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1章:始まり
季節外れの転入生 2話
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鞄を机に置いて、中から教科書やノートを取り出していく。その様子を視界に入れて、龍源は、こほんと咳払いをしてから今日の予定を話し始める。
すべての予定を話し終えて龍源が教室から出ていく――……のと同時に、わっと紬のもとにクラスメイトが集まった。
「ほどほどにしろよー」
龍源が顔だけ覗かせ、それだけ伝えると扉が閉まる。他のクラスの生徒たちも、一度転入生を見ようとこの二年C組にきていた。紬の燃えるような紅蓮の髪と金色の瞳を見て一度息を呑む人が多い。
「わ、本当に地毛だ。根元まで赤い!」
「ねぇねぇ、どうしてこんな中途半端な時期に転入してきたの?」
「本当に日本人?」
などなど、紬を囲んでいる生徒たちは矢継ぎ早に質問攻めし、彼は深々とため息を吐いた。心底面倒くさいと顔に書いてある。
彼はちらりとこちらを見て、口を開いた。
「一時間目の授業はなんだ?」
「えっ、あ、す、数学……」
架瑠はびっくりしたように目を見開いて、彼の問いに答える。
紬は机に並べた教科書の中から、数学の教科書と使うノート、筆記用具だけを机に並べ、他の教科書たちは机の中に入れた。
質問に答えないからか、クラスメイトたちは「なんだよー」とムッとしたように紬から離れていく。
「そういや、お前の名前は?」
「おれ? おれは……倉橋架瑠。ええと、よろしく?」
「……ああ」
短いけれど、確かに返ってきた。そのことに架瑠は驚きながらも、少しだけホッとした。悪い人ではなさそうだ、と。
それからすぐに数学の教師が教室に入ってきて、授業が始まる。
◆◆◆
授業と授業のあいだにある休憩時間にも、紬のことを一目見ようと生徒たちがクラスに集まってくる。紬は自身に刺さる視線にうんざりしたように、髪を掻き上げる。きゃあ、と女子生徒が黄色い歓声を上げた。
(転入生というだけでも騒がれるだろうけど、この容姿の良さじゃなぁ。そりゃ騒がれるか)
架瑠はちらりと紬の容姿を確認する。整っている顔なので、女子たちはお近付きになりたいのだろうと肩をすくめた。――だが、いくらなんでもこれは……と思い、意を決したように顔を上げて紬に声をかける。
「えっと、九鬼くん……校内を案内するよ」
「……ああ」
紬はすくっと立ち上がる。クラスメイトたちから「えーっ」という声が上がったが、ここで大勢に見られるよりは、と思ったのかもしれない。
そう考えて、架瑠は紬を案内に誘ったのだ。
「ぐるっと一周するけれど、お昼ご飯はどこで食べようか。お弁当派? 学食派? それとも購買派?」
「一応、弁当持ってきている」
「じゃあ、一緒に食べよう。おれも持ってきているから」
互いに弁当の入ったトートバッグを持ち、教室から出ていく。
とりあえず、人目につかないところで弁当を食べようと思考を巡らせ、この時間に空いている教室を探した。
すべての予定を話し終えて龍源が教室から出ていく――……のと同時に、わっと紬のもとにクラスメイトが集まった。
「ほどほどにしろよー」
龍源が顔だけ覗かせ、それだけ伝えると扉が閉まる。他のクラスの生徒たちも、一度転入生を見ようとこの二年C組にきていた。紬の燃えるような紅蓮の髪と金色の瞳を見て一度息を呑む人が多い。
「わ、本当に地毛だ。根元まで赤い!」
「ねぇねぇ、どうしてこんな中途半端な時期に転入してきたの?」
「本当に日本人?」
などなど、紬を囲んでいる生徒たちは矢継ぎ早に質問攻めし、彼は深々とため息を吐いた。心底面倒くさいと顔に書いてある。
彼はちらりとこちらを見て、口を開いた。
「一時間目の授業はなんだ?」
「えっ、あ、す、数学……」
架瑠はびっくりしたように目を見開いて、彼の問いに答える。
紬は机に並べた教科書の中から、数学の教科書と使うノート、筆記用具だけを机に並べ、他の教科書たちは机の中に入れた。
質問に答えないからか、クラスメイトたちは「なんだよー」とムッとしたように紬から離れていく。
「そういや、お前の名前は?」
「おれ? おれは……倉橋架瑠。ええと、よろしく?」
「……ああ」
短いけれど、確かに返ってきた。そのことに架瑠は驚きながらも、少しだけホッとした。悪い人ではなさそうだ、と。
それからすぐに数学の教師が教室に入ってきて、授業が始まる。
◆◆◆
授業と授業のあいだにある休憩時間にも、紬のことを一目見ようと生徒たちがクラスに集まってくる。紬は自身に刺さる視線にうんざりしたように、髪を掻き上げる。きゃあ、と女子生徒が黄色い歓声を上げた。
(転入生というだけでも騒がれるだろうけど、この容姿の良さじゃなぁ。そりゃ騒がれるか)
架瑠はちらりと紬の容姿を確認する。整っている顔なので、女子たちはお近付きになりたいのだろうと肩をすくめた。――だが、いくらなんでもこれは……と思い、意を決したように顔を上げて紬に声をかける。
「えっと、九鬼くん……校内を案内するよ」
「……ああ」
紬はすくっと立ち上がる。クラスメイトたちから「えーっ」という声が上がったが、ここで大勢に見られるよりは、と思ったのかもしれない。
そう考えて、架瑠は紬を案内に誘ったのだ。
「ぐるっと一周するけれど、お昼ご飯はどこで食べようか。お弁当派? 学食派? それとも購買派?」
「一応、弁当持ってきている」
「じゃあ、一緒に食べよう。おれも持ってきているから」
互いに弁当の入ったトートバッグを持ち、教室から出ていく。
とりあえず、人目につかないところで弁当を食べようと思考を巡らせ、この時間に空いている教室を探した。
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