オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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2章:異存

怪異の元凶 3話

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 黒板から伸びてきた手は、架瑠かけるたちに狙いを定めて勢いよく襲いかかってきた。

「ッ!」

 つむぎが炎を繰り出して応戦したが、人間の手は『熱いなぁ』とばかりに手を振って、炎を消す。

「に、逃げよう!」

 佑心うみの一言に、架瑠たちは駆け出す。全員同じ方向に走り出し、オカルト研究部の部室から階段へと向かう。

 勢いよく迫ってくる人間の手に、紬はもう一度炎を繰り出して、手に放つ。だが、避けられてしまった。

「なっ!?」

 紬が目を大きく見開き、階段前で炎の壁を作り上げて人間の手を止める。

「二手になり、錯乱させよう」

 そう提案したのは佑心だ。真摯な表情の彼を見るのはとても新鮮に思え、それだけあの人間の手が佑心の想像以上の怪異なのだと物語っているように思えた。

「キミらとワタシら、いいね?」

 架瑠と紬、佑心と茉莉まつりの二手になり、逃げる。階段を下り、左右に別々の方向に走る。

 やはりというかなんというか、手は架瑠たちのほうに向かってきた。

 そのことに、架瑠は少しホッとしたような表情を浮かべる。

「巻き込んでごめん!」
「こうなるだろうとは思っていたさ」

 紬に謝る架瑠に、彼は走り続けながら言葉を紡ぐ。一度くるりと身体を反転させ、再び炎を放つ。今度は命中したが、彼の炎なんて気にせずに人間の手は迫ってきた。

「厄介なヤツだな!」
「なにか、退治できるいい方法があればいいんだけど……!」

 走りながら言葉を交わす架瑠たち。

 あの人間の手は、真っ直ぐに架瑠を狙っている。校舎を走り回り、ぜぃぜぃと息が上がってきた。

 紬は教室の扉に炎を当て、扉を開けると架瑠の手を引っ張り教室に入り、扉を閉める。

 ドッドッドッ、と早鐘を打つ心臓を落ち着かせるように、深呼吸を何度もした。

「せめて、弱点がわかれば……」
「……血文字から出てきたのなら、やっぱりあの黒板の血文字を燃やすしかないのかな?」
「だが、それだとまた同じことになるんじゃないか?」

 紬の言葉に、架瑠は「だよね……」と肩を落とす。

 黒板の文字は『よこせ』『かける』『にげて』から、『あそぼう』『いのち』『ちょうだい』に変わった。

 この状態を、あの人間の手は『遊び』だと思っているのだろうか? と思考を巡らせていると、ふいにあの手のひらの眼を思い出す。

 ぎょろりと血走った眼。あの眼を、どこかで見た気がする。

 それがどこで、なのか……それがさっぱりと思い出せないのだ。

「おい、大丈夫か?」

 心配そうな紬の声に、弾かれるように顔を上げる架瑠。

「あ、ごめん。考え込んでた」
「……お前、『ごめん』が口癖なのか?」

 呆れたような紬の問いかけに、架瑠は目をぱちくりとまたたかせた。
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