オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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1章:始まり

加茂家の日常 2話

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 脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びる。熱いシャワーが汗を流していき、架瑠かけるは小さく息を吐いた。髪と身体を洗い、すぐに上がる。乱雑にタオルで髪の水分を拭い、身体の水滴も拭う。

 ドライヤーで髪を乾かしている最中、洗面台の鏡から視線をそらした。

 どうしても、自分の容姿が好きになれない。

 架瑠の髪色は漆黒。後ろはうなじが隠れるくらいの長さだ。だが、前髪は目が隠れるほど長い。

 少し青みのあるような薄い紫色の瞳。――それが、架瑠のコンプレックスだった。

 両親はどちらも日本人だったと聞いている。なのになぜ、こんな紫色の瞳の子どもが生まれたのか、と何度も耳に入れてしまったため、瞳を隠すように前髪を伸ばしている。

 髪をしっかりと乾かしてから、制服に着替えた。

 食卓までいくと、伊吹いぶき――腰まである長い真白の髪を一つにまとめ、空色の大きな猫目をらんらんと輝かせる女性――が、架瑠に元気よく声をかける。

「おっはよー、るーくん。今日は和食だよー」

 テーブルに並んだのはほうれん草のお浸し、だし巻き卵、鮭の塩焼き、豆腐とわかめの味噌汁だった。伊吹は三角巾と割烹着を脱いで椅子に置き、じゃーんと両腕を広げる。きちんと三人分用意されていた。

「伊吹は料理上手だねぇ」

 いつの間にきていたのか、蓮也れんやは並んでいる朝食を眺めてから椅子に座り、まだ座っていない架瑠に視線をやった。すとんと架瑠が座ると、伊吹も座り三人で「いただきます」と手を合わせてから箸を取る。

 架瑠は汁椀を手に取って、一口飲む。そこであれ、と目をまたたかせた。

「あ、るーくん気付いた? 気付いた?」
「味噌が違う?」
「正解っ! 今日は赤味噌にしてみたよ、どうかな?」

 ワクワクと空色の瞳を輝かせる伊吹に、「美味しいです」と返すと、彼女は目元を細めてだし巻き卵をぱくりと口に入れた。

 蓮也は鮭の身をほぐし、ご飯の上に乗せて一緒に食べている。

 平和な朝食の時間だ。架瑠は味わうようにゆっくりと伊吹の作った朝食を口に運ぶ。

 鮭の焼き加減もバッチリだった。ほうれん草のお浸しはポン酢で味付けされていてさっぱりとしていた。

 だし巻き卵はほんのりと甘く、大根おろしに醤油を少しかけて一緒に食べると相性がよくて美味しい。食後に飲み頃になった緑茶を一気に飲んで、ほぅ、吐息を吐く。

「ごちそうさまでした」

 架瑠は両手を合わせてそう言うと、食器を重ねてシンクに持っていく。

「あ、るーくん、置いといていいからね!」
「え、でも……」
「もー、毎日言っているじゃない! るーくんはまだ高校生! 休日に手伝ってくれるだけで充分だよ!」
「うちの家事は伊吹に任せているからね。彼女の言うことはちゃんと聞かないと」

 蓮也はくすくすと笑い、架瑠に声をかけた。彼は少し悩んだように黙り込み、すぐに「じゃあ、また今度、手伝います」と頭を下げてから歯磨きに向かう。

 その背中を眺めながら、蓮也と伊吹は視線を交わして両肩を上げた。

「――やっぱり、まだまだ遠慮がちだねぇ」
「ねぇー。もっと甘えてくれてもいいのにぃ」

 むぅ、と頬を膨らませる伊吹に、蓮也は小さく笑みを浮かべる。

 歯磨きを終えた架瑠が通学鞄を背負って居間に顔を出し、二人に「いってきます」と頭を下げてから、家を出た。

「いってらっしゃい」

 二人の声を、背に受けながら。
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