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25話
しおりを挟むわたくしの言葉に、会場内はしんと静まり返った。冷や汗を浮かべているのは、この国の公爵や侯爵だ。悪いことをしているという自覚があったようだ。
「……はー、やれやれ。え、何、この空気……」
「お、お父様、どうしたんですか、その恰好……」
静まり返った会場の扉を開く音。全員がその扉へと視線を向けた。すると、お父様がひょっこりと顔を出したのだ。……それも、わたくしと同じく青色のローブを着て。お母様も一緒だ。
「イザベラのパパとママだー!」
ぱっと明るくリアンが言った。スタスタとわたくしたちに近付いて来るお父様とお母様。ランシリル様はちらりとこちらを見て、それからお父様たちへ視線を向けた。
「……遅いですよ」
「これでも急いで来たんだけど……。君がやってくれても良かったのに」
「いやいや、流石にその権限はありませんから」
……お父様、ずっと研究室に閉じこもっていたとばかり思っていたけれど、……そう言うわけでもない、のかな……?
「さて、お久しぶりでございます国王陛下。私が置いて行ったユニコーンの乙女の資料はお読みいただけましたか? まぁ、読まれましたよね。読まれたからイザベラを呼んだのですよね。ユニコーンの乙女が居なければ、この国にとって不都合でしょうから。いやまぁ、そんな国に娘を置くわけないですよね。自分の息子のしたことすら気付いてない親って存在するんです? ああ、存在するからアリコーン様が怒っているんですよね。いや本当、犠牲になった人たち可哀想に。国の上層部がこんなのなら、この国の平民はきっと住みづらいでしょうねぇ……」
……お父様はつらつらと言葉を紡いでいく。
「女性として、一人の子を持つ親として一言宜しいですか、ディラン殿下」
お母様がツカツカとディラン殿下に近付いて行く。口元の笑みは崩さなかったけど、目が笑っていないから……本気で怒っているわね。
「人として最低ですわ、あなた」
「ぶ、無礼な!」
「あら、本当のことを言って差し上げたのに」
この状況でもそんなことを言えるディラン殿下がすごいのか、それともお母様がすごいのか……。よくわからない。
「……まぁ、そいつは置いといて。今ここでこの場に居る全員を倒すことも可能ですが、それはあまりにも野蛮でしょう? 話し合おうではありませんか。これからのことについて。……だってもう、ヴァプール王国はじわじわと衰退していくことが決められているのだから」
……その言葉を聞いて、全員が息を飲んだ。自分たちは大丈夫だと思っていたのかもしれない。
破滅が近付いていることを、お父様が口にするとは……。
……ところで、本当にお父様って神帝国のどういう立場なのかしら……?
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