれど……。それでも、大事なことに気付けたから……。
「エリオット殿下も、弱音を言ってくださいね。ちゃんと聞きますから」
「……わたしは、どちらかと言うとこうして触れていると幸せだからなぁ」
え? と思っているうちにエリオット殿下の顔が近付いて来た。反射的に目を閉じると
ちゅっと軽いリップ音を立てて、額にキスをされたようだ。……ゲームのエリオット殿下と、現実のエリオット殿下の違いってここでもあるのよね……!
「真っ赤」
「……いきなりは反則ですわ……」
「可愛いなぁ、わたしのカリスタは」
ぎゅーっと抱きしめられて、恥ずかしいけれども嬉しさもあって、あぁあ、もうっ。穴があったら入りたい!
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